『発掘捏造』毎日新聞旧石器遺跡取材班
公開日:
:
最終更新日:2021/08/05
出版・講義資料
もう20年も前の事であるが、毎日新聞取材班の熱意により旧石器遺跡の捏造事件が発覚した。その結果、日本の前期旧石器時代に関する教科書の記述が削除されることとなった。教科書の記述がその後の研究成果を反映して改正されることは多く、仁徳天皇御陵や鎖国等、団塊の世代が学修した歴史用語もかなり改正されている。しかし従軍慰安婦等、細かく指摘がなされる歴史認識問題とは異なり、前記旧石器時代に関する記述は、全く検証すら行われていなかったようだ。発掘時から海外はもとより国内でも疑問視する合理的意見があったようだが、原人ブーム等に沸く地元の観光資源化、地域おこしへの期待やメディアの過熱ぶりに押されたのか、閉鎖的な考古学会の体質は変わらなかったようだ。
私は、この事件に関しては観光資源への関心の立場から、違った見方をしていた。英国のピルトダウン人も捏造であったが、仕掛け人はコナンドイルだったかもしれないというようにいまでも話題になっている。記念碑もあるようだ。日本人の私でも現地に行ってみようと思うくらいだから、十分に観光資源の役割を果たしている。一方、話題になった高森遺跡等は、ネットで見る限り、現在はその片鱗も見せていないが、Wikipediaでは旧築館町等が必ず出てくる。おそらく捏造事件がらみでの検索ヒット数の方が、地域の公的情報よりも多いであろうから、観光資源としては十分である。歌舞伎の題材を持ち出すまでもなく、史実が検証されていない歴史的事件が観光資源資源化されているものは、安宅関の弁慶像など、全国にいくらでもある。Fake-tousimとでも分類して、大いに話題を楽しめばいいと思う。
関連記事
-
-
三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』なぜ日本に政党政治が成立したのか
1 なぜ日本に政党政治が成立したのか (これまではなぜ政党政治は短命に終わったかを論じてきた)
-
-
AIに聞く、甘利俊一博士の「脳・心・人工知能」を参考にした、『観光資源反応譜』の提案
人流・観光に関する学生用の教科書として、amazonのkindleで『人流・観光学概論』を出版してい
-
-
保護中: 『植物は知性を持っている』ステファノ・マンクーゾ 動物と植物は5億年前に進化の枝を分かち、動物は他の動植物を探して食べることで栄養を摂取する「移動」、植物は与えられた環境から栄養を引き出す「定住」、を選択した。このことが体構造の違いまでもたらしたらしい。「目で見る能力」ではなく、「光を知覚する能力」と考えれば、植物は視覚を持つ
植物は「動く」 著者は、イタリア人の植物生理学者ステファノ・マンクーゾである。フィレンツェ大学国際
-
-
『江戸の旅と出版文化』原淳一郎
中世宗教史と異なり近世宗教史の大きな特徴に寺社参詣の大衆化がある。新城常三の「社寺参詣の社会経済史
-
-
『ルポ ニッポン絶望工場』井出康博著
日本で働く外国人労働者の質は、年を追うごとに劣化している。 すべては、日本という国の魅力が根本のと
-
-
『セイヴィング・ザ・サン』 ジリアン・テッド
バブル期に関する書籍は数多く出版され、高杉良が長銀をモデルに書いた『小説・ザ・外資』はア
-
-
『物語 ナイジェリアの歴史』島田周平著 中公新書
アマゾン書評 歴史家トインビー曰く、アフリカはサハラ砂漠南縁を境に、北のアラブ主義
-
-
「米中関係の行方と日本に及ぼす影響」高原明生 学士會会報No.939 pp26-37
金日成も金正日も金正恩も「朝鮮半島統一後も在韓米軍はいてもよい」と述べたこと 中国支配を恐れてい
-
-
角川文庫『ペリー提督日本遠征記』(Narrative of the Expedition of an American Squadron to the China Seas and Japan)
https://youtu.be/Orb9x7NCz_k https:
-
-
学士会報926号特集 「混迷の中東・欧州をトルコから読み解く」「EUはどこに向かうのか」読後メモ
「混迷の中東」内藤正典 化学兵器の使用はアサド政権の犯行。フセインと違い一切証拠を残さないが、イス
