『シベリア出兵』広岩近広
知られざるシベリア出兵の謎
1918年、ロシア革命への干渉戦争として行われたシベリア出兵。
実際に起こったのは、極限状態の日本軍兵士によるロシアの村落焼き討ちと、
赤軍パルチザンによる日本の居留民への虐殺だった――
シベリア抑留生存者が出会った〈戦争〉の実態
重複する加害と被害
アマゾンのコメント
今から100年前、日本はシベリアに出兵している。ロシア(出兵時点ではソ連は成立していない)の反革命派を支援するためであり、明らかに内政干渉である。
本書は、そのシベリア出兵で起きたイワノフカ事件、尼港(ニコラエフスク)事件といった日ロの住民虐殺事件、シベリア出兵の概略などに触れながら、“出兵”という名のもとに隠された実態に迫っている。
巻末の「おわりに」に書いてあるように、「戦争は殺人事件」という著者の視点が全編を貫いている。だから、ロシア人が殺されたイワノフカ事件や日本人が殺された尼港事件に加え、ある意味ではシベリア抑留も、戦争が起こした“悲劇”としては同一線上に扱われている。
ただ、シベリア出兵の背景にある「傀儡国家」建国のもくろみ、尼港事件についての日本政府の対応の甘さ、シベリア抑留の背景にある日本の侵略行為、さらには関東軍によるソ連に対する兵士の労務提供に関する「陳情」など、当時の日本の政策に関する問題点を厳しく指摘している。
「シベリア出兵」という名で呼ばれているが、同じように出兵した欧米諸国が撤退するなか、日本のみが7年という長期にわたって出兵(第二次世界大戦でも6年で終わっている)を続けていたことを含め、その実態が「侵略戦争」であったという著者の指摘は充分に納得できる。
救いは、シベリア抑留者だった人々と現在のイワノフカ村の人々との交流だろう。
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