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MaaSのおとし所

チームネクストの総会に参加していくつか私なりに進展があった。

MaaS以外に自動運転車の実験の説明があった。自動運転のソフト開発に、一種免許と二種免許に本質的な差があるのか質問した。ないということを期待したのだが、接遇のことをお答えになり、意味が伝わらなかったと思った。つまり有料で人を運ぶソフトと、無料で運ぶソフトに違いがあるのかを聞きたかったのであるが、無人なのだから同じだという人もいて、意味が分かっていないとがっかりした。

 岡山の両備運輸のスキムクリミングもMaaSと無関係だが話題にされた。日本は法治国家なのだから、両備運輸は思い上がっているだろう。儲かっている路線の利益で赤字路線を維持しているのだから、そこに他社が参入してくるのはけしからんという論理は、思い上がりで、もうかっている路線の利用者にどう説明するのか。ここの利益は隣町の赤字に回しますといって了解を取り付けているわけでもないだろう。赤字路線を維持するか否かは企業判断であるいうことで規制緩和が行われたのである。それに従って判断をした運輸局は法治国家として当然のことをしたまでである。マスコミにもてはやされている経営者の思い上がりで、批判された局長が気の毒である。赤字なら休止できるように法改正されたはずだから、休止すればいいのである。そこにタクシー需要も出てくるはずである。あるいは自治体が補助をすることも出てくる。権限を自治体に渡せばもっと真剣になってくれるであろう。

 まず、MaaSという概念不明な用語でコミュニケーションが図られるとすれば、信じられないことである。漢字で「人流」をもとに議論をしても、ときおり、修正しないと、議論にずれが出る。ましてやMaaSである。MaaSの報告者の井上氏が、一生懸命、氏の言うMaaSとはこういう意味だと説明していたが、結局何のためにその議論をするのか、明確にしないとかみ合わないのである。といって、わたしも「モバイル交通革命」でも地域通貨を取り上げたりしたから、あまり大きなことは言えないのであるが。氏は、移動情報価値と自家用車使用の削減が目的だと説明するが、前者は当たり前でGoogleが先をいっている。では何のために自家用車を削減するのだということになる。高齢者の運転が危ないので、自動運転車の出現までのつなぎだというのであれば、霞が関の役人が大挙して集合することもない。金で解決できるはずである。それだけ自動車集団は税金を支払っている。地方自治体の権限にすればいいのである。高齢者は村会議員に村長に苦情を言い、足を確保してくれるようにすればいい。自家用運送の有償の許可も村長が持っていれば簡単なのである。

VIAのことも紹介されていた。1年以上前であるか、トランの藤原さんとともに、VIAに呼ばれてプレゼンをしたことがある(HPにもその時の資料を載せてある。パスワードをつけてはあるが)。乗合制度の合法的導入である。旅行業法を活用する方法であるが、どうも聞いていると、実証実験と称してソフト使用料を徴収するつもりなのである。それではノウハウだけ吸収されて、リスクを負わされるのでばかばかしいと放置しておいたら、どうも森ビルに話を持ち掛けたらしい。この種のビジネスに関与する外国人、日本人が多くなったのは事実であるが、日本の道路運送法や旅行業法を理解するのは、語学力ではなく問題意識だと思う。

 何故、国土交通省が急にMaaSと言い出したかが、私なりに推測できた。東大生産技術研究所の伊藤昌毅講師の説明があったからだ。私のHPに氏の資料を掲示しておくからわかりやすいと思うが、国土交通省のMaaSに関連するあらゆる組織の課長以上の人が参加するものだから、呼ばれた委員を大勢で取り囲むようにして会議室が作られている図がある。船頭多くして・・・をすぐに思い浮かべるところである。大赤字時代の国鉄も車両、保線、電気、通信といった具合に、まとめるところがなく、いつも大勢出てきていたが、JR東になって、投資計画部に権限が集中した

 さて、MaaSである。その昔運輸省は、交通機関別の縦割り局を横割りに、地域交通局、貨物流通局、国際運輸観光局にした。縦割り人事の強い建設省の同僚からは、建設省ではではおよそそんなことはできないといわれた。一方、道路と自動車を一緒にするなら意味があるが、鉄道と一緒にして何の意味があるかといわれたこともあった。それが、再び縦割り組織に戻り、現在の自動車局が存在する。貨物流通局も勿論解体され元に戻った。私は、橋本内閣時にその残滓ともいうべき貨物流通企画課長に就任した。日本の高コスト経済の癌が物流だとマスコミで攻撃され、コンテナ運賃が如何に高いかを、東京と米国西海岸の運賃と、東京沖縄の運賃比較で、後者の方が高いと責められた。内閣で総合物流施策大綱を閣議決定することとなり、通産、運輸、建設に農水も加わって、共同作業が始まった。真の狙いは港湾運送であったが、世界中どこの港もマフィアかユニオンかといわれ、伏魔殿であるが、どうもアメリカに言われたのであろうか、日本の財界が言い出したのか、私にはわからなかったが、港湾を含めて物流改革の方向を出すことになった。

 
 物流施策大綱とりまとめ時も同じように役人が あつまりヒアリングを行った。でも、MaaSのように聞かせていただく人が大勢というみっともないことはなかった。そのヒアリング時、今でも覚えているが、サプライチェーンマネジメントが叫ばれ、物流業とはトラックや内航業者のことを言うのではなく、全体の手配をしている者のことを言うんだといわれたことだ。貨物運送取扱事業法があり、総合物流業の法的基盤もあったのだが、神田運送の社長から、ヒアリングの際に、運賃は請求もしないで、一方的に口座に振り込まれてくるものだと説明を受けたこともある。つまり言われた通りのことをしていれば、荷主は首が回るようにお金を回してくれるということのようであった。それでは、総合物流の担い手にはなれない。

 さて、MaaSであるが、縦割りの自動車局、鉄道局から出てくる発想ではない。出てくるとすれば、観光庁だが、省内序列を考えると出てくるわけがない。物流時代と違うのは国土交通省になっていることだ。経済産業省も物流なら荷主だが、一般消費者の利益を代表してMaaSなどというわけがないから、やはりトヨタやソフトバンクに代表される利益代表が、物流でいうところの港湾運送退治をしたように、道路運送法退治を始めたのであろう。陣笠代議士は何とでもなるものである。

 その昔、企画旅行のパッケージツアーで実施していた楽々タクシーやシステムオリジンのタクアシクンを手配型に変えてくれと、国土交通省自動車局旅客課が言ってきた。手配旅行でも可能なように解釈したのである。時代を経て、伊藤氏の資料をみて、国土交通省もようやく旅行業法企画旅行のことを明示しだしたことがわかる。経済産業省の資料の焼き直しだという皮肉屋もいるけれど。伊藤氏も、Uberの顧問弁護士をしている西村法律事務所の弁護士と同様に、貸切バスの例の死亡事故のことを例に出して、旅行業法の問題点だとしているのを聞いて、自動車局が業界対策に手を焼いて、そういう説明をしていることが推測される。この話のとき、私はいつもトラックの過積載を例に出す。その昔は、自家用大型車も営業車も過積載をしていた。従って警察庁も最終的には、営業も自家用もなく等しく厳しく規制を始めた。高速道路の連続運転は、別に貸切バスだけの問題ではない。自家用も営業用も等しく規制すべきである。アドレア海を旅行した時、バスの連続運転が規制されており、見つかればその場でキーを抜かれるから、乗客も困るといって、休憩に協力させられた。

資料にも、JERONタクシーが実証実験だという例として出しているが、とんでもない間違いである。私もわざわざ福岡まで出かけて行って、市役所職員にレクチャーしたから生き証人である。JTBの先進的な役員が始めた事業であり、実験などではない。その後タクシー関係からの苦情があったのか、JTB社長も何のことかわからず、担当部局に直電をしたそうであり、極めて妥当な反応したと聞いている。私に言わせれば、観光庁と業界が、旅行業法の利用運送、利用宿泊規定を全く活用していないことが、日本発のイノベーションを遅らせていると思っている。標準約款すらない。それでは中国やアメリカに席巻されるのは時間の問題なのである。

それでも旅行業法が話題になりだしだけましであろう。自動車局も本音がどこにあるかわからないが、旅行業法自体は制度疲労をきたしている。利用運送、利用宿泊といった、総合人流業を可能とする規定が完全に無視されている。法の適用も矛盾が内包されている。標準約款制度も使命を終えつつある。それよりも何よりも、もう日本の旅行業法では対応できなくなってきていることである。この問題をきちんと理解できるメディアや評論家が不足しているのである。法律や行政の仕組みを理解できない学者が、役所の言われるがまま、参加していては、日本版イノベーションなど生まれようがない。

 伊藤氏は交通情報の提供のことも説明された。公衆電気回線の開放時、国鉄時刻表が大日本印刷で電算写植されているから、これを使って情報提供すれば情報化社会が到来すると大ぼらを吹いたのだが、おひざ元の許認可事務が書類提出では全く進展していなかった。そのことを伊藤氏は指摘しているのだが、既に30年前に石井威望氏からも指摘されていた。当時は情報の関所といっていた。

私も昔話に終始するようになり、年寄といわれないようにしなければならない。

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