*

2016年7月29日「ファイナンスの哲学」多摩大学特任教授堀内勉氏の講演を聞いて

公開日: : 最終更新日:2023/05/28 人口、地域、, 出版・講義資料

資本主義の教養学公開講座が国際文化会館で開催、場所が近くなので参加してみた。

1 資本主義研究会の立ち上げ主旨が、1政策論 2経済論 3経済思想 4人間論とあったが、私は「政策」と「政策以外のもの」の違いは「公権力の行使」があるかないかだと思っているので、経済論より先に政策があるのは理解ができなかった。政策などなくても経済は存在すると思っていたからだ。

2「貨幣経済が浸透する前は多くの人が土地に縛られ、移動の自由を持たず」との認識は、農業生産が始まってからの人類のことしか考えていないからであろう。農業が始まる前の長い期間人類は移動し続けていた。そして江戸時代でも定住民以外の民が数多く存在したとも伝えられている。そもそも人類は移動を前提にDNAが形成されているのである。農奴のことを連想するが、農業が始まって人類が土地に縛られたのかはわからないが検証が必要であろう(トルコのチャタルヒユユク、ギョゲクリテペ遺跡)。

「純粋の経済人」のことにも触れているが、法律の世界も人はすべてが平等というフィクションでできている。政治の世界も一人一票で、男女の差、納税額の差はない。あるのは年齢だけであろう。代表者の割合に格差があることは憲法判断にまでなっている。

3 今回参加してためになったことに、「利子」のことがある。キリスト教もユダヤ教もイスラム教も、「同胞」のカネの貸し借りに利子をつけることが禁止されているということであった。逆説的だが、宗教で禁止なければ利子をとることは自然な出来事であったということになる。アリストテレスもポリス共同体を崩壊させる恐れがあると考えていたことを紹介していた。12世紀のキリスト教はこの「同胞」はすべての人間に当てはまるとされていたようだ。
しかし、キリスト教徒ではない者は人間扱いされていなかったと考えなければ理解ができない。人を奴隷に平然とできたのはキリスト教徒ではないからだと理解していた。そのうえで人扱いしない者は利子をとってもいいということも理解しがたいことであり、私の頭の中は混乱している。

私の個人的な見解では、損害賠償の計算において、ホフマン係数というものがあり、将来価値を現在価値に引き戻すための計算がある。法定利息5%を基に、複利計算をする時代に仕事をした。今のようにデフレだと、マイナス金利が考えられるのだが、依然としてホフマン係数はプラス金利であろう。精緻な証拠主義で審理しているにもかかわらず、最後はホフマン係数みたいな蓋然性の低いもので処理をせざるを得ない非合理性を指摘して、倉田卓司判事は、定期金賠償理論を打ち立てた。私もこれに影響を受けて、自賠責保険の定期金賠償を提案したことがある。しかしデフレまでは想定できなかったところが、時代の人間なのであろう。

4 最後に資本主義とは何かという問い。堀内氏のテーマである。
私は問題意識がなかったが、資本主義と資本主義でないもの違いが何かということを頭に置きながら聞いていたが、最後まで分からなった。民主主義はかなりのレベルで普遍的思想として認知されているとかんがえる。従って非民主的という字句が存在するのであろう。北朝鮮も民主主義を標榜している。

これに対して資本主義はどうか。
資本主義が普遍的な何かの法則なのであれば、万有引力の法則みたいに、仮定を置けばすべて正しいことになるが、どうもそうではなさそうである。佐伯氏は普遍的な定義を目指して「人間の欲望のフロンティアを開拓し拡張する自己運動」とされるようである。イギリスの産業革命を中心に考えなくてよい定義であるが、逆に何のために定義するのかわからない。産業革命もあったのかなかったのか議論があると聞いている。フェルナン・ブローテルは「市場経済と資本主義は全く別のシステム」としていることが紹介されていた。

資本主義が思想だとすると、思想なのだから、別の思想があってもよさそうだが、アンチ資本主義的な思想しか聞いたことがなく、よくわからない。
市場というものが存在し、資本、金利というものが存在することまではなんとなくわかるのだが、その先がよくわからないのである。

なお、経済学者の原田泰氏は「封建社会では人々は生まれたときからすべて決められてしまうが、資本主義社会では人々は自ら運命を開拓することができる」と指摘しているようだが、江戸時代も階層間の移動は活発であったようだから(士農工商ではなかった)、封建社会と資本主義社会を二項対立的に説明するには無理があると思う。

関連記事

no image

21世紀を考える会「仮想通貨の現状」岩下直之京都大教授の話を聞く 2018年4月20日

Bitcoinの発掘の仕組み 256ビットの最初の30個は零が続かなければらないという約束。ハッシュ

記事を読む

no image

『知られざるキューバ』渡邉優著 2018年

4年前のキューバ旅行のときにこの本が出版されていれば、また違った認識ができたとの思う。 カリ

記事を読む

no image

世界の運営を米国でなく中露に任せる 2023年6月7日  田中 宇

https://tanakanews.com/230607armenia.htm 5月25日、

記事を読む

no image

『シベリア出兵』広岩近広

知られざるシベリア出兵の謎1918年、ロシア革命への干渉戦争として行われたシベリア出兵。実際に起

記事を読む

no image

『物語 ナイジェリアの歴史』島田周平著 中公新書

アマゾン書評 歴史家トインビー曰く、アフリカはサハラ砂漠南縁を境に、北のアラブ主義

記事を読む

no image

韓国・済州島から中国人観光客が激減。次期大統領選の結果次第では回復の兆しも 2017.04.10

https://hbol.jp/136104 韓国報道によれば、THAAD(高高度防衛ミサイル

記事を読む

『戦後経済史』野口悠紀雄著 説得力あり

ドッジをあやつった大蔵省 シャープ勧告も大蔵省があやつっている。選挙がある民主主義では難しいこと

記事を読む

no image

“Future Direction of Tourism Policy Studies” President of Human Logistics & Tourism Laboratory Teramae Shuichi, PhD

  Future Direction of Tourism Policy Studi

記事を読む

no image

生涯弁護人事件ファイル2 広中惇一郎

第一章 報道が作り出す犯罪 安部英医師薬害エイズ事件 アメリカの人気番組 LAW &

記事を読む

no image

『昭和史』岩波新書青本  恐慌の影響で、朝鮮人(日本国籍がある)の満州移住が増加したが、中国側は日本の手先と見て敵視 奉天の柳条溝で満州事変  この頃からメディアも変わる

26年と30年を比較すると中国(満蒙含む)の輸出入貿易額に占める対日貿易額の占める割合は低下した

記事を読む

2025年11月17日 アメリカ合衆国(国連加盟国5か国目)ワシントン州(19番目の州) ポイントロバーツ

アメリカ合衆国は、アラスカ、ニューヨーク、(DC)、ヴァージニア、イリ

2025年11月17日 カナダ(国連加盟国15か国目)コロンビア州 バンクーバー

米カナダ人流 https://news.yahoo.co.jp/ar

2025.11月17日~27日 地球落穂ひろいの旅 計画作成

蔵前仁一 旅はだれでもでき、特別なことはないという。 落穂ひ

AIとの論争 住むと泊まる

AIさん、質問します。世間では民泊の規制強化が騒がれて

no image
日本の温泉地盛衰記分析 Youtubeリスト

飯坂温泉 最盛期170万 4分の一 https://www.youtu

→もっと見る

PAGE TOP ↑