鬼畜米英が始まったのは、1944年からの現象 岩波ブックレット「日本人の歴史認識と東京裁判」吉田裕著
靖国神社情報交換会に参加した。歴史認識は重要な観光資源であるとする私の考えに共鳴されたメンバーの一人から、参加を呼びかけられたからである。
交換会で配られた岩波ブックレット「日本人の歴史認識と東京裁判」吉田裕著を読み、本論の歴史修正主義とどのように向き合うべきか(根拠のない「東京裁判史観克服論」を検証し、東京裁判を歴史の大きな流れのなかに位置づける)ということに関しては、私自身も、日本の国粋主義者が、米国ではなく中韓に敵愾心を強く表明する欺瞞性を、皮肉ってきたから、全く同感なのであるが、吉田氏は、冷静に論理的に解説しておられる。
この本の中で、私にとって新たな発見は、開国時の日本人にとって欧米は一体ではなく、米国が後進国として日本と同等であり、独立戦争は攘夷の成功例であり、日本の近代化のモデルであった。
戦前の日本には「対外硬」という言葉があった。 明治後期の条約改正から日清・日露戦争、韓国併合の時期に最も盛んであった しかも一番盛り上がっているのは反英運動、1939年の天津英仏租界封鎖事件であった。しかし、これに対して反米運動は、反英運動ほど大きな広がりを見せたものはなかった。
吉田氏は、日本政府が反米的なキャンペーンを展開するようになるのは、1943年の2月ぐらいからだとされる。ガダルカナル島の敗北の段階からだとされる。ジャズの禁止、横文字の禁止。意外と遅いのである。しかも鬼畜米英というスローガンが登場するのは1944年に入ってから。対米と対英の意識に差があり、戦時下においてもアメリカに対してはある種の憧れのまなざしが底流にあったとされる。
榊原主計参謀本部総務課長が東条の発言を書きとったメモが記録として残されている。そこには東条は、米国の民主主義について考えが足りなかったとし、統帥権の独立は完全い間違いだった、あれが災いの元だったといっている。日本の場合は国民に十分に知らせず、自覚を持たせず、そして軍の側が引き回した結果になってしまった。
マッカーサー軍は日本軍の士気を低下させるため、対日心理作戦を実施。心理作戦では嘘の宣伝では信用を失うので必ず真実を述べる方針、軍国主義者は批判するが、天皇は批判しない。戦争責任も同じであり、対日心理作戦の発想がそのまま占領政策に持ち込まれていたような気がすると吉田氏は主張
東京裁判は、アメリアの一方的裁判のイメージが強く、そのことが日本社会にかなり強く定着しているが、ちょっと違う。日米が協力し合いながら、すべての責任を、軍部、特に陸軍に押し付け、そして天皇を免責にするといった側面がある
GHQ民政局長が米内元海軍大将に「米国大統領の天皇の責任を問わない姿勢を伝え、米国内にはその方針に対する反対論も相当あるが、反対論に油を注ぐような答弁があると、処置なし。東条の答弁はどうか」と質し、このことが、米内から東条の弁護人の塩原氏に伝えられた。同様のことが、キーナン検察官からも塩原に伝わる。この話は、東久邇宮を通じて昭和天皇にも報告され、天皇も事の成り行きに大きな関心を払っていたとある。
。
関連記事
-
-
フェリックス・マーティン著「21世紀の貨幣論」をよんで
観光を理解する上では「脳」「満足」「価値」「マネー」が不可欠であるが、なかなか理解するには骨が折れる
-
-
「東日本大震災復興に高台造成はやはり必要なかった」原田 泰
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22460?utm_sou
-
-
QUORAに見る観光資源 日本から出たことがないのでわからないのですが、日本は本当に治安が良いのですか?松本 貴典 (Takanori Matsumoto),
日本から出たことがないのでわからないのですが、日本は本当に治安が良いのですか?松本 貴典 (Tak
-
-
『「日本の伝統」の正体』
現在、「伝統」と呼ばれている習慣の多くが明治時代以降に定着したと聞いたら驚く人も多いかもしれない
-
-
『江戸のパスポート』柴田純著 吉川弘文館
コロナで、宿泊業者が宿泊引き受け義務の緩和に関する政治的要望を行い、与党も法改正を行うことを検討
-
-
『天皇と日本人』ケネス・ルオフ
P114 マイノリティグループへの関心 p.115 皇室と自衛隊 他の国の象徴君主制と大きく
-
-
「若者の海外旅行離れ」という 業界人、研究者の思い込み
『「若者の海外旅行離れ」を読み解く:観光行動論からのアプローチ』という法律文化社から出版された書
-
-
若者の課外旅行離れは本当か?観光学術学会論文の評価に疑問を呈す
「若者の海外旅行離れ」を読み解く:観光行動論からのアプローチ』という法律文化社から出版された書籍が
-
-
『天安門事件を目撃した日本人たち』
天安門事件に関する「藪の中」の一部。日本人だけの見方。中国人や米国人等が作成した同じような書籍があ
