書評『みんなが知りたいアメリカ経済』田端克至著
公開日:
:
最終更新日:2023/05/29
人口、地域、, 路銀、為替、金融、財政、税制
高崎経済大学出身教授による経済学講義用の教科書。経済、金融に素人の私にはわかりやすく、しかも大学教科書作成中の私には大変参考になった。
「経済構造の変化、アメリカ経済の近未来」国際競争にさらされたアメリカ経済はサービス化を遂げ、雇用機会を担ったのはサービス業であった。これに対して日本は引き続き製造業が重要な雇用の受け皿であり続け、失われた30年の原因となった。米国はGAFAに象徴されるIT関連のサービス業が高収益を上げているため、雇用の最大の担い手のように思われがちだが、主たる受け皿は医療ケアサービスやレジャー・接客サービスである。これらのサービスの平均賃金はかなりの低水準であったから、格差を引き起こす土壌となっていった。
日本の企業は貯蓄の担い手に陥っており、企業部門がGDPを上回る500兆円以上のカネ余りとなっている。これに対して米国金融市場は、比較的高い利回りを提供できる仕組みを創り出しては、それで世界から資金を吸収して、その資金を必要とする企業に配分していく機能が整備されている。
「ドルの役割と国際金融」 ドルが結局アメリカに戻るという復元力を担保する制度であるという点では戦後一貫してドルをコアとする国際金融取引は継続している。「流動性のジレンマ」(特定の通貨を基軸通貨として固定する金為替本位制の下では、基軸通貨の流動性向上とその信認の維持は両立が難しいという説。トリフィンのジレンマとも呼ばれる。)2019年においても国際取引の9割がドルを絡めて行われている。
実は世界は安全な資産が根本的に不足。アメリカ国債への需要が根強い。しかし米国政府は流動性のジレンマを回避するため、世界経済規模に比して少ない供給しかしないから、民間金融機関が不足気味のドル建て資産を世界に供給。ここに世界の金融資産の約半分(2017年)を占める証券化やシャドーバンキングの役割がある。ウォール街で開発された市場メカニズムを通じてリスクは吸収される。それでも世界の安全資産需要には不足し、仮想通貨導入の機運を高めている
各国の貿易黒字は、その相当額が米国に国際資本として還流
関連記事
-
-
伊勢観光御師の会に参加
2015年7月14日伊勢観光御師の会がKKR東京で開催され、日本観光協会時代の御縁ということで参加さ
-
-
フェリックス・マーティン著「21世紀の貨幣論」をよんで
観光を理解する上では「脳」「満足」「価値」「マネー」が不可欠であるが、なかなか理解するには骨が折れる
-
-
国際人流・観光状況の考察と訪日旅行者急増要因の分析(1)
Ⅰ 訪日外客数の急増と福島原発事故の世界の旅行界に与えた影響 明るい話題が少ないのか、訪日外国人客
-
-
人流ビジネスと利用運送
旅客運送事業法が設備の数量規制を行っていた時代は、旅客運送行為は運送事業者が自ら行うことが前提となっ
-
-
「第3章 流入する他所者と飯盛女」武林弘恵著『旅と交流に見る近世社会』清文堂
旅と交流にみる近世社会 高橋陽一 編著
-
-
『公共貨幣論入門』山口薫、山口陽恵
MMT論の天敵 Amazonの書評(注 少し難解だが、言わんとするところは読み取れ
-
-
『知られざるキューバ』渡邉優著 2018年
4年前のキューバ旅行のときにこの本が出版されていれば、また違った認識ができたとの思う。 カリ
-
-
港図書館・リサイクル処分の『カジノの文化史』大川潤・佐伯英隆著
港区図書館でリサイクル処分になる図書をもらってきた。平成23年に経済産業省の役人二人が書いた本であ
-
-
「東日本大震災復興に高台造成はやはり必要なかった」原田 泰
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22460?utm_sou
-
-
書評『日本社会の仕組み』小熊英二
【本書の構成】 第1章 日本社会の「3つの生き方」第2章 日本の働き方、世界の働き方第3章
- PREV
- ビキニ島における核実験
- NEXT
- 書評『ベルツの日記』