品格が求められた通訳案内業務の時代背景の逆転現象 国内観光用の添乗員研修制度に参加して
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最終更新日:2023/05/01
通訳案内と翻訳導游員
通訳案内業法は戦後アメリカ人観光客に失礼があってはいけないということから、その質的確保を図るために制定された。旅行あっせん業法も同じであるが、これは施政権返還の1952に制定されている。それまではGHQがいたから、日本の警察が取り締まる必要がなかったといわれている。戦前は治安維持のため通訳案内と旅行あっせんは都道府県の同じ条例で取り締まられていた。スパイ防止の目的が強かったといわれている。
通訳案内士法31条は、「通訳案内士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない」と規定し、自家用車を用いて通訳案内をすることがこれに該当するという事務連絡が発せられた。この規定には罰則がなく、およそ規範性に欠ける条項であるが、貴重な外貨をもたらすアメリカ人に対して失礼があってはいけないという、国際観光ホテル整備法が、部屋にお風呂の設置を基準化し、西洋人にとって野蛮と思われていた混浴の回避が可能なように配慮したことと同じ、当時の世相を反映している(国会議事録や当時の立法担当者の発言にでており、私の博士論文でも引用させてもらっている)。
時代背景が忘れられているから、品位の意味も忘れられ、通訳案内士に求められる資質にも時代錯誤感が残ってしまうのである。
さて、昨日添乗員研修に参加せてもらった。インバウンド研修という名目もあったせいか、外国人の添乗員が圧倒的に多かった。
研修旅行のコースは、都内のゴールデンコースといわれるものである。皇居前、浅草、銀座ラオックス、昼食ドンキ、お台場、表参道(車窓)、東京都庁展望台である。すべて入場無料である。見事なくらいよく考えられている。秋葉原も加わるかもしれない。昼食のドンキは安いコースには設定されており、高いものには昼食は含まれないそうである。
お台場で漫画が人気があったので写真。
通訳案内士の資格を持った方も参加していた。添乗員研修を行う学校のパンフレットには、通訳行為は旅行者の質問に外国語で対応するものであり、添乗はバスガイドが右に見えるのは〇〇であると外国語で説明するものであるとなっている。確かに一方的に外国語で話をすることは巷にあふれているから、これを通訳案内行為だといって規制していては、おかしなことになるであろう。
しかし問題はそこにあるのではない。アメリカ人を大事にした時代と時代が変化してことに対応していないことである。
外国語で対応する者を日本人と頭から思い込んでしまっている通訳案内士制度にある。だから品格などという時代錯誤な字句が残ってしまっているのである。
外国人旅行者には、その旅行者と同じ国の日本に生活している者が対応するのが一番である。言葉ができるのは当たり前である。試験など予算の無駄遣いである。歴史や地理の知識が必要ではあるが、試験までする必要があるか疑問である。よしんば試験をするとしても、外国語ですればいいと思う。外国人旅行者に対して説明するのは外国語である。今や日本の運転免許試験も中国語で行われているのである。外国語で地理歴史試験をするとなると試験官が大変であろうから、制度自体が維持できなくなる。通訳案内士制度の業務独占が廃止されたのは必然なのであった。考えてみればアメリカでは国として通訳案内に資格が不要なのも理解ができる。韓国でも資格制度はないが、実際仕事をするとなると能力がいるので、派遣事務所が斡旋しないだけである。
従って、外国人が日本国内観光用の添乗員の認定を受けて、その出身の国からの旅行者の添乗をするのは、添乗行為か通訳行為かを超えて、合理的でありサービスも上なのである。日本国内観光用の添乗員認定制度は、日本人旅行者用に考えられていたのであろうが、いまやインバウンド用に変質している。一種のランド規制であった。従って今回の法改正で旅行業法にランド規制が加えられたのも、その意味では理解ができる。
私は海外旅行するときに、車を利用するときは、土地のランドサービスを活用するが、徒歩で市内観光をするときは、スマホで十分な時代になってきていると実感している。レストランも観光名所も、スマホに案内が飛び込んでくる。GPSがあるから迷子になることはない。言葉は少し不便かもしれないが、多少の英語ができれば何とかなるものである。それよりは無料Wifiの使用できるところをまず探しあるくことが先になってしまっているのである。
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