*

格差社会と階級社会 

公開日: : 最終更新日:2020/03/18 人口、地域、

 『日本の経済』伊藤修著 中公新書 と 『新日本の階級社会』橋本健二著 講談社現代新書

「日本の経済」で明確に1975年を日本の転換点としている。ジニ係数は1980年から拡大していることは「新日本の階級社会」でも指摘され、その後40年間放置されてきた。その結果、自民党支持者は明確に富裕層に移行していることを指摘もし、格差ではなく階級社会だというのである。

『日本の経済』のメモ

p.16 日本人は和を尊ぶというがそうでもない。遺産争いなど自己主張ははげしい。損得勘定で沈黙することもあり、外観上和があらわれる。 p.17 日本の発展は政府主導型の見方が強いが、そのことは相当限定的。民間主導であった。 p.46 戦前は企業内でも、職員と労務者と呼ばれて、身分の差があった。月給制と日給制の違いがあり、収入格差も数倍に及び、生活スタイルにちがいがあった p.51 1938国民健康保険、1942労働者年金制度発足。保険料負担したくない財界が長く反対していた。診療料金を勝手に決めたい医師会が反対してきた。戦時になり押し切られた p102 1974年が国民春闘のピーク 賃上げ率3割を超えるが、その後一変、76年からは賃上げ率1桁 日経連セミナーでの桜田発言 個人や家族の自助努力を強調した日本型福祉論の展開 企業別労組は寸断される p104 1975年転換点 民間大企業労組 非正規や下請を犠牲。1980年に入ると犠牲者の目は、公務員や農業者にむく。 p123 新自由主義 サッチャー、レーガンの主導の「納税者の反乱」高額納税者だけでは政治力にならず、行き過ぎた福祉を攻撃し、労組と対立。 中曽根時代に打ち出したが、当時は欧州はおろかアメリカにさえ福祉政策は追いついていなかった。たるみ公務員、補助金漬け農業、大店舗法保護の、バラマキ福祉等と順繰りのつるし上げ、その延長に三公社民営化、総評の解体、社会党の消滅がある。

『新日本の階級社会』めも

日本はもはや「格差社会」ではない、「階級社会」である、という現実

かつて日本には、「一億総中流」といわれた時代がありました。高度成長の恩恵で、日本は国民のほとんどが豊かな暮らしを送る格差の小さい社会だとみなされていました。しかし、それも今や昔。最新の社会調査によれば1980年前後、新自由主義の台頭とともに始まった格差拡大は、いまやどのような「神話」によっても糊塗できない厳然たる事実となり、ついにはその「負の遺産」は世代を超えて固定化し、日本社会は「階級社会」へ変貌を遂げたのです。
900万人を超える、非正規労働者から成る階級以下の階層(アンダークラス)が誕生。男性は人口の3割が貧困から家庭を持つことができず、またひとり親世帯(約9割が母子世帯)に限った貧困率は50・8%にも達しています。日本にはすでに、膨大な貧困層が形成されているのです。
人々はこうした格差の存在をはっきりと感じ、豊かな人々は豊かさを、貧しい人々は貧しさをそれぞれに自覚しながら日々を送っています。現在は「そこそこ上」の生活を享受できている中間層も、現在の地位を維持するのさえも難しく、その子供は「階層転落」の脅威に常にさらされている。この40年間の政府の無策により、現代日本は、金持ち以外には非常に生きるのが困難な、恐るべき社会になったのです。
官庁等の統計の他、さまざまな社会調査データ、なかでもSSM(「社会階層と社会移動全国調査」)調査データと、2016年首都圏調査データを中心にしたデータを基に、衝撃の現実が暴き出されてゆきます。

関連記事

no image

「第3章 流入する他所者と飯盛女」武林弘恵著『旅と交流に見る近世社会』清文堂

旅と交流にみる近世社会 高橋陽一 編著    

記事を読む

no image

ジャパンナウ観光情報協会原稿 2020年3月 コロナウィルスと人流規制

コロナウィルス騒動の中、旅行先のサンサルバドル空港では空港レストラン職員もマスクをしていた。入管係

記事を読む

no image

ヴィアレッジョ スーパーヨットの街

地方創生は無理をしないで伝統を発展させれば、人口6万の町でもトランプさんはヨットを注文してくるのです

記事を読む

『プロヴァンスの村の終焉』上・下 ジャン=ピエール・ルゴフ著 2017年10月15日

市長時代にピーターメイルの「プロヴァンスの12か月」読み、観光地づくりの参考にしたいと孫を連れて南仏

記事を読む

no image

保護中: 米国コロナ最前線と合衆国の本質(5) ~メディアが拍車をかける「全く異なる事実認識」:アメリカのメディア統合による政治経済と大統領支持地域のディープストーリー

印刷用ページ 2020.07.08 米国コロナ最前線と合衆国の本質(5) ~メ

記事を読む

no image

『鉄道が変えた社寺参詣』初詣は鉄道とともに生まれ育った 平山昇著 交通新聞社

初詣が新しいことは大学の講義でも取り上げておいた。アマゾンの書評が参考になるので載せておく。なお、

記事を読む

no image

QUARA コロナ対処にあたってWHO非難の理由にWHOの渡航制限反対が挙げられていますが、これをどう思いますか?

渡航制限反対は主に「中国寄りだから」という文脈で語られています。しかし調べてみれば、今回のコロナウ

記事を読む

no image

梁山泊とダボス会議

ダボス会議 ダボス会議を知らない人はいないくらい知名度が高くなった。従って安倍総理も出席するし

記事を読む

書評『日本社会の仕組み』小熊英二

【本書の構成】 第1章 日本社会の「3つの生き方」第2章 日本の働き方、世界の働き方第3章

記事を読む

no image

書評『人口の中国史』上田信

中国人口史通史の新書本。入門書でもある。概要〇序章 人口史に何を聴くのかマルサスの人口論著者の「合

記事を読む

AIとの論争 住むと泊まる

AIさん、質問します。世間では民泊の規制強化が騒がれて

no image
日本の温泉地盛衰記分析 Youtubeリスト

飯坂温泉 最盛期170万 4分の一 https://www.youtu

no image
ブリティッシュコロンビア州バンクーバー

Screenshot[/caption]

no image
リビアの旅行会社

リビアのトリポリにある外国人向けの信頼できる旅

no image
バンクーバー予備知識

  フェンタミル カナダへやってきました。バンクーバー。

→もっと見る

PAGE TOP ↑