*

シャマニズム ~モンゴル、韓国の宗教事情~プラス『易経』

公開日: : 最終更新日:2023/05/29 出版・講義資料

シャーマン的呪術は筮竹による数字と占いのテキストを使った方法にかわった。このことにより特殊能力者でなくても神託が得られる方法に変わった。その易占は「前意識」との会話である。易は神の啓示などではないのである。
伊藤博文が満州で暗殺されたときも易で見てもらっている。焚書坑儒で易経関係の書物が残ったのは実学の書ということであった。

シベリア諸民族の原始的な霊魂崇拝に根ざした世界観は、一般にシャマニズムと呼ばれている。一種の魔術師であるシャマンが重要な役割を演じているからである。ツングース系だけの言葉であったが、一般化した。モンゴル人、ブリヤート人はシャマンをブー(男性)オトガン(女性)と呼ぶが、シャマンの職は起源的には男性だったらしい。

シャマンの重要課題は霊界との連絡をつくりだすこと。家系に受け継がれる病気のようなもの。シャマンが諸霊によって選ばれるという考え方も普遍的。シベリアでは聖動物の役割大きい。ブリヤート人には白鳥。

動物は普通一族の始祖父として登場。従って女性は動物と結婚できると本気で信じられていた(トーテミズム)。シャマンの装束も何か動物を代表するもの 太鼓も用いる
霊界との接触は、シャマンの魂が忘我の状態において肉体から抜け出てあの世に行くか、あるいは諸霊がシャマンに入ってそれに霊感を与えるかである。シベリアの場合たいていは病気。その人間の魂が体から抜け出ると病気になる。その魂を連れ戻すにあたって先に入り込んでいる霊を追い出さなければならない

原始社会にはその価値と意味はすこぶる注目すべきものであったが、シベリアのシャマンは特別の社会階級を形成したこともなければ、その謝礼によって他の抜きんでた経済的地位に進出することもなかった。

日本でシャマンに関心が寄せられたのは、日本語の系統論的所属と日本文化の源流解明の努力からスタート

仏教が支配的なモンゴルでシャーマニズムが残っていたのはフブスグル県ダルハド(人口1万5千)ヘンティ県、ドルノド県のブリヤート(約3万人)と言った地方のマイノリティ。特に社会主義の終焉と同時に活性化したのはブリヤート人の間において

1930年代の大虐殺によって失われたアイデンティティを取り戻す装置としてシャーマニズムを選択
大量の男性が虐殺され、ロシア人、中国人等との混血が多くなるが、差別の対象となった。
混血の人々の苦しみは宗教弾圧を生き延びたシャーマンによって「シャーマンになれ」と解釈された。
混血の者たちは新たにシャーマンになることによって偉大なブリヤート人のルーツをもつ「ブリヤート人」として新たなエスニックなアイデンティティを取り戻した

現在新たにシャーマンとなった者は想像上の社会的地位を得ることで親族や信者から崇敬と畏怖の念を得ている。社会的な力関係を逆転させている。

『シャーマニズムと韓国文化』(学生社1989年)

仏教、儒教の既成宗教が伝来される前の約千年の間の韓国文化の精神的支柱になっていたものは何か。韓国の基礎概念には祖先崇拝がない。日本は親鸞を祭っている本堂が阿弥陀仏を祭っている堂よりも大きい。人神概念、天皇を絶対化することは日本の宗教意識の特色ではないか。

韓国ではシャーマンはムーダンというが、圧倒的に女性が多い。社会的なストレスに関わる病気には効果があるが、生理学的背景のある病気にはあまり効果がない。精神病に関しては伝統社会においては、ほとんどすべての精神病は伝統的な意味で“治って”いたものが、西洋医学の受容によって治らないものになってしまった。そもそも、伝統社会には今日われわれが考えるような慢性的な精神病はなかったのではないか。社会関係を修復したり、その緊張関係や、ストレスを解消させる過程が儀礼過程に中に組み込まれて演出されている。

シャマニズムは儒教の台頭と同時に、仏教とともに弾圧や疎外を受けてきたが、いくら弾圧されても、庶民層、農村においては根強く生き延びてきた。シャマニズムは、朝鮮半島に入り、アルタイ族の一派である古代朝鮮人にも、ウラルアルタイ族の普遍的な振興が受け入れられ、天を最高神として、天に対する信仰を受け入れた。日本の場合、イタコ(恐山)ユタ(沖縄)大昔は巫女「鬼道を事としてよく衆を惑わす」霊能者が卑弥呼である。ツングースはサマンと呼んでいた。これを基にヨーロッパの学者つくった学術上の言葉がシャマンである。

シャマンが神がかりになる現象を一般にトランス現象という。トランスにはエクスタシー(脱魂)とポゼッション(憑依)という異常心理現象 前者はシベリア中央アジアなど北方アジアに分布、後者は朝鮮半島、日本列島、東南アジア、インド等に見られる。

関連記事

書評『大韓民国の物語』李榮薫

韓国の歴史において民族という集団意識が生じるのは二十世紀に入った日本支配下の植民地代のことです。

記事を読む

no image

保護中: 『中世を旅する人びと』 阿部 謹也著を読んで

西洋中世における遍歴職人の「旅」とは、糧を得るための苦行であり、親方の呪縛から解放される喜びでもあっ

記事を読む

no image

動画で考える人流観光学帝国ホテル等に見る「住と宿の相対化」

  https://youtu.be/21llSPlP5eQ https://yo

記事を読む

『眼の誕生』アンドリュー・パーカー 感覚器官の進化はおそらく脳よりも前だった。脳は処理すべき情報をもたらす感覚器より前には存在する必要がなかった

眼の発達に関して新しい役割を獲得する前には、異なった機能を持っていたはず しエダア

記事を読む

『言ってはいけない中国の真実』橘玲2018年 新潮文庫  

 コロナ禍で海外旅行に行けないので、ブログにヴァーチャルを書いている。その一つである中国旅行記を

記事を読む

no image

2022年8月ジャパンナウ観光情報協会原稿 アフターコロナという名の観光論 原稿資料

 ◎ジャパンナウ原稿案 2020年冬から始まった新型感染症は日本の人流・観光業界に

記事を読む

no image

日本の治安と薬物

https://jp.quora.com/ ●アヘン戦争以前(1840年以前) アヘン

記事を読む

『フクシマ戦記 上・下』船橋洋一   菅直人の再評価

書評1 2021年4月10日に日本でレビュー済み国民の誰もがリアルタイムで経験した

記事を読む

no image

国際観光局ができた1930年代の状勢 『戦前日本の「グローバリズム」』

大東亜共栄圏の虚構を指摘 「バダヴィアに派遣された小林一三商相」国内世論の啓発に努める小林は

記事を読む

no image

『鉄道が変えた社寺参詣』初詣は鉄道とともに生まれ育った 平山昇著 交通新聞社

初詣が新しいことは大学の講義でも取り上げておいた。アマゾンの書評が参考になるので載せておく。なお、

記事を読む

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

2025年11月22日地球落穂ひろいの旅 プンタアレナス

旅程作成で、ウシュアイアとプンタアレナスの順序を考えた結果、パスクワか

2025年11月19日~21日 地球落穂ひろいの旅イースター島(ラパヌイ) 

チリへの訪問は2014年に国連加盟国 として訪問済み。イースタ

→もっと見る

PAGE TOP ↑