書評 AIの言語理解について考える」川添愛 学士会報940号P.42
分類がわかりやすい
1 今のAIは人間の言葉を理解している。
理解しているようにみえることを重視する点でチューリングテストと同じ。この理屈を認めない場合には、自分以外のすべての人間の知性も認められないという独我論に陥る
2 今のAIは人間の言葉を理解していない
2-1 AIはいずれ人間の言葉を理解できるようになる
2-1-1「今の技術(機械学習)」の延長線上でAIはいずれ人間の言葉を理解できるようになる可能性がある
A AIの仕組みと人間の言語理解のメカニズムとの近さを考慮する必要はない 基本的には1と同じで、現状のAIのパフォーマンスを十分と考えるか否かの違い
B 近さを考慮する必要がある 人間の言語能力も機械学習に似たメカニズムで実現されていると考える。後天的に与えられた有限のデータから帰納的に学修されるという、いわゆる経験主義の立場
2-1-2 今の後述の延長線上では無理だが、何らかの技術革新があればAIはいずれ、人間の言葉を理解できるようになる
A 機械学習のアプローチでは、いずれAIの制度が頭打ちになると予測し、新しい技術が必要だろうと考える人たち
B 機械学習だけでは人間の言語能力には近づくことはできないと考える。チョムスキーの普遍文法が例。人間の脳に言語能力を獲得するための「先天的な作りこみ」があるとする合理主義
2-2 AIは決して人間の言葉を理解することはできない
A 言葉の理解に霊魂のようなものがかかわっていると思う人は、機械であるaiは永遠に言語は理解できなと考える(ただし機械にも霊魂が宿ると考える場合は別)
B 人間の言語能力が人体の物理的・機械的な側面によって生じると考える人が、2-2のように主張することも不可能ではない。機械の知性も内側からは観察できないから認めないとする1と同じ立場が考えられる。独我論に陥らないためには、他人に知性があるとする判断の前提を、他人が自分と同じ身体を持つことに置くという方法である。同じ体を持たない機械には知性の存在を認めないとすることは可能である。ただし、機械が人間と同じ身体を持つことを不可能と考えるか、またどのような条件が成り立てば機械が人間と同じ身体を持つといえると考えるかによってさらに立場が変わる可能性がある
関連記事
-
-
筒井清忠『戦前のポピュリズム』中公新書
p.108 田中内閣の倒壊とは、天皇・宮中・貴族院と新聞世論が合体した力が政党内閣を倒した。しかし、
-
-
観光立国から経済立国へ Recommendations with Respect to U.S.Policy toward Japan(NSC13/2)
この翻訳テキストは、細谷千博他『日米関係資料集1945~97』(東京大学出版会,1999)<当館
-
-
観光資源創作と『ウェールズの山』
観光政策が注目されている。そのことはありがたいのであるが、マスコミ、コンサルが寄ってたかって財政資金
-
-
『中国人のこころ』小野秀樹
本書を読んで、率直に感じたことは、自動翻訳やAIができる前に、日本型AI、中国型自動翻訳が登場す
-
-
『意識はいつ生まれるのか』(ルチェッロ・マッスィミーニ ジュリオ・トノーニ著花本知子訳)を読んで再び観光を考える際のメモ書き
観光・人流とは人を移動させる力であると考える仮説を立てている立場から、『識はいつ生まれるのか』(ルチ
-
-
ヨーロッパを見る視角 阿部謹也 岩波 1996 日本にキリスト教が普及しなかった理由の解説もある。
キリスト教の信仰では現世の富を以て暮らす死後の世界はあ
-
-
『総選挙はこのようにして始まった』稲田雅洋著 天皇制の下での議会は一部の金持ちや地主が議員になっていたという通説が実証的に覆されている。いわば「勝手連」のような庶民が、志ある有能な人物(国税15円を納める資力のない者)をどのような工夫で議員に押し立てたかを資料に基づいて丹念にドキュメンタリー風に解説
学校で教えられた事と大分違っていた。1890(明治23)年の第一回総選挙で当選して衆議院議員にな
-
-
電力、情報、金融の融合
「ブロックチェーンとエネルギーの将来」阿部力也 公研2019No673 電気の値段は下がって
-
-
ウェストファリア神話
国際観光を論じる際に、文科省からしつこく、「国際」観光とは何かと問われたことを契機に、国際について
-
-
Quora 英語は文字通り発音しない単語が多い理由は、ペストの流行が原因?
Shiro Kawaiさんの名回答 1400年頃までの中英語(Middle English)