『物語 ナイジェリアの歴史』島田周平著 中公新書
アマゾン書評
歴史家トインビー曰く、アフリカはサハラ砂漠南縁を境に、北のアラブ主義と南のネグロ主義に分けられるという。唯一この分割線をまたぐ国がナイジェリアであり、「二つのアフリカの問題」の縮図といえる。ナイジェリアは、経済・人口ともにアフリカ最大の国である一方、民族独立戦争であるビアフラ内戦を経験し、近年ではイスラム過激派組織ボコ・ハラムへの対応に追われている。アフリカの縮図たるこの国の歴史を辿る。
人口、国内総生産ともにアフリカ第一位のナイジェリア連邦共和国の歴史。「ネグロ主義」という言葉がわかりにくい。大ざっぱに北はイスラム教の地域であり、南はキリスト教信者の多い地域と書いてもらったほうが分かりやすい。また、「ハウサ人(北部)、ヨルバ人(西部)、イボ人(南部)の三大民族(合わせと人口の六割を超える)の役割が重要である。」(「新書アフリカ史」講談社498頁)、といったことを最初に書いてもらった方が分かりやすい。
「新書アフリカ史」では政治家アウオロウオ(本書172頁に写真)の言葉が引用されており、これは分かりやすい。「西部と東部ナイジェリアの違いは、アイルランドとドイツぐらいの違いがある。さらに北部ときたら、中国との違いほどある」。植民地化は、こういう地域の違いを拡大させた上で、異なる地域を一つの国にしてしまったのである。
概略
第一章諸王国と北部のイスラム化。スルタン=エミール体制。第二章大航海時代の奴隷貿易、第三章奴隷貿易の禁止、解放奴隷。第四章探検とキリスト教伝道、第五章アフリカ分割とイギリスのナイジェリア権益主張。特許会社の支配、境界線の確定、第六章イギリスによる南部ナイジェリア保護領と北部ナイジェリア保護領の成立、統治システム。第七章間接統治、1914年南北保護領の合併による一つのナイジェリア成立、支配の確立と植民地産業経済の発展、反植民地運動の始まり、第八章反植民地運動、1960年の独立、独立後の政治対立、1966年のクーデターからビアフラ(東部のイボ人中心国家)内戦、1967年ビアフラ軍劣勢、1968年ビアフラ飢餓状態。第九章1970年代の石油収入の増大、オイルブーム、汚職増加、ゴウォン政権による復興、1975年軍事クーデター後のムハンマド政権、1976年オバサンジョ政権、1978年民政移管で、第二次共和政発足、シャガリ大統領の連立政権、1980年マイタシン(イスラム原理運動)掃討、1983年不法滞在外国人追放、1983年第二次シャガリ政権、債務膨大で、ブハリが軍事クーデター、ブハリ政権による緊縮財政、汚職摘発、1985年ババンギダが軍事クーデター、1993年選挙結果発表差し止めで、各地で暴動、国防大臣アバチャが自ら大統領就任、恐怖政治、不正蓄財、1998年アバチャ心臓病死亡。1999年、民政移管で第四共和政、オバサンジョ大統領(キリスト教徒)、2005年ニジェール・デルタ武装集団による多国籍企業襲撃・誘拐、2009年紛争終結調印、同年ボコ・ハラム摘発、2010年ボコ・ハラム過激化し、アルカイダと連帯、2011年ジョナサン大統領就任。2014年ボコ・ハラムが女子中学生270人誘拐、2015年ジョナサンが選挙で敗れ、ブハリ(北部出身、)が大統領就任。2016年ボコ・ハラム掃討、同年ニジェール・デルタ武装集団再燃、2018年ビアフラ独立運動再興、2019年ブハリ大統領再選。おわりに、地域的多様性と連邦の発展、継続。
私的感想
〇ナイジェリアは、南・北ナイジェリア保護領という、人種も、宗教も、経済状況も違う二つの地域がイギリスの植民地経営の都合で一つになったものである。現在は連邦としては国教のない世俗性国家だが、州としては北部12州はイスラム州で、シャリア法を取り入れている。ビアフラ内戦は独立後まもないことで、もう半世紀が立ち、その後分離戦争はないが、今でも独立運動はある。ビアフラ内戦のビアフラ敗因は、一、短期決戦で勝っても、その後は戦力差、国力差で負けたとと、二、東部の単独戦で、西部と連携できなかったこと、三、国際的支持を得られなかったこと、になると思うが、この先、もし、分離世論が優勢になってきたら・・一、二については、西部と東部が連合すれば、国力では北部に対抗でき、戦争は最終手段として、世論統一と対外政治折衝に十分な時間をかけ、緻密な計画案を作れば、三の国際的支持が得られる可能性はある。
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