*

「温度生物学」富永真琴 学士会会報2019年Ⅱ pp52-62

公開日: : 最終更新日:2023/05/28 出版・講義資料, 脳科学と観光

観光学研究に感性アナライザー等を用いたデータを蓄積した研究が必要と主張しているが、生物学では温度生物学まで提唱されるように研究が進んでいる。人を移動させる刺激には、避暑避寒もあり温度も大きな要素である。温度による観光需要の変化等を実証的に研究したものは、まだ知らないから、若手研究が手掛けるといいと思う。)

 

以下表記論文のメモ

環境温度の感知は生存にとって重要機能

温度受容に係る研究は責任因子である温度センサーが不明なまま長らく続いてきた

温度感受性分子としてカプサイシン受容体TRPV1チャンネルがクローニングされ、一気に研究が進んだ

感覚神経で環境温度を感じるためには環境温度刺激が電気信号に変換されなければならない

温度感受性TRPチャンネル

1997年にラット感覚神経から哺乳類で初めて温度で活性化されるセンサー分子としてTRPV1が発見された

TRPチャンネルは、ヒトや鳥類、線虫などにおいて視覚、味覚、臭覚、聴覚、触覚、温覚、その他様々な物理・化学刺激の受容に極めて重要であることが分かっている

温度感受性TRPチャンネルの構造が原子レベルで明らかにされてきたが、未だに温度がどのようにしてチャンネル開口をもたらすかは明らかでなく、細胞膜脂質の関与が示唆されている。

TRPV1は43度という私たちの身体に痛みをもたらす熱という物理刺激のみならずカプサイシンを含む辛み物質(化学刺激物質)で活性化され、それらの刺激に相乗作用がある。暑くて辛い物をより辛く感じる。体温変化は起こらず感覚神経をだますようにして、温度感覚をもたらす。

温かいと甘みが増す現象や体温が高いと免疫機能が維持される現象等に関わっている。

現在の脊椎動物の温度感受性TRPチャンネルの基本的なレパートリーは脊椎動物の初期の時点ですでに備わっていた

 

温度を化学シグナルとは異なる「温度シグナル」として捉える考え方が提唱され「温度生物学」は生物学研究の一つの大きな方向である

関連記事

no image

聴覚 十二音技法

https://youtu.be/HeXEzMWi2EI 時代は無調の音楽に対する準備

記事を読む

no image

筒井清忠『戦前のポピュリズム』中公新書

p.108 田中内閣の倒壊とは、天皇・宮中・貴族院と新聞世論が合体した力が政党内閣を倒した。しかし、

記事を読む

no image

『美味しさの脳科学』ゴードン・M・シェファード

盲視があるように盲臭もある。 言語を使って風味を評価しようとするのは、最高難度の部類

記事を読む

鬼畜米英が始まったのは、1944年からの現象 岩波ブックレット「日本人の歴史認識と東京裁判」吉田裕著

靖国神社情報交換会に参加した。歴史認識は重要な観光資源であるとする私の考えに共鳴されたメンバーの

記事を読む

no image

ここまで進化したのか 『ロボットの動き』動画

https://youtu.be/fn3KWM1kuAw

記事を読む

人口減少の掛け声に対する違和感と 西田正規著『人類史のなかの定住革命』めも

多くの田舎が人口減少を唱える。本気で心配しているかは別として、政治問題にしている。しかし、人口減少と

記事を読む

no image

『シベリア出兵』広岩近広

知られざるシベリア出兵の謎1918年、ロシア革命への干渉戦争として行われたシベリア出兵。実際に起

記事を読む

no image

横山宏章の『反日と反中』(集英社新書2005年)及び『中華民国』(中央公論1997年)を読んで「歴史認識と観光」を考える

 歴史認識を巡り日本と中国の大衆が反目しがちになってきたが、私は歴史認識の違いを比較すればするほど、

記事を読む

no image

ゲルニカ爆撃事件の評価(死者数の大幅減少)

歴史には真実がある。ただし人間にできることは、知りえた事実関係の解釈に過ぎない。もっともこれも人間

記事を読む

no image

山泰幸『江戸の思想闘争』

社会の発見 社会現象は自然現象と未分離であるとする朱子学に対し、伊藤仁斎は自然現象

記事を読む

PAGE TOP ↑