*

戦略論体系⑩石原莞爾(facebook2021年5月23日投稿文)「極限まで行くと、戦争はなくなるが、闘争心はなくならないので、国家単位の対立がなくなるという。」

公開日: : 最終更新日:2023/05/29 出版・講義資料, 歴史認識, 軍隊、戦争

石原莞爾の『世界最終戦論』が含まれている『戦略論体系⑩石原莞爾』を港区図書館で借りて読んだ。同書の存在は多くの人が知っていると思うが、実際に読んだ人は多くないのであろう。コロナで時間もあり、読んでみることにしたが、正直言って宗教的な部分も多く、内容よりもはやり石原莞爾という人物の著作であるということが同書を有名にしているとの感じた。AMAZONのカスタマー書評の投稿はゼロであるからほとんど読者はいなくなっているのであろう。
  戦争史が大観されている記述は、素人の私には新鮮であったが、おそらく専門家には極めて教科書的なものなのであろう。例えば、フランス革命では兵器の進歩はなく、傭兵から徴兵という社会の変化が、持久戦から決戦戦争になったこと、ナポレオンの軍事的才能は年とともに発達したが、相手もそれを覚えてしまったことが記述されているが、その分野では当時から常識だったのであろう。1940年のドイツの快進撃である「第二次欧州大戦」に関する記述を読んでいると、その名称を含め他人事のように書かれており、まだ日本が本格的に巻き込まれていないことが実感できる。その決戦スタイルが今日の戦争の本質ではないという結論を述べているが、そのこともほぼ常識であったと思われるが、それだけになぜ真珠湾攻撃をしたのか理解に苦しむのである。
  戦闘群の指揮単位が時代を追い、大隊、中隊、小隊、分隊と次第に小さくなり、最後は個人、即ち国民と記述する。従って総力戦になるとする。石原莞爾は成層圏での決戦までは予測し、その先は4次元でわからないとするが、現代は個人を超えて、ロボットとヴァーチャルに近くなっている。極限まで行くと、戦争はなくなるが、闘争心はなくならないので、国家単位の対立がなくなるという。すなわち、世界最終決戦戦争のあと人口は半減するものの、持てる国と持たざる国が一つになるという。戦争の発達の極限が戦争を不可能にするというのは、キューバ危機を経験した現代人には理解しやすい。日本の戦国時代を統一したのは兵器の進歩の結果だとする点もわかりやすい。兵器が使えないから、はなはだ迂遠な方法であるが言論戦で選挙を戦っているともいう。この点は現代の国際社会を考えると、米国軍事力が不十分で、言論戦ではないということが理解できる。石原は核兵器的なものを予想していたようであるが、その破壊力や放射能被害を創造する段階までには至っていない。当然でもあり、米国はビキニ環礁で島民に死の灰を降らせたわけである。
  明治維新後民族国家を形成するため他民族を軽視する傾向が強かったと記述し、「シナ」事変に否定的であるが、満州事変が「シナ」事変の引き金になっていることを思えば、素直に同意もしにくい。最終決戦は、ロシア、ドイツ、アメリカ、日本とするが、現代の常識では、アメリカと中国、あるいはインドが参加するということなのであろう。石原は、最終決戦がいつ来るかは、占いのようなものというものの、30年を想定している。
  決戦のため、日本は昭和維新を断行し、そのための国策の重要課題は東亜連盟結成と生産力の大拡充とする。東亜連盟は、明治維新の廃藩置県のように、民族協和であり、満州国建国の精神とする。日本国は盟主ではないが、天皇は盟主であると記述する。天皇否定をすることができないであろうから、このような記述になったのかもしれないが、英国植民地の独立後、英連邦の各国が元首にエリザベス女王にいただいたことを思うと、先見の明があったのかもしれない。
 産業大革命については、あらゆるものが容易に生産できる第二次産業革命が起きているとする。当時でもその感覚があったのであるから、今日から将来を想定すると、モノの生産は問題ではなくなるのかもしれない。石原はこの後、宗教論を展開するが、私の理解を超えており、割愛した。
 あと、同書には講演録等が掲載されており、日露戦争はラッキーだったこと、脱靴だけは日本式等の記述があり、暇つぶしに読むには面白いと思う。陸大受験の記述は、子供の頃父親の陸大受験勉強経験を聞いていたことをつい思い出してしまう。

関連記事

歴史認識と書評 岡部伸『消えたヤルタ密約緊急電』

書評1第二次世界大戦のことを勉強してもここまでたどり着く人たちはなかなかいないだろう。上面な敗戦処

記事を読む

no image

ダークツーリズムと『脳科学からみた「祈り」』中野信子著

ダークツ―リズム 怖いもの見たさの時の脳内物質を調査する必要がある。その調査をせずして、ダークツー

記事を読む

no image

学士会報926号特集 「混迷の中東・欧州をトルコから読み解く」「EUはどこに向かうのか」読後メモ

「混迷の中東」内藤正典 化学兵器の使用はアサド政権の犯行。フセインと違い一切証拠を残さないが、イス

記事を読む

no image

『QUORA 日本人の賃金が30年間増えなかった理由』vs 渡辺努東大教授の「物価と賃金の心地よい状態」説

渡辺努「世界と日本の物価に何が」2022年12月13日 (火) https://www.nhk

記事を読む

no image

Quora 「汎化性能」

すべてのデータサイエンティストが知っておくべき、統計学の重要なトピックはなんでしょうか?

記事を読む

書評『日本社会の仕組み』小熊英二

【本書の構成】 第1章 日本社会の「3つの生き方」第2章 日本の働き方、世界の働き方第3章

記事を読む

幸田露伴『一国の首都』明治32年 都議会議員和田宗春氏の現代語訳と岩波文庫の原書で読む。港区図書館にある。 

幸田露伴は私の世代の受験生ならだれでも知っている文学者。でも理系の人でもあり、首都論を展開してい

記事を読む

no image

○『公研』2015年9月号「世界のパワーバランスの変化と日本の安全保障」(細谷雄一)を読んで

市販はされていないが、毎月送られてくる雑誌に公益産業研究調査会が発行する『公研』という雑誌がある。読

記事を読む

no image

伝統も歴史も後から作られる 『戦国と宗教』を読んで

 横浜市立大学の観光振興論の講義ノート「観光資源論」を作成するため、大学図書館で岩波新書の「戦国と宗

記事を読む

no image

【ゆっくり解説】【総集編】ガチで眠れなくなる「生物進化」の謎6選を解説/ミッシ ングリンク、収斂進化、系統樹、生命起源【作業用】【睡眠用】

https://youtu.be/ACEmkF1-g88

記事を読む

旅系Youtube 日本人 個性 女性 マミヤログ 登録1万人

 

重慶旅行 重慶の大きさ

https://www.facebook.com/share/1G31

no image
ディケンズの生きた時代のロンドン住環境

https://youtu.be/ZthiTttu0X8?si=31h

no image
ポルトガル、島しょ部旅行資料

現在のポルトガルの置かれている状況 https://youtu.

AI研究者と俳人 人はなぜ俳句を詠むのか amazon書評

AIが俳句を「終わらせる」可能性は、これまでの「人間による創作」という

→もっと見る

PAGE TOP ↑