消費と観光のナショナリズム 『紀元二千六百年』ケネスルオフ著
今観光ブームでアトキンス氏がもてはやされている。しかし、観光学者なら「紀元二千六百年」を評価すべきであろう。
1930年の国際観光局設立時のことを調べれば、この本に書かれていることは、同じ史実が使わているから理解も早いと思う。
景福宮のことが出ていて、日本政府は、境内の150以上の建築物を破壊したという記述を読み、やはり朝鮮総督府はダイナマイトで破壊されて仕方がなかったという理解をした。横浜市大の紀要に。記憶資産のことを記述した時、移築しておいた方が、観光資源になるというようなことを書いておいた記憶があるが、やはり日本人だからできる発想なのかもしれない。
FACEBOOKで友人申請のあったインテリ女性の投稿欄に、安重根の名前を付けた軍艦があり、テロリストの名前を付けるなど非常識だというコメントが載っていて、日本人もテロリストを歴史的人物として称賛する人たちがいるとコメントしたら、すぐに反論が来た。でも、安重根が暗殺した伊藤博文も、幕末期英国館襲撃の仲間であり、英国からはテロリスト扱いされていたから、今の価値基準で判断できないことが多いのだと思わなければならない。失礼ながら、この人からの友人申請を取り消させていただいた。
スーパードラマのNCIS犯罪捜査をみていると、イスラムのテロリストがよくでてくるが、さすがにアメリカインデアンは出てこない。でも私が子供の頃見ていた白黒テレビでは、ローンレンジャーなど、悪者のアメリカインデアンが出ていて、何も疑問を感じなかったのである。
なお、ルオフのp.198に、戦前日本人が異国情緒を味わうために平壌の焼肉を食べている風景を記述している(満州旅日記)。しかし、韓国焼肉は伝統料理ではなく、朝鮮戦争時に米国が持ち込んだものだという記述を別の資料で読んだことがあり、どうなのか疑問を感じている。
同p.214 1930年代は、国家イデオロギーを促進する道具として観光を利用するようになっていった。日本人は中国人を敵として見下し、ドイツ人観光客はナチス時代にマリエンブルグ城を訪問し、スペイン民族派は共和派を蔑んでいた、
関連記事
-
-
歴史認識と書評『ユダヤ人大虐殺の証人』河出書房新社
ユダヤ人虐殺の証人として映画『ショアー』にも出演したポーランド人カルスキの苦悩を描く衝撃の作品。
-
-
渡辺惣樹『戦争を始めるのは誰か』修正資本主義の真実 メモ
要旨 第一次世界大戦の英国の戦争動機は不純 レイプオブベルギー チャーチルの強硬姿勢 第二次
-
-
『ざっくりとわかる宇宙論』竹内薫
物理学的に宇宙を考察すればするほど、この宇宙がいかに特殊で奇妙なものかが明らかになる。マルチバー
-
-
『音楽好きな脳』レヴィティン 『変化の旋律』エリザベス・タターン
キューバをはじめ駆け足でカリブ海の一部を回ってきて、音楽と観光について改めて認識を深めることができた
-
-
QUORAに見る歴史認識 戦前の財閥ってどれくらいお金持ちだったんでしょうか?具体的に分かるように説明していただけませんか?
そのジニ係数は――あえて国際比較を行うと――大土地所有者と彼ら以外の間に大きな所得格差があることに
-
-
筒井清忠『戦前のポピュリズム』中公新書
p.108 田中内閣の倒壊とは、天皇・宮中・貴族院と新聞世論が合体した力が政党内閣を倒した。しかし、
-
-
書評『我ら見しままに』万延元年遣米使節の旅路 マサオ・ミヨシ著
p.70 何人かの男たちは自分たちの訪れた妓楼に言及している。妓楼がどこよりも問題のおこしやすい場
-
-
『知の逆転』吉成真由美 NHK出版新書
本書はジャレド・ダイアモンド、ノ―ム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、ト
-
-
2023/7/18 【未来予測】地球の課題を解決するのは「人流ビッグデータ」だ ジオテクノロジーズ | NewsPicks Studios
https://newspicks.com/news/8641407/body/ 若い人達も人
-
-
御手洗大輔「示威の自由に関する日中比較と日本人の課題」
『横浜市立大学論叢』第68巻社会科学系列2号 御手洗大輔「示威の自由に関する日中比較と日本人の課題」
- PREV
- 『天皇と日本人』ケネス・ルオフ
- NEXT
- 『シベリア出兵』広岩近広