『カシュガール』滞在記 マカートニ夫人著 金子民雄訳
とかく甘いムードの漂うシルクロードの世界しか知らない人には、こうした動乱の世界は全く想像を超えるものだった。これはマカートニの活動の知られざる一面と金子氏の解説。アフガニスタンやチベット、新疆ウィグルの問題が明治維新の時代からのことであることが理解できる。
マカートニ夫人 一八九八年、カシュガール英国代表の夫に嫁いで以来十七年間、中央アジアの沙漠と草原の地で現地の人々と交わり、三人の子を育てた夫人の体験記。冒険心と好奇心に富む英国女性ならではの記録。
金子/民雄 1936年、東京生れ。日本大学商学部卒業後、中央アジア史と東南アジア史の研究・現地調査を続ける。哲学博士
シナ新疆省で演じられたロシアと英国の派遣争い、モンゴル、トルコに加え、ドイツ(1次世界大戦)や若干の日本(日清日露戦争)の影響があったことが、カシュガル周辺をめぐって動乱の時代であったことを理解させてくれる。これを金子はカシュガリアー新グレートゲームの開始 1890年 として解説する。グレートゲームとは、1830年代の英露の西トルキスタンの争いでロシアの勝。1890年代の東トルキスタンで開始されたものを新グレートゲームという。キプリングが『キム』の中で紹介しているそうだ。
夫人の滞在記の冒頭、英国からの旅程中、カスピ海沿岸ペトロフスクの印象。「ペトロフスクで、私は生まれて初めて東京というものを体験しました。ともしますもは、人々がロシア風というよりかずっとトルコ風だったからです
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