*

『起業の天才 江副浩正 8兆円企業を作った男』大西康之

公開日: : 最終更新日:2023/05/28 出版・講義資料

父親の縁で小運送協会が運営していた学生寮に大学1,2年と在籍していた。その時の一年先輩に理科二類の人がおり、将来は会社を作るのだと夢を語っていたことを思い出す。全共闘の紛争もあり留年してリクルートで働いておられたことを思い出す。その人の影響もうけて、1970年一人で台湾、香港に旅行した。大臣官房企画部門で物流を担当していた時の上司が、東大新聞でアルバイトをして入省前に家を買ったという人で、才能のある人だった。江副さんより生まれるのが少し遅かったようだ。国際運輸観光局時代に「海外旅行倍増計画」に携わり、上司の紹介でリクルートの人と付き合った。Abroadという雑誌の責任者の倉田さんという人だった。

本書は、江副氏への期待を込めて、現在の日本の体たらくを嘆いている。法的な根拠もあやふやなまま、江副氏とリクルートを「悪の帝国」に仕立て上げ、世論はいけにえを求め、検察はそれに答えたとも記述する。国民に10兆円を超える負担を強いた大銀行の幹部や行政の責任は問われることはなかったからだ。江副氏が作りたかったのはGoogleやAmazonのような企業だったのだろうとも記述している。同じくつぶされたホリエモンよりは人材育成力はあると思われる。特に観光産業で財界のリーダー格は近年、西武、東急等二代目企業家は存在したが創業者はいない。HISの澤田さんくらいでは寂しい限りである。

携帯電話にi-modeが入った頃、国土交通省情報管理部長をさせてもらい、docomoの人たちとお付き合いさせてもらったが、本書を読む限りは、iphoneは生まれなかったような気がしてしまう。素人の私でもGPS標準搭載の商品を期待していたのだが、数年遅れてしまった。リクルートとNTTの関係が事件でおかしくなり、情報通信の方向性が変わってしまったからだと本書はしている。

今や観光産業は生産性の低い低付加価値産業だといわれており、コロナの直撃を受けてしまった。日本経済への打撃は全体で5%程度ともいわれ、税収はむしろ伸びているから、人流・観光産業等の一人負けである。その上、リーダー不在なのか、ポストコロナに向かっても中小企業的発想しか出てこない。

リクルートは江副氏の残した1兆8千億の借金を自力で返済した。バブル処理に財政が10兆円負担したことを思えば、大変なことである。2013年江副氏は息を引き取り、117億円の遺産を残したが、本書はたったそれだけと記述する。2014年上場し、個人株主の位田氏(当時の社長)や河野氏は400億円を超える資産を手にすることとなった。

関連記事

no image

戦陣訓 世間が曲解して使用し、それが覆せないほど行き渡ってしまった例  

世間が曲解して使用し、それが覆せないほど行き渡ってしまった例である。「もはや戦後ではない」は私の

記事を読む

no image

公研2019年2月号 記事二題 貧富の格差、言葉の発生

●「貧富の格差と世界の行方」津上俊哉 〇トーマスピケティ「21世紀の資本」

記事を読む

no image

『中国人のこころ』小野秀樹

本書を読んで、率直に感じたことは、自動翻訳やAIができる前に、日本型AI、中国型自動翻訳が登場す

記事を読む

書評『シュリューマン旅行記 清国・日本』石井和子訳

日本人の簡素な和式の生活への洞察力は、ベルツと同じ。宗教観は、シュリューマンとは逆に伊藤博文等が

記事を読む

no image

ネット右翼を構成する者 メディアが報じるような「若者の保守化」現象は見られない

樋口直人は『日本型排外主義』の中で、大部分は正規雇用の大卒ホワイトカラーであるとし、古谷経衡も「ネ

記事を読む

人口減少の掛け声に対する違和感と 西田正規著『人類史のなかの定住革命』めも

多くの田舎が人口減少を唱える。本気で心配しているかは別として、政治問題にしている。しかし、人口減少と

記事を読む

『知の逆転』吉成真由美 NHK出版新書

本書はジャレド・ダイアモンド、ノ―ム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、ト

記事を読む

no image

小城鎮建設論

p.82 改革・開放が始まって暫くの間、「小城鎮建設論」 都市と農村の中間地帯=小城鎮を豊かにし、そ

記事を読む

no image

DNAで語る日本人起源論 篠田謙一 をよんで(めも)

篠田氏は、義務教育の教科書で、人類の初期拡散の様子を重要事項として取り上げるべきとする。 私も大賛

記事を読む

鬼畜米英が始まったのは、1944年からの現象 岩波ブックレット「日本人の歴史認識と東京裁判」吉田裕著

靖国神社情報交換会に参加した。歴史認識は重要な観光資源であるとする私の考えに共鳴されたメンバーの

記事を読む

no image
ロシア旅行の前の、携帯wifi準備

https://tanakanews.com/251206rutrav

no image
ロシア旅行 田中宇

https://tanakanews.com/251205crimea

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

→もっと見る

PAGE TOP ↑