*

 ホテルと旅館『西洋靴事始め』稲川實 現代書館

観光学でホテルと旅館の違いを説明するときに、私は芦原義信氏が西洋建築と日本家屋の違いを述べられたときに、靴を脱ぐか脱がないかの違いだということをどこかで記述されていたことを思い出し、いつも靴を脱ぐか脱がないかの違いだと説明してきた。

確かに映画などを見ていると、ベッドカバーやまくらカバーというのは、靴を履いたまま、枕の上に足をのせらるように作ったものだということがはっきり認識できる。

しかし、ではいつから靴を履くようになったのかと、疑問を持ったのである。人類は生まれた時は裸足である。

いつもその問題意識はあったので、麻布図書館で「西洋靴事始め」を書棚に見つけた時は、すかさず手に取ったものである。

著者の稲川實氏は西洋靴の権威であることを知った。本書は東京都立皮革技術センター台東支所機関誌に100回にわたって寄稿されたものを編集されたものである。

あとがきに、日本人と靴の出会いを語るには、1861年までさかのぼらないといけないとある。だんだん観光とtouristの関係に似てくるのである。西洋人のはく靴は写実的に書かれていたが、日本人は幕府の禁止で筒袖(洋服の事、日本語が漢語で一つの言葉に収れんしてゆくにはそれなりの時間がかかったのであろう)や皮履(靴の事)の使用は、外国製品に紛らわしいものであってはならないとお触書を出したのである。だから、靴が靴らしく自由に書けるようになったのは1877年ころだとある。

結局150年を経て、日本家屋は西洋式になり、日常生活では靴を履くのであるが、靴を履きっぱなしにはならなかったということなのであり、そのはきっぱなしにならなかったことをもって、旅館があるというのもおかしなことである。従って、2018年にホテルと旅館の法的区分が旅館業法上はなくなったのである。言葉はあるものだから、ホテル・旅館営業といっている。

関連記事

フェリックス・マーティン著「21世紀の貨幣論」をよんで 

観光を理解する上では「脳」「満足」「価値」「マネー」が不可欠であるが、なかなか理解するには骨が折れる

記事を読む

no image

『知られざるキューバ』渡邉優著 2018年

4年前のキューバ旅行のときにこの本が出版されていれば、また違った認識ができたとの思う。 カリ

記事を読む

字句「観光」と字句「tourist」の遭遇(日本観光学会2015年6月発表) 

1 ヒトの移動概念の発生と字句の収斂 定住社会における人の移動概念が、英語圏では字句「trav

記事を読む

no image

箱根について 藤田観光元会長の森本昌憲氏の話を聞いた結果のメモ書き ジャパンナウセミナー

2017年10月13日ジャパンナウ観光情報協会の観光立国セミナーで森本氏の話を聞く。日本ホテル・レス

記事を読む

no image

「脳コンピューター・インターフェイスの実用化には何が必要か」要点

https://www.technologyreview.jp/s/62158/for-brain-

記事を読む

no image

『旅館業の変遷史論考』木村吾郎

第1章 「旅篭屋」「湯治宿」から「旅館」への業名変遷過程 江戸時代は「旅籠 」で、その意味

記事を読む

no image

理解するAIは数学の新理論の発見なしにはあり得ないということ

NIRAから定期刊行物を送っていただいている。政府資金が入っているので、過激な記事は少ないが、201

記事を読む

no image

セミナー屋に踊らされるMaaS  

Mobility as a Service(MaaS)とは、運営主体を問わず、情報通信技術を活用す

記事を読む

no image

2016年3月1日朝日新聞8面民泊関連記事でのコメント

 東京都大田区が、国の特区制度を活用して自宅の空き部屋などを旅行者に有料で貸し出す「民泊」を解禁

記事を読む

no image

『カジノの歴史と文化』佐伯英隆著

IRという言葉の曖昧さ p.198 シンガポールにしても、世界から観光客を集める手法として、

記事を読む

PAGE TOP ↑