『ニッポンを蝕む全体主義』適菜収
本書は、安倍元総理殺害の前に出版されているから、その分、財界の下請け、属国化をおねだりした日本、人治主義への転落等の表現にみられるように、故人への配慮がなされていない点で、本音が出ているものとして興味深く読ませてもらった。
本書は、全体主義台頭の歴史をエーリッヒ・フロム、マルティン・ルター、夏目漱石、ニーチェなどを引用しながら前半の四章までで解説した後、残りの第五章、第六章は『維新の会』や橋下徹、安倍晋三といった【エセ保守への批判】を行なっている。筆者は保守主義とは、「主義」とついているものの、正反対に「主義」を否定する態度であり、思想体系、イデオロギーではないとするところが重要である。さらに保守は人間理性を疑うから、「正義」を警戒し、保守主義の本質は反権力であり、純粋な近代ヨーロッパの思想だとする。従て、わが国で保守を自称する頭の悪い人たちのような、排外主義や新自由主義、愛国カルトといったものとはミリとも関係がないと手厳しい。まるで統一教会を予言しているようでもある。巻末の中野剛志の解説では、本書の読者は、容赦のない批判のうちに「人に知られないさみしさも潜んでいる」ことに気が付くであろうと結んでいるが、暗殺事件によりはからずも人に知られることとなってしまった。
関連記事
-
-
2016年7月29日「ファイナンスの哲学」多摩大学特任教授堀内勉氏の講演を聞いて
資本主義の教養学公開講座が国際文化会館で開催、場所が近くなので参加してみた。 1 資本主義研究
-
-
何故日米開戦が行われたか。秋丸機関の報告書への解説 『経済学者たちの日米開戦』
書名は出版社がつけたものであろう。傑作ではある。書名にひかれて読むことになったが、およそ意思決定
-
-
『からのゆりかご』マーガレット・ハンフリーズ 第2次世界大戦後英国の福祉施設から豪州に集団移住させられた子供たちの存在を記述。英国、豪州のもっと恥ずべき秘密
第2次世界大戦後英国の福祉施設から豪州に集団移住させられた子供たちの存在を記述。英国、豪州のもっ
-
-
『デモクラシーの帝国』 藤原帰一2002岩波新書 国際刑事裁判所 米国の不参加
国際刑事裁判所の設立を定めたローマ規程は、設立条約に合意していない諸国にも適用されるところから、アメ
-
-
保護中: 『from 911/USAレポート』第827回 「アベノミクスの功罪と出口シナリオ」冷泉彰彦 これだけ識字率と基礎算術と社会性の訓練を受けた分厚い人口を抱えた大国が、利幅が薄く労働集約型の観光業を主要産業とするという、どう考えても悲劇的な産業構造に追い詰められた、これは7年半にわたって改革に消極であったことのツケにしても、随分と妙な方向になったと思います
結果的に、これだけ識字率と基礎算術と社会性の訓練を受けた分厚い人口を抱えた大国が、利幅が薄く労働
-
-
QUORAにみる歴史認識 伊藤博文公は、当初朝鮮併合に関しては反対だったって話ですが、実際は如何でしょうか?
伊藤博文公は、当初朝鮮併合に関しては反対だったって話ですが、実際は如何でしょうか?
-
-
ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう
https://www.huffingtonpost.jp/michael-moore/5-rea
-
-
渡辺惣樹著『第二次世界大戦 アメリカの敗北』
対独戦争をあくまで回避するべきと主張したチェンバレンら英国保守層 対独戦争は膨大な国力を消費し、アメ
-
-
『弾丸が変える現代の戦い方』二見龍 照井資規 誠文堂新光社 2018年
本書は、今までほとんど語られてこなかった弾丸と弾道に焦点を当てた元陸上自衛隊幹部と軍事ジャーナリ
