ヘンリーSストークス『英国人記者からみた連合国先勝史観の虚妄』2013年祥伝社
2016年10月19,20日に、父親の遺骨を浄土真宗高田派の総本山専修寺(せんじゅじ)に納骨をするため、山代の妹夫婦のところに行き、一晩厄介になり、翌日一緒に車で三重の一身田まで向かった。往復の道中に読む本を港区図書館で借りた。本書は、その時に借りた一冊であり、感想をブログに残しておいたので、手を加えて投稿する。
著者は1938年英国生まれ1961年オックスフォード大学卒の者で、日本人と結婚している。その著書の中に、ファイナンシャルタイムズ東京支局長で赴任してきた際、外務省報道課長が銀座のバーに案内をしてくれて、店の女の子をテイクアウトするように盛んにすすめられたこと、ホテルオークラの部屋に帰ったら、見たこともない女性が待っていたことを記述している(p.80)。オリンピックあたりからこの習慣もなくなったと記述している。買春防止法が制定されたからとあるが、同法制定は昭和31年であるから、少し混乱しているのであろう。
その延長上で、従軍慰安婦問題について、日本だけではないという視点で話を展開している。もちろん日本だけではなく、韓国での経験も紹介してバランスを取り、米軍もいかに兵士の性処理に心を砕いていたかを記述している。この話は、従軍慰安婦に代表される戦争と性の問題は、日本だけの問題ではないということで、韓国に反論することは、英国人であればできるところが面白い。日本軍がインドネシアでオランダ女性を従軍慰安婦にした問題もあり、全体としてこの話を日本人が否定をすると、火に油となってしまうのであろう。
南京大虐殺については、蒋介石国民党の欧米マスコミへの広報戦略が大成功した面を取り上げて、ほぼ完全否定している。日本国粋主義者が涙を流して喜びそうな話である。蒋介石に倣い、ゼレンスキー大統領も今その努力をしている最中である。 さて、戦時においての兵士の行為は、平時の感覚で論じることはできないと思っている。日本軍のほうが規律が良かったのかは、比較のしようがなく、国民党兵士の評判の悪さも、台湾では語り継がれている。そのことは50年前に台湾を旅行して肌で感じた。このことは、東京裁判の公式評価にもつながってしまう問題であり、歴史問題ではなく、政治問題である。父親の手記(『両忘』)にも日本軍の虐殺のことは記述されているから、戦地において虐殺行為が全くなかったわけではないであろう。今だって中東で米軍が誤爆をして死亡者が出ているくらいである。勝者が敗者を裁く点について、勝者の立場から反対してくれるのは、東京裁判否定論者からするとありがたい話であろう。著者の原体験に、英国での米軍兵士のことがこの本に書かれているから、手放しでアメリカを評価していないことは推察できる。東京裁判は天皇責任を否定した点で私などは日本の国粋主義者は足を向けて寝てはいけないと思うのであるが、昭和天皇にシニカルな見方をする一部の人物(具体的には服部時計店の服部一郎氏)との会話を記述し、軍部の言いなりなるのは小学校教師程度の知性であったという同氏の発言を紹介する。幼児教育の重要性がわかっていない点で問題があるある発言であるが、それよりも昭和天皇の評価が低いのは、チャーチルが天皇の戦争責任を主張していたことと関係があるのかもしれない。
ユダヤ人を救った杉浦千畝氏のことに関連して、2万人のユダヤ人難民を旧満州国が受け入れるか否かの判断のさい、ハルピン特務機関長樋口少佐が入国の許可を関東軍参謀長の東条英機に求め了解を得ていることから、東条英機も評価すべきと記述している。ユダヤ人難民救済は、杉浦千畝氏以外にも多くの日本人が救済に寄与しているのであるが、その一方で多くの中国人を巻き込んであることも忘れてはいけないであろう。
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