旅資料 安田純平『ルポ 戦場出稼ぎ労働者』集英社新書
p.254「戦火のイラクに滞在し、現地の人々の置かれた状況を考えれば自分の拘束などどういうことでもないと改めて実感した。お客様扱いされる「取材者」としてではなく、職場の同僚としてイラク人と接することで、これまでとは違った彼らの顔を見ることができたのは新鮮だった」
p.230 「軍縮が進みすぎると困る米国の軍事産業としては、兵站部分の民営化は、逆に戦闘部門の規模を維持するための手段でもあった。そしてその規模を維持拡大するための名目としてソ連に代わる新たな脅威が必要だった。せっかく東西対立がなくなったのに新たな戦時体制を組むことを米国民に納得させるには、真珠湾攻撃のようなショックを与える必要があったところへ、9.11事件が発生。「テロ」という定義のない言葉を使うことで世界中に自由に敵を設定し、それに対応するための米国を中心とした世界秩序を作り上げる手段として「テロとの戦い」をぶち上げることに成功した。国際的な定義や共通認識のない「テロ」を組み込んだこの言葉は、国際協調ではなく単独判断で行動する米国の方針のキャッチコピーである。委託を受けた民間企業が最も儲かるのは、金に糸目をつけなくなる戦時においてだ。そして、行うこと自体に意義があるその戦争の相手としておあつらえ向きだったのが、独裁国家イラクだった」
p.232「イラクの混乱の大きな要因として、フセイン崩壊後に急増した失業者に職を提供できなかったことがあげられる。・・・・占領国が自国の民間業者にほぼ独占状態で復興事業を請け負わせたやり方も、イラクの混乱を招いた一因といえるのではないか。
p.246「米国の設定した新たな脅威である「ならず者国家」「悪の枢軸」の一つ、北朝鮮に日本人はおびえるようになった。そのおびえようは、ソ連という大国と接していた時代の比ではなく「冷戦が終わってもやはり米国についてゆくしかない」という認識が植え付けられた。北朝鮮がたびたびミサイルを打つのは「脅威」としての存在意義を理解したうえでのことではないか。日本政府も、わざとなのか本気なのか、この設定に乗り続けてきた」
「テロリスト」ならば周囲も含めて無条件に殺してもいいのが「対テロ戦争」
「テロリスト」とは誰なのかという問題 取材の最重要テーマ
日本の外務省 HPに国際的なテロの定義などないと明記
事実上政府が自由に処刑できるということ
サダムフセイン時代の方がよかったという記事。今は300人のサダムフセインがいる。
単なる民間委託ではなく戦争の民営化 ブッシュ時代に進展。チェイニー副大統領が熱心。政治献金も多額。不透明な契約過程は、大量破壊兵器を持つという偽りの大儀
イラクでは630を超える民間企業が米国国防省等と契約 実際には下請けの零細事業者は数千社に及ぶ 米兵の16万人を超え19万人の民間人 先進国の管理者とアジアアフリカの労働者
イギリス外務大臣デイヴィッド・ミリバンドは、2009年1月15日付ガーディアンに論文を投稿、この中で「“対テロ戦争”なる定義は誤りだった、却って諸勢力を団結させる事に繋がった」と述べた。イギリス政府も2007年からは「テロを煽る事になる」としてこの語を用いないようにしている。
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