生産性向上特別措置法(規制のサンドボックス)を必要としない旅行業法の活用
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最終更新日:2023/05/27
人口、地域、, 旅館、ホテル、宿泊、民泊、不動産賃貸、ルームシェア、引受義務, 配車アプリ
参加者や期限を限定すること等により、例えば道路運送法の規制を外して、自家用自動車の有償運送の実証実験が行えるようにしようとするのが、生産性向上特別措置法案である。
しかし、旅行業法を活用すれば、実証実験など行わなくても、恒久的に実施できると私は考えている。
このブログでも何度も記述しているように、私の博士論文のテーマでもある、旅行業法の解釈問題である。
しかも刑罰規程に関わることであるから、拡大解釈は許されず、行政当局も白バス、白タクとして取り締まるには相当の覚悟と説明責任が求められるはずである。
旅行業法の募集型企画旅行(受注型企画旅行でも本質は同じ。以下パック旅行という。)は、自己の計算において、規制制度の下にある宿泊サービスと運送サービスを組み合わせて、あるいは単独で、旅行商品として販売するものである。その場合に、規制料金に拘束されないと解釈されている。航空の場合には旅行業者向けの運賃が決められているので、拘束されると解釈しているが、規制緩和された現在では、拘束されていないと解釈もできる。
旅行業法は、運送機関、宿泊機関としか規定していないのは、全世界の運送機関、宿泊機関を相手にするからであり、また、自家用車やコンドミニアム等も想定しているからである。今度施行される民泊法も、旅行業者が自家用施設を活用することを前提している。その論法でゆけば旅行業法の運送機関には自家用運送機関も当然含まれることになる。
問題の白タクをパックに組み込む場合に、道路運送法に抵触するか否かが問題となる。
私は運賃規制は外れるとこれまで主張してきた。現在パック商品に組み込まれているバス、タクシーサービスは、運賃規制が外れていると解釈しなければ、合理的説明ができないことも周知の事実であり、運賃規制違反として刑事罰を問うなど、法治国家としてできないであろう。約款も道路運送法に基づく約款ではなく、旅行業法に基づく約款によることとなる。
しかし、道路運送法は運賃等の契約(約款)規制だけではなく、運転免許規制等営業用自動車としての規制が存在する。前者だけが規制が外れ、後者には規制がないとすることの合理的説明も難しい。それでも私はこれまで白バス、白タクは違反だと考えてきたが、民泊法が施行される機会に考えを変更することにした。旅行業法は、旅館業法の許可を受けていない個人の別荘等を商品の一部として組み込んで販売することも想定している。想定しているにもかかわらず、日本の旅行業者は積極的にこれを行ってこなかったから、海外のAIRBNB等のアプリに後れを取ってしまったのである。民泊法が施行された場合に、民泊法の規制を受ける住宅施設のみが、旅行業法の宿泊機関と解釈するかが問題である。パック商品の場合、実利用者とは契約を行わないから、有償無償を超える世界にあることになる。無償だとすると、民泊法の規制を受けないことになる。
これと同じことが、白バス、白タクでも発生する。パックなのだから、実利用者と実運送者には契約関係がない。従って、道路運送法が想定する有償運送ではないとすれば、自家用自動車を利用しても違反とはならないことになる。
無理にサンドバック制度を持ち出さなくても、旅行業法を活用して白タクサービスを組み合わせて販売をすれば、目的は達成できることになる。
この結論には少し無理があることは自覚しているが、要は、旅行業法と実運送法、実宿泊法の関係をすべて100%合理的に説明することができないということである。基本は旅行業法のパック旅行の法的説明がきちんとなされて来なかったところにある。運送法は法律で精緻に構成しているにもかかわらず、パック商品は、約款上の存在であり、法的には何も語ってはいない。それにもかかわらず、実運送法の規制が外れるという説明がしづらいのであるが、国鉄運賃法時代の規制外しにはこれしか方法がなかったのである。いま、パック商品に運賃規制が及ぶと解釈をすると、海外旅行を主体とした日本の大手旅行会社の企画商品はほとんど違反となる。消費者も大さわぎになるであろう。国土交通省としては、タクシー業界よりも、消費者の反発の方が怖いはずであり、今更パック料金は違反でしたとはとてもいえない。従って、ほどほどにおとなしく、パック商品にタクシーを組み合わせることに反発しないことが賢明と考えて対応しているのであろう。
この問題が、自家用車活用にまで及ぶとなると、国土交通省も無視できなくなる。しかし、法の欠陥とまではいわないが、法治国家なのであるから、きちんとすべきである。きちんとしようとすると全体の話になるから、安全規制に特化した規制になるのであり、道路運送法は変質せざるを得ないであろう。
さら問題を大きくすると、旅行業法は利用運送の規定を設けている。約款が存在せず、日本の旅行業者は請負責任を負うことに躊躇し、やる気がないようであるが、物流の世界では利用運送が主流である。実運送機関など下請け機関である。その場合に実運送法規の適用が問題となる。利用運送を利用する利用運送(そのまた利用運送でも同じ)は実運送法に適用がないことになっている。DHL等もこれを活用して大きくなってきた。Uberのようにアッピングを主体にしたサービスを提供するのであれば、タクシー会社と直接契約をした旅行会社と更に利用運送契約を結んで、実利用者にサービスを提供すれば、道路運送法の適用がないことになる。トラックの場合にはそう解釈してきたのであるから、これを違反として刑罰に問うのは法治国家として勇気がいる。取締りを行うのであれば、刑罰を伴うのであるから、違法ドラックと同じように法改正をすべきであるが、規制改革委員会等の気付かないうちにこっそり改正しないと世間の批判を浴びるであろう。タクシー業界にとって幸いなのは、規制改革委委員会には制度を熟知した専門家がいないことである。
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