*

モンゴル観光調査の準備~社会主義が生み出した民族の英雄~

公開日: : 最終更新日:2016/11/25 用語「人流」「観光」「ツーリズム」「ツーリスト」

8月17日から2週間、地球環境基金の仕事でモンゴルの観光、環境調査に参加する。予備知識を得るため参考文献を読んでいるが、チンギス・ハーンは、社会主義以前の20世紀初頭には、モンゴルの庶民達の間では忘れ去られていた存在であったということを知り、驚いた。

ウランバートルの空港チンギスハーン空港は2006年改名されてできたものである。2013年には社会主義時代の建国の英雄の名を冠したスフバートル広場がチンギスハーン広場に改名された。

従来の研究ではモンゴルにおいてナショナリズムの資源としてチンギスが活用されるようになったのは社会主義の放棄と民主化が進む家庭で始まったと考えられていた。しかし、チンギス・ハーンの名前や知識が一般庶民に普及したのは社会主義の時代を通してのことであったということだ。

チンギス・ハーンの名前や血統は、かつて王侯貴族の権威正統化のための資源であった(チンギス統原理)。しかし、庶民の間では民族の英雄だという意識はなかった。七百年前のモンゴル語は現代モンゴル語とかなり異なっている。元朝秘史をモンゴル旧字で出版されても一般庶民は理解できない。

こうした近代化以前の民族意識の欠落はモンゴル特有のことではなく、印刷や出版技術の向上により民族が発生するという「印刷資本主義」(B・アンダーソン)の結果なのである。モンゴルでは近代化や印刷出版技術の普及が社会市議によってもたらされたのである。

1962年チンギス・ハーン生誕八百年祭が途中で中止を余儀なくされた。「チンギスは破壊的な軍事遠征を行った反面、チンギスはモンゴルに対して国家の統一や法律、文字の制定と言った肯定的な利益をもたらした」という歴史学者の主張が、民族主義的であるというソ連の警告を無視したとされたからである。

ソビエト共産党は、モンゴルの民族の英雄の名をかたることを許さなかった。その理由はチンギスが抑圧的な封建社会の立役者であるという社会主義イデオロギーよる批判というよりも、13世紀にロシアを蹂躙したことへの民族的怨恨による。

チンギス・ハーンについても観光資源は後から造られるという私の主張を裏付けられる例が発見され、わが意を得たりと思っている。ここで、日本でも歴史上神話上著名な人物がいつ頃から庶民に知られるようになったのか知りたいと思うようになった。聖徳太子、日本武尊、卑弥呼、坂本竜馬等である。専門家ではないので時間をかけて調べてみたいと思っている。

なお坂本竜馬については、ウィキペディアでは「坂本龍馬は維新後しばらくは注目されることのなかった存在だったが、1883年に高知の『土陽新聞』に坂崎紫瀾が書いた『汗血千里の駒』が掲載され、大評判となった事により一躍その名が知られるようになった」「次に龍馬ブームが起きるのは日露戦争時である。開戦直前の1901年2月6日、皇后・美子の夢枕に龍馬が立ち、「私が海軍軍人を守護いたします」と語り、皇后はこの人物を知らなかったが、宮内大臣田中光顕(土佐勤王党出身で陸援隊幹部だった)が、龍馬の写真を見せたところ、皇后は間違いなくこの人物だと語った。事の真偽のほどは定かではないが、この話が全国紙に掲載されたため、坂本龍馬の評判が全国に広まる事となった。 日本海海戦で大勝したことで、皇后の御意思により京都霊山護国神社に『贈正四位坂本龍馬君忠魂碑』が建立された」とある。

関連記事

no image

『日本軍閥暗闘史』田中隆吉 昭和22年 陸軍大臣と総理大臣の兼務の意味

人事局補任課長 武藤章 貿易省設置を主張 満州事変 ヤール河越境は 神田正種中佐の独断

記事を読む

no image

『海外旅行の誕生』有山輝雄著の記述から見る白人崇拝思想

表記図書を久しぶりに読み直してみた。学術書ではないから、読みやすい。専門家でもないので、観光や旅行

記事を読む

no image

5月7日 ルビコン川

サンマリノの帰りにルビコン川を見る予定にしていた。往きの列車の中から必死に川を探したがわからなかった

記事を読む

no image

Quora 日本は日清戦争、日露戦争では勝利することができたのに、先の大戦 (第二次世界大戦) ではなぜ敗北に至ったのでしょうか。 日清日露と第二次世界大戦を比較対照して答えていただけたら幸いです。?

日本は日清戦争、日露戦争では勝利することができたのに、先の大戦 (第二次世界大戦) ではなぜ敗北

記事を読む

no image

Analysis and Future Considerations on Increasing Chinese Travelers and International Travel & Human Logistics Market ⑥

Ⅴ Competition in the U.S. over the status of the w

記事を読む

no image

伝統論議 蓮池薫『私が見た「韓国歴史ドラマ」の舞台と今』

〇 蓮池氏の著作 「現代にも、脈打つ檀君の思想、古朝鮮の魂』などをよむと、南北共通の教育があること

記事を読む

no image

公研2019年2月号 記事二題 貧富の格差、言葉の発生

●「貧富の格差と世界の行方」津上俊哉 〇トーマスピケティ「21世紀の資本」 世界経済は

記事を読む

no image

アメリカの原爆神話と情報操作 「広島」を歪めたNYタイムズ記者とハーヴァード学長 (朝日選書) とその書評

広島・長崎に投下された原爆について、いまなお多数のアメリカ国民が5つの神話・・・=========

記事を読む

no image

『地方創生のための構造改革』第3章観光政策 論点2「日本における民泊規制緩和に向けた議論」(富川久美子)の記述の抱える問題点

博士論文審査でお世話になった溝尾立教大学観光学部名誉教授から標記の著作物を送付いただいた。NIRAか

記事を読む

no image

明治維新の評価 『経済改革としての明治維新』武田知弘著

明治時代の日本は世界史的に見て非常に稀有な存在である。19世紀後半、日本だけが欧米列強に対抗し

記事を読む

PAGE TOP ↑