*

報告「南チロルのルーラルツーリズム発展における農村女性の役割」を聞いて

公開日: : 路銀、為替、金融、財政、税制

池袋の立教大学で観光研究者の集まりがあり、標記の報告を聴く機会があった。いずれきちんとした論文になると思われる。
報告者は経験豊かな女性研究者であるが、育児と両立させておられた。

ルーラルツーリズムという問題に立て方には、私は昔から異論があり、特に農村という概念が日本ではなくなっていると考えている。農業は存在し、農地は制度として頑固なまでに存続しているが、共同体としての農村はなくなっている。むしろ港区の商店街の方が色濃く農村的運命共同体である。民泊反対運動の拠点にもなりかねないのである。その点、欧州ではまだ共同体としての農村があるのか、むしろそれをレポートしてもらいたいと思っている...

南チロルはイタリア北部で、リヒテンシュタインと隣接しているドイツ語圏である。オーストリア領の時代もあった。山岳地帯でリンゴ生産等が主体であるとのこと。副業から観光が始まり、表題のとおり、女性が活躍しているようである。農業は厳しく、男性の仕事という説明であった。(なお、チベットの農家では農業は女性の仕事で、男性は道路工事等に出かけている。)しかし、私は、旅館業はそもそも女性向きの仕事であり、ルーラルツーリズムだからということではないと思っている。子供の頃、加賀温泉郷の宿屋は、おかみさんが大忙しで、旦那は遊んでいたというイメージである。そのなかでも山代温泉・よしの屋の旦那はインテリで東大に進学したくらいであるから、趣味人であり、魯山人を居候させたのである。出来が悪ければ朝から酒を飲んで賭け事をしていたはずであり、旅館経営は女将がしっかりしていればできたのである。郷里の小説家がかいたものに、近傍の農家から奉公に出て来ている年少の女子を、宿屋の旦那衆が麻雀で誰が水揚げの役を引き受けるか決めている場面があった。温泉場の宿屋のサービスが現代の風俗産業に近い面があったということである。話はそれたが、宿屋は女性が実質経営していたということである。

それは、宿屋サービスは、日常生活の延長のサービスだから当然なのである。日常生活、つまり家事は女性の仕事であり、その延長にある宿屋のサービスも女性の仕事になる。しかも近代的経営をするわけでもないから、女性の仕事になったのあろう。

それを、マーケティング等といって近代的経営を導入してから、男性の仕事にしたのである。男性にしなければならない謂れはないが、後継の男子がいたから、大学を出させて跡を継がせたのである。その中から成功者も出たが、バブルで家をつぶしたものもでた。今は後継者を男子に絞っていては限界があり、女性経営者が輩出している。
南チロルは「農村女性」とあり、前時代的な表現になっているが、イタリアの方は日本とは異なる状況なのであろう。

帰りに、池袋のベトナム料理店で会食。旧知の研究者と議論。私は、もうアンケート調査を利用するのは研究者はやめた方がいいということを言ったら、脳波でどこまで分かるのかと聞かれ、後日答えるアンケートよりはましだと答えた。そのついでに、無意識も大事だという話をしたら、無意識と意識は違うといわれ、説明するのが面倒で終わりにした。私自身も数年前まではそう思っていたから、仕方がない。しかし、脳波は正直であり、手が動いたあとに脳波が反応している。つまり、手が動いてから、動かそうという意識が発生していることは常識化しているから、一体何が手を動かせているのか、ということになり、無意識が重視されているのである。人によってはそれを神の意思とするのである。

関連記事

no image

『昭和史』岩波新書青本  恐慌の影響で、朝鮮人(日本国籍がある)の満州移住が増加したが、中国側は日本の手先と見て敵視 奉天の柳条溝で満州事変  この頃からメディアも変わる

26年と30年を比較すると中国(満蒙含む)の輸出入貿易額に占める対日貿易額の占める割合は低下した

記事を読む

no image

人流ビジネスと利用運送

旅客運送事業法が設備の数量規制を行っていた時代は、旅客運送行為は運送事業者が自ら行うことが前提となっ

記事を読む

『戦後経済史』野口悠紀雄著 説得力あり

ドッジをあやつった大蔵省 シャープ勧告も大蔵省があやつっている。選挙がある民主主義では難しいこと

記事を読む

フェリックス・マーティン著「21世紀の貨幣論」をよんで 

観光を理解する上では「脳」「満足」「価値」「マネー」が不可欠であるが、なかなか理解するには骨が折れる

記事を読む

書評『みんなが知りたいアメリカ経済』田端克至著

高崎経済大学出身教授による経済学講義用の教科書。経済、金融に素人の私にはわかりやすく、しかも大学教

記事を読む

no image

『平成経済衰退の本質』金子勝 情報、金、モノ、ヒト、自然 について、グローバリゼーションのスピードが違うことを指摘 情報と人流のずれが、過剰観光

いつも感じることであるが、自分も含め観光学研究の同業者は、研究原理を持ち合わせていないということ

記事を読む

no image

脳波であらすじが変わる映画、英映画祭で公開へ

映画ではここまで来ているのに、観光研究者は失格である。 http://jbpress.isme

記事を読む

no image

21世紀を考える会「仮想通貨の現状」岩下直之京都大教授の話を聞く 2018年4月20日

Bitcoinの発掘の仕組み 256ビットの最初の30個は零が続かなければらないという約束。ハッシュ

記事を読む

no image

「キャピタリズム マネーは踊る」マイケル・ムーア

https://youtu.be/aguUZ7PGd2A https://youtu.be/a

記事を読む

no image

北朝鮮観光「Young Pioneer Tours」について

北朝鮮に旅行中に逮捕され有罪とされた米国人大学生のオットー・ワームビアさんが帰国直後に死亡したニュー

記事を読む

no image
中国・パキスタン国境越え動画

中国・パキスタン国境越え動画 https://www.youtu

no image
リビア

https://www.getyourguide.jp/tripoli

no image
カシュガル、ホータン、ヤルカンド

素敵な計画ですね!カシュガル、ヤル

no image
中国新疆ウイグル自治区カシュガルからパキスタンのハンザ地区を通過してパキスタンの空港から日本に戻るルート

中国新疆ウイグル自治区カシュガルからパキスタンのハンザ地区を通過してパ

no image
独島への渡航

東京から鬱陵島(ウルルンド)への最も経済的な移動方法は、以下の3つのス

→もっと見る

PAGE TOP ↑