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『セイヴィング・ザ・サン』 ジリアン・テッド

公開日: : 最終更新日:2023/05/30 出版・講義資料, 路銀、為替、金融、財政、税制

バブル期に関する書籍は数多く出版され、高杉良が長銀をモデルに書いた『小説・ザ・外資』はアンチハゲタカファンド思想で書かれた代表例。これとは対照的に本書は、ファイナンシャルタイムズ東京支社長を2年間務めた30代英国人女性によるもの。例によって港区図書館で借りて読む。高橋治則イ・アイ・イ社長 大野木克信長銀頭取、八城政基新生銀行頭取の3人を中心に展開。高橋氏には、日経新聞の記者に頼まれて、瀬戸大橋開通式に高松出身の義父岩沢靖氏の参加の依頼を受けた時に、その存在をはじめて知った。柿の木坂の自宅に行ったとき、車止めの大きさに驚きどう人かと思ったからである。第二部で“ガイジンの襲来”と恐れられた起業再生ファンドリップルウッドが長銀を買収した舞台裏が描かれている。リスクが多い長銀を引き継ぐには、米国、韓国等での金融の売却に際に知られているロスシェアリングを用い、将来的に資産が不良化した場合に売り手と買い手が応分に負担することを約束することが合理的である。しかし90年代半ばの住専問題でこの流儀を採用して悲惨な結果に終わった日本政府は、のちに激しい批判を浴びる「瑕疵担保条項」を提案した。この仕組みはコストが膨大なものになる可能性があり、日本政府は物事をただただ引き延ばすという風潮だと記述されているが、それはコロナ禍でも変わっていない。第三部では、アメリカ流の経営手法を大幅に取り入れた新生銀行が、「そごうショック」や金融庁との闘いを乗り越えてIPO(新規株式公開)を果たすまでの歩みを検証している。インドの会社が販売するシステムを採用し、米国デルの廉価なコンピュータを購入したおかげで、邦銀が投資する額の10分の1の60億円でITシステムを変えることができた。みずほ銀行がいまだにトラブルを抱えているのとは好対照である。そごうの破たんは私にも現場感覚がある。JR東に出向中、立川の駅ビルに百貨店を設立する業務に携わり、そごう百貨店の人たちにいろいろ教わった経験がある。同時に日本の私鉄系百貨店が、鉄道側からの破格の賃料により成り立っていることも知った。旧日本興業銀行等も不良債権を抱えているそごうに、新生銀行が瑕疵担保条項を使用することを竹中金融再生大臣の前任者は嫌っていた。国民が嫌うからであり、といって放置することも国民は嫌うのであった。ハゲタカファンドや竹中平蔵嫌いの風潮は今でも継続している。 

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