歴史は繰り返す 悪質(?)ランドオペレーター対策 米人保護→日本人保護→中国人保護
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最終更新日:2017/09/08
国際観光論
戦後まで一貫して観光政策はインバウンドであった。外貨獲得が目的である。国際観光ホテル整備法、通訳案内業法などが制定された。1952年施政権が返還されるに伴い、米人観光客保護のため、国内の悪質旅行手配師をどう取り締まるかが議論となり、旅行あっせん業法が制定された。それまではGHQがいたから、十分に取締りができたということのようであった。
1971年、訪日外客数を日本人海外旅行者数が上回った。それと共に海外での事故も多くなり、日本人旅行者の保護が政策になり、旅行業法に全面改正された。アウトバウンド政策の始まりである。日本の旅行業者は集客競争のため、価格を低くおさえるので、海外のランドオペレーターは、土産店、風俗店等に案内し、キックバック等で採算をとる実態が蔓延していたから、海外での日本人旅行者の安全対策などは当然配慮されなかった。そのため、西ドイツほどは徹底しなかった(請負責任を認めなかった)が、日本の立法で措置をしたのである。なお、エアラインからのキックバックは全体で数千億の巨額に上り国会でも問題になったが、合法な取引であるとの政府委員の答弁がなされている。このことにより、航空運賃の規制緩和が大幅に促進されることになった。
2018年 中国人観光客の急増により、日本での免税店への誘導等が話題になった。中国国内の旅行業者が、競争激化から日本向けの低価格商品を仕立てる結果、キックバックビジネスが起きたのである。このビジネスモデルは日本の旅行会社が既に取り入れていたものである。バブル期は日本国内の現象でもあった。東京オリンピックを控え、インバウンド政策として、ランド規制が復活した。今度は中国人観光客保護というか、日本の観光業界の正常化であったが、既に爆買い現象は越境ECに話題は移っているから、キックバック額もその分減少しているであろう。ランド規制だけが残ることになりかねない。
面白いもので、経済大国になる順で、ランド規制がわが国では行われてきたということになるのである。
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