「ブラックアース~ホロコーストの歴史と警告」ティモシー・スナイダー著池田年穂訳 を読んで
ホロコーストについても、観光学で歴史や伝統は後から作られると説明してきたが、この本を読んでさらにその思いを強くした。別に虐殺を否定するのではなく、文脈の中で理解しないといけないということである。
著書の最後に「訳者あとがき」があり、簡明にまとめてある。
エストニアとデンマークはドイツから命じられたにもかかわらず、極端な差が出たと記述がある。エストニアでは1940年にソ連に占領され、ドイツがやってきたとき99%のユダヤ人は殺害されていた。デンマークは市民権を持つユダヤ人の99%は生き延びたとある。エストニアのイメージが一変する史実である。二年まえ日帰りでタリンを旅行したが、その時知っていればもうすこし見方が変わったかもしれない。
著者のスナイダー氏への質問と回答も紹介され、その中で
・ホロコーストは戦前のドイツの国境線の外ですべて起きているということ、
・犠牲者の97%はドイツ国外の出身のユダヤ人であった
・ユダヤ人の、現実には死の穴の縁で殺害されたものが半数で、実際に収容所の中にあったというわけではない特別なガス殺の設備で殺されている
・殺害に携わったドイツ人の多くはナチスではなかったし、そもそもドイツ人でもなかった
・国家崩壊の地域で起きた特別な種類の政治を考えないとホロコーストは理解できない出来事(政治領域を超えている)
・ホロコーストは理解できるのもであり、理解しなければいけないこと
ということが強調されている。驚きの事実である。
ソ連に占領され、そこへドイツが侵入し、国家が崩壊を重ねた結果がホロコーストなのであろう。
バルト三国、東部ポーランド、ソ連領内(ウクライナがまさにブラックアース)でのユダヤ人が殺害されたのである。
杉原千畝氏がリトアニア勤務であったことも理解ができた。
私は、外人船員に頼り切っていた海運産業行政の経験から、日本社会が外国人を受け入れないことに反対してきたが、
考えてみると日本人こそが特殊な事態になった時、エストニアやポーランドのようになりかねないかもしれないのであると、この本読み思い直した。
原発事故の際に整然としてたと日本人は評価が高いのであるが、関東大震災での朝鮮人殺害を繰り返す恐れが無きにしも非ずと思ってしまった。
特に、韓国人に対する最近の接し方を見ると、日本社会に外国人の集団を受け入れた時、とんでもないことをする日本人が出てきそうな気がしだしたのである。
なお、ホロコーストについて日本の中でも戦後すぐには問題になっておらず、中東戦争あたりから話題になってきたことにつき、ユダヤ人側からの事情として書かれたものがある。黙って死んでいったユダヤ人を当初シオニズムは評価しなかったのであるが、それが変わりだしたのが、第二次中東戦争あたりからであるといことが書かれていた。確か岩波新書であったような気がする。
関連記事
-
-
角川文庫『ペリー提督日本遠征記』(Narrative of the Expedition of an American Squadron to the China Seas and Japan)
https://youtu.be/Orb9x7NCz_k https:
-
-
🌍🎒モンゴル観光調査の準備~社会主義が生み出した民族の英雄~
8月17日から2週間、地球環境基金の仕事でモンゴルの観光、環境調査に参加する。予備知識を得るため参考
-
-
国際収支の理解 インバウンド好調の原因
それでも円高にならないのはなぜか?「売った円が戻ってこなくなった」理由 https://www.
-
-
『旅行契約の実務』 鈴木尉久著2021年 民事法研究会発行
旅行業法の解釈について、弁護士でもある鈴木教授がどのような見解を持っておられるかと本書を図書館で
-
-
『コロナ危機が浮き彫りにした日本の統治機構とその弱点』読書メモ 竹中治堅・手塚洋輔 公研no.695 2021.7
首相の権限は強くない例 安倍首相2020年4月6日にコロナ患者用の病床を5万床にすると発言、しかし
-
-
書評『大韓民国の物語』李榮薫
韓国の歴史において民族という集団意識が生じるのは二十世紀に入った日本支配下の植民地代のことです。
-
-
Quora 韓国の方が言う「日本は一度も真摯に謝罪した事が無い」というのは客観的に見て事実ですか?
https://jp.quora.com/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E3%81%AE%
-
-
園田、石原も認識していた尖閣問題棚上げ論 川島真『21世紀の「中華」』を読んで
気になったところを抜き書きする。 外国人犯罪者の数で中国人の数が多いが、在留率が30%と多い
