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QUORA 日本の歴代総理大臣ワースト1は誰ですか?

公開日: : 最終更新日:2023/05/21 出版、講義資料, 歴史認識

日本の歴代総理大臣ワースト1は誰ですか?

近衛文麿でしょう。彼は首相在任中に国運を左右する二つの極めて重大な判断ミスを犯しています。

一つ目は、日中戦争の早期収拾失敗です。この戦争は蒋介石の側から仕掛けてきたもので、あまりにも反撃が上手く行き過ぎて首都南京まで攻め落としてしまったのですが、蒋介石からの講和の打診を蹴ってしまい泥沼化を招きました。また、講和を蹴った事で侵略者が中国から日本に変わったと見做され、挙句の果てにアメリカと戦争を始めてまとめて敗れた事で、満州事変から繋がる一連の戦争と言うストーリーにされてしまいました。

二つ目は、太平洋戦争に至る前段階での対米外交における失策です。当時、フランスを倒したドイツが次にイギリスを攻撃している状況で、イギリスにとどめを刺し得る海軍力を持つ日本に対して、イギリスに配慮したアメリカが大幅に融和的な提案を出してきました。しかし、これを受け入れる決断を出来ないまま時間を空費、独ソ戦が始まった事でイギリスが安全となったと判断したアメリカが態度を硬化させてしまい千載一遇の好機を逃しました。

どちらの事案でも陸海軍や大臣が奇天烈な行動を取って事態を難しくした面(※)はありますが、「戦争を避ける」「戦争を終わらせる」と言う国民の幸福にとって最も大事なポイントで決断を二度もしくじった総理大臣は他にはおりません。

日中戦争では、上海駐留の海軍陸戦隊が蒋介石の攻勢の矢面に立たされた際に、蒋介石が華北の軍閥に命じて行わせた陽動作戦に引っ掛かって増援の師団を華北に送っていた陸軍が「上海は捨てて撤退すれば?」と提案してきたことにブチ切れていた海軍が講和交渉にひたすら反対しました。

対米外交では、日独伊にソ連を加えた四国同盟を構想していた外務大臣の松岡洋祐がヒトラーとスターリンと会談しに訪欧している最中にアメリカとの交渉が進展、帰国した松岡は四国同盟成立どころか三国同盟の形骸化を意味するアメリカの提案内容に拗ねてサボタージュ。当時の内閣の仕組みでは首相が外相の頭越しに外務省を動かせなかったために時間を浪費してしまいました。

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