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シニアバックパッカーの旅 ロンドン配車アプリ調査報告①~初めに~きっかけとねらい 2015年3月

公開日: : 最終更新日:2023/05/26 シニアバックパッカーの旅, ライドシェア, 配車アプリ

○空港での衝撃

英国は国連加盟国4か所目の国である。1970年の中国(香港、台湾)、1973年のタイ、1978年のフィリピンへの訪問に次ぐ4か所目の国連加盟国である。

3月8日ロンドンヒースロー空港に到着。新婚旅行で最初から配車アプリ企業の実力を見せつけられる衝撃に出会った。空港の出口でAddison Leeの表示を持ったドライバーさんが大勢ゲート付近でお客さんを待っていたのである。おそらくB2Bのお客さんを待っていたのであろう。断りを入れて写真撮らせてもらった。

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私も一人旅の時はよく空港の送迎にガイドさんをお願いする。旅行社手配のものもあれば、ネットで自分で探してくるのもあるが、おおむね送迎一回5千円程度(日本語ができる条件だと1万円くらい)ではないかと思う。空港の出口で自分の名前を紙に書いたものを持っている人を見つけるとホッとするが、見当たらないと急に不安になってくる。これからはスマホが使えるので双方にとって位置の確認が便利になるはずである。この出迎えサービスは外国人用にはガイド事業ということになるのであろうが、大抵はホテルまで自分の車で送迎してくれるから、タクシー代がかからなくて済むという利点がある。定額料金制度をとるAddison Leeの場合、この点に目をつけたのではないかと思われる。日本でも外国人観光客への対応から同種のサービスが必要となろう。法的に言えば、この送迎行為は、運送行為なのか、調査補助行為なのか、ガイド行為なのか、セキュリティー行為なのか見解はさまざまあろう。有償性もその範囲で変わってくる。社会通念上の判断が重要になってくるから、司法の判断も変化するであろう。物流でいえば港の世界は遅れていたがコンテナ革命により近代化した。国際空港を中心とする人流の世界はスマホ革命によりこれから近代化してゆくのであろう。

○調査のきっかけ

さて今回の調査であるが、2014年末に一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会がロンドンのタクシー事情調査を実施した際に、福岡市に所在する稲員興産㈱の会長である稲員英一郎氏も参加を希望されたのであるが、東京の会員を中心にしているということもあり機会を得られなかった。システムオリジン社長の清野吉光氏はチームネクストの海外合宿事業も構想しておられたので、私のところにロンドン交通局等の訪問のアレンジはできないかとの相談が持ち掛けられ、相談に応じている間に、旅行の企画をお願いしているJTBからロンドンのHailo本社に話がなされ、逆にHailoジャパンの梅澤亮社長が日本側で実質手配をしていただくこととなり、今回の調査団が結成されることとなった。時期的な問題もあり参加者が限定されてしまったが、ロンドンの配車アプリ企業の国際戦略を知る意味ではもっと多くの方に参加を呼びかけれればよかったのと思っている。機会があれば次回はもっと多くの関係者に、Addison Lee,hailo等の視察に行ってもらいたいと思っている。

調査の背景には、東京オリンピックを控え、中国人をはじめとする多くの海外観光客が日本を訪れることが予想され、日本社会を挙げて外国人観光客対策を模索していることがある。稲員興産のグループ企業である大稲自動車には、私の観光学博士論文を中国語に翻訳した崔衛華氏の友人一行6名が、福岡空港を皮切りに、湯布院、別府。道後、有馬、熱海、草津といった日本の有名温泉地をtaxiで回遊する豪華旅行を挙行されたときにお付き合いいただいた。これがきっかけとなり、大稲自動車でも中国人等の富裕層狙いの旅行商品開発が考えられるようになったとのことである。このような環境の中、外国人個人旅行客はスマートフォンにより得られる位置情報をフルに活用しており、国境を越えてその利便性を十分に享受する社会となりつつあり、日本のタクシー事業者もそのニーズへの対応が迫られつつある状況となってきている。

今回ロンドンを調査対象に選定した理由は、ロンドンオリンピックを契機として、イギリス政府が国際観光競争力の増強に力を入れ、その成果が表れだしていることがあげられる。しかも、国際競争力確保のためには足の確保が必要であるとの観点から、taxi(ブラックキャブ)や有償運送自家用車(PHV)の配車アプリの普及がロンドンにおいて急速に進展しているところであり、日本のタクシー事業者にとって参考にすべき事柄が大いに存在すると思われたからである。従って配車アプリの先進企業であるHailo、Addison Leeを訪問し意見交換するとともに、Uberを含め配車アプリによる体験乗車を実施することとした。

ADDISON LEE(有償運送自家用車(PHV))

 

ダウニング街

訪問先のAddison Leeでいただいた資料(人流観光研究所HPに別途掲載)でも理解できるように、ロンドンのタクシー等の需要は過去4年間で3.4%増大しており、その牽引力はB2B市場となっている。ロンドンの都心魅力を反映しているものとなっている。また、イギリス政府が国際戦略として配車アプリの海外投資にも力をいれていることの背景を学ぶため、首相官邸(写真1 Hailo・CEOのRonald W. Zeghibe氏の計らいにより内部の会議室で会談することができた)を訪問しBusiness Relations AdviserであるChristopher Hopkins氏から説明を受けるとともに、タクシー業界代表で訪日経験も数多くある貴族院議員Lord Borwick氏(Hailo創業ドライバーRUSSEL氏の紹介)を院内に訪問しロンドンのタクシー事情を解説いただき、さらには対外貿易担当省のMatthew Grainger氏を訪問して配車アプリに関する今後の国際戦略の取り組み方法について説明いただくこととなった。

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Hailo

uber

 

 

おりしもUberの進出がロンドンのブラックキャブ運転手(個人タクシー)の大きな反感をかい、マスコミ等で大きく報道されていた時期である。しかしながら配車アプリはUberの進出以前からロンドンでは一般化してきており、ロンドン交通局のホームページにおいては配車アプリのリンクが張られていたところである。従って、ブラックキャブの7割以上は配車アプリシステムに参加しているのではないかと思われ、Uberの提起した自家用車利用問題と配車アプリ問題は別の問題であると冷静に認識し、調査に取り組んだ次第である。

Uber問題については、福岡市での社会実験「みんなのUber」により、自家用車の利用問題が白タク行為の疑惑を招いたことから、今回のロンドン配車アプリ導入調査も、関係者の関心を引く結果となってしまった。スマホによる位置情報革命は自家用車の有効活用等を含め大きな社会変化をもたらす問題であり、当然その社会の一部であるタクシーも今後大きな影響を受けるものであるが、今回のチームネクストの調査は、東京オリンピックを控え日本社会全体を挙げて取り組んでいる外国人観光客対応としての配車アプリの導入検討を主眼としたものであることの関係者の理解を重ねて求めるものである。

今回の導入調査に当たって、日本、ロンドン在住のHailo関係者には大変お世話になった。日本流の単なる調査ではなく、ビジネス実施を前提とした検討会として受け入れていただいたことにも感謝しなければならない。紙面を借りて御礼申し上げる。

最後に本ブログの文責は私にあり、他の参加者メンバーにはないことを断っておく。微妙な時期での調査であっただけに、悪意を持って言論攻撃をしてくる可能性があるものの、調査参加者は言論の自由を尊重される紳士であり、このような発表をさせていただいたことにも感謝を申し上げる次第である。

 

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