*

若者の課外旅行離れは本当か?観光学術学会論文の評価に疑問を呈す

公開日: : 最終更新日:2021/08/05 出版・講義資料, 観光学評論等

「若者の海外旅行離れ」を読み解く:観光行動論からのアプローチ』という法律文化社から出版された書籍があり、観光学術学会から平成28年度著作賞を受けている。

しかしながら、日本人の若者は海外旅行離れをしていないという記事をNPO法人ジャパンナウ観光情報協会の機関紙2020.07号に掲載しておいた。

観光庁のHPに「近年、若者の旅行離れ、特に海外旅行離れに関するさまざまな指摘がされ」「若者旅行の振興に取り組んでいます」とある。その判断の基礎には、2007年の日本旅行業協会が行った調査があると思われる。しかし、某大学観光学部の教科書作成のため調査したところ、そのような傾向は見当たらず、むしろ日本人青年の旅行行動は、欧州主要国と比較して国際的にも遜色がないものであることが分かった(表1)。誤解された原因は、若者人口の絶対数が減少していることと、旅行を牽引してきた団塊世代が旅行しなくなったこと(表2)にある。それよりショッキングな表・グラフがある(表3)。一目瞭然で日本の地位の低下がわかる。1995年をピークに日本の海外旅行力が低下し他国の力(灰色部分)が増加している。世界の旅行市場が大きく拡大(灰色部分)しているにもかかわらず、日本の送り出し市場は縮小し、増加したインバウンド市場はそれを補うだけの拡大もしていないということがわかる。他国との比較において、実際に旅行をする日本人の海外、国内におけるパフォーマンスは悪くなく、日本人全体としての出国数が長期に横這いの間に、多くの国に追い抜かれ、日本のプレゼンスが低下したのである。現状維持のまま推移しているうちに、極東諸国民の行動が向上し、我々の周りに増加した。それをインバウンドと称し、日本の文化が見直されたと思ったのであろう。失われた25年が観光の世界でも理解できる。

政府は訪日外客数の目標を2000万人から4000万人(2020年目標)に改定している。観光立国推進基本法の理念が国の誇りにあり、国際社会にふさわしい外客数の確保にあるとする限り、4000万人の目標は日本の人口の33%程度であり国際水準からすれば妥当である。

訪日客の増加以上に受取額は増加し、2018年に日本4210億ドルと初めて中国を上回った。外客数、受取額の増加にもかかわらず日本のドル建てGDPは増加せず、むしろ減少している。所得水準において、北はアイスランドから南はハワイに至るまで、日本のローカル地域は大きく水をあけられ、珠江デルタの都市住民にも日本の地方住民は所得で追い抜かれつつある。日本国民の所得を伸ばすことができれば、出国率も高まり、観光立国推進基本法が目的とする、国の誇り、地域の誇りの確保もはかれるのである。

関連記事

no image

加太宏邦の「観光概念の再構成」法政大学 法政志林54巻4号2008年3月 を読んで

加太宏邦の「観光概念の再構成」法政大学 法政志林54巻4号2008年3月の存在をうかつにも最近まで知

記事を読む

no image

ジャパンナウ観光情報協会機関紙138号原稿『コロナ禍に一人負けの人流観光ビジネス』

 コロナ禍でも、世界経済はそれほど落ち込んでいないようだ。PAYPALによると、世界のオンライン

記事を読む

『フクシマ戦記 上・下』船橋洋一   菅直人の再評価

書評1 2021年4月10日に日本でレビュー済み国民の誰もがリアルタイムで経験した

記事を読む

no image

辛坊正記氏の日本の中小企業政策へのコメント 

下請け泣かせにメス、政府が価格交渉消極企業を指導-150社採点 Bloomberg 2023/02

記事を読む

no image

倉山満著『お役所仕事の大東亜戦争』1941年12月8日『枢密院会議筆記』真珠湾攻撃後に、対米英宣戦布告の事後採決

海軍が真珠湾攻撃のことを東条に伝えたのは直前のこと 倉山満著『お役所仕事の大東亜戦争』p.2

記事を読む

英国通貨がユーロでない理由 志賀櫻著「日銀発金融危機」

  ポンド危機と英国通貨がユーロでない理由 サッチャー政権

記事を読む

no image

生涯弁護人事件ファイル2 広中惇一郎

第一章 報道が作り出す犯罪 安部英医師薬害エイズ事件 アメリカの人気番組 LAW &

記事を読む

no image

『平成経済衰退の本質』金子勝 情報、金、モノ、ヒト、自然 について、グローバリゼーションのスピードが違うことを指摘 情報と人流のずれが、過剰観光

いつも感じることであるが、自分も含め観光学研究の同業者は、研究原理を持ち合わせていないということ

記事を読む

no image

「若者の海外旅行離れ」という 業界人、研究者の思い込み

『「若者の海外旅行離れ」を読み解く:観光行動論からのアプローチ』という法律文化社から出版された書

記事を読む

no image

『QUORA 日本人の賃金が30年間増えなかった理由』vs 渡辺努東大教授の「物価と賃金の心地よい状態」説

渡辺努「世界と日本の物価に何が」2022年12月13日 (火) https://www.nhk

記事を読む

PAGE TOP ↑