書評『法とフィクション』来栖三郎 東大出版会
観光の定義においても、自由意思を前提とするが、法律、特に刑法では自由意思が大前提。しかし、フィクションとしての自由意志、論理的怪物は印象深い。
書評1 ある程度法解釈に接近した問題意識から始まり、文学や神にまで議論を及ぼしたあと、社会契約を論じるに至る過程で少しずつフィクションの概念を形作っていこうとしていた。ものすごく引用、脚注が長い上に、文学、神といったあまり馴染みのないジャンルにまで話が及ぶのでなかなか読み進めるのには苦労したが、決して風呂敷を広げるだけ広げて門外漢のところにまでむやみやたらと手を出したわけではない印象を受けた。圧倒的な独自性を持つだけに、著者自身によるまとめが叶わなかったことはやはり残念。
書評2 木庭顕先生の評より。「引用のかげに隠すようにそっと自己の判断(もしくはむしろ疑問)を挿入するという著者の極度に謙抑的な表現に幻惑させると、十分に著者の立論の精度と射程を把握しえない怖れるある」。「何重もの意味において、市民社会を構築しようとする伝統に連なる、最も正統的な選択。」
関連記事
-
-
観光資源と伝統 『大阪的』井上章一著
今年も期末試験問題の一つに伝統は新しいという事例を提示せよという問題を出す予定。井上章一氏の大阪
-
-
日本人が海外旅行ができず、韓国人が海外旅行ができる理由 『from 911/USAレポート』第747回 「働き方改革を考える」冷泉彰彦 を読んで、
勤労者一人当たり所得では、日本も韓国も同じレベル 時間当たりの所得では、日本は途上国並み これで
-
-
Quora 古代日本語の発音
youtubeで、「百人一首を当時の発音で朗読」という動画を見ました。奈良・飛鳥時代の上代日本語
-
-
GOTOトラベルの政策評価のための参考書 『震災復興 欺瞞の構造』2012年 原田泰 新潮文庫
いずれ、コロナ対策としてのGOTOトラベル等の観光政策の評価が必要になると思い、災害対策等の先例を
-
-
大関真之『「量子」の仕業ですか?』
pp101-102 「仮にこの性質を利用して、脳が人の意識や判断、その他の動作を行っているとしたら、
-
-
人間ってなんなの?:チンパンジーの4年戦争【 進化論 / 科学 / 人 類 】タンザニア
グドール 道具を使うチンパンジーを発見 ジェーン・グドール(Dame Jane Morris Go
-
-
『高度経済成長期の日本経済』武田晴人編 有斐閣 訪日外客数の急増の分析に参考
キーワード 繰延需要の発現(家計ストック水準の回復) 家電モデル(世帯数の増加)自動車(見せびら
-
-
書評『人口の中国史』上田信
中国人口史通史の新書本。入門書でもある。概要〇序章 人口史に何を聴くのかマルサスの人口論著者の「合
-
-
「温度生物学」富永真琴 学士会会報2019年Ⅱ pp52-62
(観光学研究に感性アナライザー等を用いたデータを蓄積した研究が必要と主張しているが、生物学では温
