書評『法とフィクション』来栖三郎 東大出版会
観光の定義においても、自由意思を前提とするが、法律、特に刑法では自由意思が大前提。しかし、フィクションとしての自由意志、論理的怪物は印象深い。
書評1 ある程度法解釈に接近した問題意識から始まり、文学や神にまで議論を及ぼしたあと、社会契約を論じるに至る過程で少しずつフィクションの概念を形作っていこうとしていた。ものすごく引用、脚注が長い上に、文学、神といったあまり馴染みのないジャンルにまで話が及ぶのでなかなか読み進めるのには苦労したが、決して風呂敷を広げるだけ広げて門外漢のところにまでむやみやたらと手を出したわけではない印象を受けた。圧倒的な独自性を持つだけに、著者自身によるまとめが叶わなかったことはやはり残念。
書評2 木庭顕先生の評より。「引用のかげに隠すようにそっと自己の判断(もしくはむしろ疑問)を挿入するという著者の極度に謙抑的な表現に幻惑させると、十分に著者の立論の精度と射程を把握しえない怖れるある」。「何重もの意味において、市民社会を構築しようとする伝統に連なる、最も正統的な選択。」
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