通訳案内士と旅行業法等の関係
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最終更新日:2017/09/05
通訳案内と翻訳導游員
ブログに既述したとおり、日本観光通訳案内士協会のHPの記述に、問題が存在した。
質問を出したところ、丁寧な返事をいただいた。さすがは専門知識集団の団体だけある。
霞が関より行動が早いと思われる。
「当協会ガイド検索画面下段の記載内容に関してのご指摘に感謝申し上げます。ご指摘に関して当協会執行部に諮り
最終的に現時点では理解齟齬に繋がる記載と判断して当面削除させて頂く事と致します。」という儀礼的な記述の後、
「まずご指摘の一件目ですが、判断する立場の相違で理解が微妙に異なる事は事実で
あり、寺前様の仰る通り、通訳案内士が車を運転してガイド業務遂行時は運賃報酬を受けな
い前提で第一種免許で問題無しとの観光庁見解と従来から理解して参りました。」
「しかしながら、今般の通訳案内士法改正に伴う来年3月以降の施行に向けて関係省庁で多種多様な見解が為
されているとの認識から、従来の見解のままで推移するのか、根本的に異なる見解にて統一
されてゆくのか慎重に見極める必要があるとの判断から、当該文面を当協会HP上から削除
し、然るべき後に改めて正確な表現にて記載復活する事と致します」
解説すると、通訳案内士が自家用車で顧客を無料で観光地に案内することは、
道路運送法の無償運送に該当し、いわゆる白タク、白バス行為に該当しないというのが、
これまでの観光庁の見解であった。私の解釈でも、国土交通省自動車局旅客課長の事務連絡文書を読む限り、
同様の解釈になると思っている。
しかしながら、通訳案内士が名称独占になるところから、タクシー業界からの反発が予想されるので、
一応再検討せざるを得ないであろう。しかし、論理的には解釈を変更することは無理であろうし、
これまで無償運送してきた通訳案内士の権益を犯すことにもなりかねず、観光庁としては譲りにくいはずである。
政府としての統一見解は内閣法制局第四部の見解を求めることが適当であり、また、質問主意書が提出されることに備え、
閣議決定文書の文面を考えておくことが適当であろう。その場合は、規制改革担当大臣の了解も必要であることから、
タクシー業界の権益、通訳案内士の権益だけではなく、
一般国民の権益を考えるべきこととなろう。
「次にご指摘の二件目、旅行業法違反になるのか否かとのじあんですが食費、入場料
をガイド料に合算する事案に関しましても旅行業者においても意見がわかれている実態があるよう
です。今回、可決された通訳案内士法改正も、旅行業法改正、従来管理しえなかったランドオペ
レーターの業務まで広げており、激増するインバウンド実態に省庁が急ぎ法令をあわせている感が強
く思えます。この件に関しては当協会からも個別に観光庁に確認して、確約出来た時点で上記事案
と共にHP上の表現文章を詰めていきたいと考えます。」
旅行業法の問題は悩ましい問題であり、実態は鉄道の切符等の手配を通訳案内士が行っており、
またそのようなサービスを求める声があるからであり、常識的な対応であろう。
ただ、通訳案内行為とレストランの手配等を組み合わせて行うことは、
旅行業法ではもともと規定してないので、完全に外れると私は考えている。
旅行業法は、運送機関又は宿泊機関とその他の行為を組み合わせることを規定しているからである。
医療行為や教育行為と食事の手配を組み合わせると、
旅行業法に抵触するという解釈が成り立たないのと同じではないかと思っている。
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