Quora Ryotaro Kaga·2019年8月1日Sunway University在学中 (卒業予定年: 2024年)なぜこんなに沢山の日本人女性が未婚なのですか?
公開日:
:
最終更新日:2023/05/21
出版・講義資料
Ryotaro Kaga·2019年8月1日Sunway University在学中 (卒業予定年: 2024年)なぜこんなに沢山の日本人女性が未婚なのですか?
私はちょっと違った視点から答えようと思います。
結論を言うと、結婚したがらない男性が増えているからです。まず、現状を整理してみましょう。人口動態統計から算出される2016年の平均初婚年齢は、男性が31.1歳、女性29.4歳であり、晩婚化が進行しています。また、婚姻件数そのものも減少を続けており、2016年は62万351組過去最低を記録しました。これは1970年代前半のおよそ半分の水準となります。非婚化、晩婚化を引き起こした理由については、若年世代の所得水準が全体的に落ち込んでしまったことをはじめ諸説あります。その一つが「今時の女性は結婚をメリットに感じていない。むしろデメリットに感じている。何故ならば、家事負担、育児負担が重いからだ。」という論調です。確かに、この国の出産、育児環境は十分に整備されていません。共働きの夫婦となれば、仕事が多忙であることで家事や育児に割く時間的リソースの捻出は容易ではないです。また、男性の家事負担割合は他の先進国と比べて低いです。そうした事実を挙げれば、先述した論調にも説得力が生まれます。しかし、これはあくまで一側面に過ぎません。この裏には男性が結婚を忌避している不都合な真実があるのです。
国立青少年教育振興機構の調査によると、以下の通りです。
2008年から2015年にかけて男女の結婚願望の変遷を調べたところ、「結婚したくない」と考える人々の割合は男女とも増加しているものの、その割合がより大きくなっているのは男性であり、女性の倍近くになっています。一方、女性は「早く結婚したい」と考える層はむしろ増加しており、両者の結婚に対する願望が対照的になりつつあることを示唆しています。つまり、「女性が結婚にデメリットしか感じなくなっている」という言説は、わずかに増加した「結婚したくない」層のみをフォーカスしたものでしょう。むしろ、「結婚を希望する女性の割合は全体としては大きく変わらず、結婚したがらない男性が大幅に増加した」というのが実情です。
こちらのグラフもご覧ください。
国立社会保障・人口問題研究所によると、25〜34歳の独身男女が結婚せず独身でいる理由を調査したところ、「まだ必要性を感じない」と答えた女性は調査を重ねるごとに減少していることが明らかになっています。男性で特に高いのは結婚資金に対する意識です。男性の生涯未婚率は年収と反比例の関係性を描いていることからも、経済的問題が婚姻形成の足かせになってることが推測されます。また、厚労省の調査によれば、生涯未婚率の将来推計では2035年には男性の3割が生涯未婚となる計算となり、女性とは大きく差があることが示されています。この男性の多くが「結婚に対して魅力を感じなくなった男性」が存在していると考えるのが自然でしょう。まさに男性避婚化社会です。
「女性が結婚をしたがらなくなった」という説における頻出の論拠として「女性は育児・家事の時間的負担が大きい」というものがあります。統計的にもそのことについてはとりわけ誤りはありません。しかし、この事実を持って「男性に比べて女性の負担が重くのしかかり、抑圧を受けている、不当な扱いを受けている」という結論を導出することはいささか飛躍した論理と言わざるを得ないでしょう。というのも、「男性の労働時間+家事時間」の合計は「女性の労働時間+家事時間」の合計とほとんど等しいことが、総務省統計局の資料によって明らかになっています。また、その傾向は子供がいたとしてもほとんど変わりはないです。それどころか、子育てが最も忙しくなる時期は、男性にとっても仕事が最も忙しくなる時期と重なっていることが、総務省の「労働力調査」における統計によっても明らかになっています。年齢別就業時間が週60時間以上の男性就業者の割合の推移を示したのが以下のグラフです。
これを見ると30代〜40代の育児や教育に最も忙しくなる時期に、労働負荷が強まっていることがわかります。従って、「男性に比べて女性の負担が重く、抑圧を受けている、不当な扱いを受けている」という俗説の裏には、「男性が家事育児に参加したくても、労働時間が長すぎて参加できないという」という側面が隠されているのです。よく北欧のパパたちが家事育児に参加している映像が流れて、賞賛する日本人がいますが、海外と日本の労働環境や拘束時間を考慮しろと言いたくなりますね。単純な二項対立ではない話なんですよね。メディアもこういうことを報道すればいいのに。
話を戻して、なぜ男性が結婚を避けるのか、もう一つの理由は離婚後のリスクです。日本の男性は、離婚後に親権を取れません。日本では慣習的に親権者の8〜9割が母親になるといわれています。離婚後の子供の生活においては、生活環境の維持が重視されることによるとされています。父親は経済力はあるかもしれないが、子供の生育環境に維持に努めてきたのは母親であるという傾向性を反映したものであるとも言えます。一方で、たとえばアメリカでは、親権は共同親権・共同養育権という仕組みが一般的で、養育に関する費用だけをひたすらに負担させられる日本の父親とは対照的です。離婚した場合、父親らしいことはできず、ただ金を払わせ続けるというのが現状です。また、親権を手に入れた母親も、離婚後は生活水準が悪化し、貧困の連鎖という現象を引き起こす場合もあります。離婚後の経済的リスクが男性に、養育リスクが女性にそれぞれ集中してしまう現在の制度はを変える必要がありますね。
もう一つ大きな理由はそもそも男性が子供を欲しくないと考えているからです。先述した国立青少年教育振興機構の調査では、子育て願望についての調査がなされています。その調査によると、女性については「結婚したらすぐにでも子供が欲しい」と考える層と「子供は欲しくない」と考える層の二極化傾向が見られる一方、男性は「子供は欲しくない」と考える層だけが増加傾向にあることが示されています。一般的な理由としては経済的負担が大きいことが考えられます。男性にとって子供を持つこと自体が「生涯完済不能な負債(離婚時に9割の確率で発生してしまう養育費負担義務」のリスクを共起することは、男性の「子なし願望」の増加に一役買っていると考えられます。
世間からも妻からも、自身に課せられた重労働に対して理解されることはほとんどなく、稼得能力の維持を求められる一方で、「家庭をないがしろにして、家事育児の負担を妻に押し付けているブラック夫」となじられるようなダブルバインドにさらされ、耐えきれず離婚してみれば永久に消えない経済的コスト負担だけが課せられる。これが現代の結婚制度であり、これに合理的な魅力を見出せと求める方が残酷と私は考えますね。
私自身も両親の結婚生活、私を含めた三人兄弟の子育て、昨今の結婚の現状を考慮するとあまり結婚に対して素晴らしいイメージは持てませんし、子供が欲しいという願望もありません。欲しいというより子育てがめんどくさいという思いが勝ってしまいますね。経済的余裕が十分にあれば、結婚もなくはないと思いますが、なければ絶対結婚なんかしませんね。また、こういう記事を見るとなんだかなーと思ってしまいます。恋愛はしたいけど結婚はしたくないというのが本音ですね。基本一人が好きな人間でして。参考になれば幸いです。
関連記事
-
-
ここまで進化したのか 『ロボットの動き』動画
https://youtu.be/fn3KWM1kuAw
-
-
QUORA 第二次世界大戦 · フォロー中の関連トピック 米国は、日本の真珠湾攻撃の計画を実際には知っていて、戦争参入の口実を作るために敢えて日本の攻撃を防がなかった、というのは真実ですか?
回答 · 第二次世界大戦 · フォロー中の関連トピック米国は、日本の
-
-
『パッケージツアーの文化史』吉田春夫 草思社
港区図書館の新刊本コーナーにあり、さっそく借り出して読んだ。JTBでの実務経験が豊富な筆者であり、
-
-
「温度生物学」富永真琴 学士会会報2019年Ⅱ pp52-62
(観光学研究に感性アナライザー等を用いたデータを蓄積した研究が必要と主張しているが、生物学では温
-
-
人口減少の掛け声に対する違和感と 西田正規著『人類史のなかの定住革命』めも
多くの田舎が人口減少を唱える。本気で心配しているかは別として、政治問題にしている。しかし、人口減少と
-
-
公研2019年2月号 記事二題 貧富の格差、言葉の発生
●「貧富の格差と世界の行方」津上俊哉 〇トーマスピケティ「21世紀の資本」
-
-
『日本車敗北』村沢義久著 アマゾンの手厳しい書評
車の将来の議論の前提に、地球温暖化への見解 ガソリン車 電気自動車 エンジンではな
-
-
『セイビング・ザ・サン リップルウッドと新生銀行の誕生』ジリアン・テット 武井楊一訳
バブル期の金融問題に関する書籍は数多く出版され、高杉良が長銀をモデルに書いた『小説・ザ・外資』はハ
-
-
有名なピカソの贋作現象 椿井文書(日本最大級偽文書)青木栄一『鉄道忌避伝説の謎』ピルトダウン原人
下記写真は、英国イースト・サセックス州アックフィールド(Uckfield)近郊のピルトダウンにある
-
-
脳科学 ファントムペイン
四肢の切断した部分に痛みを感じる、いわゆる幻肢痛(ファントムペイン)は、脳から送った信号に失った