横山宏章の『反日と反中』(集英社新書2005年)及び『中華民国』(中央公論1997年)を読んで「歴史認識と観光」を考える
歴史認識を巡り日本と中国の大衆が反目しがちになってきたが、私は歴史認識の違いを比較すればするほど、むしろそれが観光資源となるのではないかという問題意識をもっている。特に反日については、横山宏章は、共産党はマルクス主義政党というより反日民族主義政党であり、民衆の圧倒的支持を得ている。反日の革命神話は共産党の宝であるから、簡単に旗を降ろせないと記述する。しかし同時に、横山宏章は、中国では本当に反日教育が徹底的に叩き込まれているのかというとそうでもないと専門家の立場から記述している。日本人がそこに気づけば観光客としての眼も余裕ができるのである。
日本にいると都合の悪いことは忘れてしまい、爆買などという品のない用語まで使用するが、2003年9月18日に珠海買春事件が発生した。日本企業が集団買春を行ったのである。これも爆買であろう。9月18日は満州事変の発生した国恥日であったから大きな反発を招いた。
中国も日本も大衆レベルでは、はねっかえりがいる。マスコミが無視すれば話題にならないのだが、刺激を求めるマスコミは大きく取り上げるから、反日、反中が増幅してしまう。中国では安徽省黄山にある王直の墓碑が破壊される事件が発生した。王直は長崎では鄭成功に次ぐ有名人であり廟堂「明人堂」が残っている。二〇〇一年日中友好のシンボルとしての記念碑の意味合いがあるが、日本でも日中友好記念碑が右翼の手で破壊されたりする。
問題の尖閣諸島については、中国領と主張したのは日本歴史研究者として名高い井上清京大教授であり、文献主義でいえば中国に分がある。膨大な記録が残っているから、日本はぐうの音もでないと記述する。しかし最後に「だが、古いことからいえば、すべての土地は先住民族のもの」と記述。この点が単純なホストゲスト論にならないところが面白い。
日本にきた中国人は生活苦からであったが、日清戦争後新たに来た留学生は知的水準の高い知識人。日本文化に憧れてきたのではなく、学びやすい日本語を通して西欧文化を学びに来た。決して親日派を生み出したわけではない。陳独秀などは、日本から学ぶものがなかったからと日本論を書いていない。1915年の対華21か条要求で決定的な反日感情となった。横山は、中国から見れば西洋の苦境につけ込む火事場泥棒的な日本の道徳的堕落をみると記述する。帝国列強の中国支配に抵抗するナショナリズムが高揚した1919年の五四運動では日本留学組が売国官僚として大衆運動の糾弾の対象となった。中国のナショナリズムを強制力をもって抑えてゆくことは不可能という認識を持っていた日本人は幣原喜重郎等であった。1928年に国民党は全国統一した。次に不平等条約改正宣言を発表。関税自主権の回復1930年日華関税協定による。領事裁判権の撤廃や租界・租借地の回収については、1943年欧米列強は対日参戦の見返りに認めた。
アメリカの貿易額は日本、中国は7対1 日本との直接対決は回避したかった。しかし1937年日中戦争以降は事態が一変。アメリカは対中政策を変更した。戦後処理を巡って蒋介石が米英両国の巨頭と肩を並べるなどそれまでの歴史からすれば想像もできないことであったが、中国の実力というよりもアメリカの世界戦略の賜物であった。しかし国民党の腐敗ぶりが重慶にいたアメリカ外交団、軍人にはっきりと認識されており、蒋介石支援政策の見直しの声が高まっていった。その政策をアメリカが採用していたら中国をソ連側に押しやることもなかっただろうと横山は記述している。
台湾の国民党が注目されている。国共合作の時代もあったが、再び共産党と近づいているから、反中派の日本人から嫌われだした。国民党も共産党も前衛政党である点で共通であるから、大衆政党ではない。江戸城ならぬ北京の無血開城も、共産党と国民党が行っている。政治交渉で国民党が城外に撤去したから、北京の文化財は破壊されなかった。
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