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『脳の意識 機械の意識』渡辺正峰著 人間は右脳と左脳の2つを持ち,その一方のみでも意識をもつことは確かなので,意識を持っていることが確実である自分自身の一方の脳を機械で作った脳に置き換えて,両脳がある場合と同じように統一された意識が再生されれば,機械は意識を持ちうると結論できる.

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 出版・講義資料, 観光情報 コミュニケーション

Amazon 物質と電気的・化学的反応の集合体にすぎない脳から、なぜ意識は生まれるのか―。多くの哲学者や科学者を悩ませた「意識」という謎。本書は、この不可思議な領域へ、クオリアやニューロンなどの知見を手がかりに迫る。さらには実験成果などを踏まえ、人工意識の可能性に切り込む。現代科学のホットトピックであり続ける意識研究の最前線から、気鋭の脳神経科学者が、人間と機械の関係が変わる未来を描きだす。

書評1

「人間は、脳の左右半球で2つの意識をもち、それらの競合によって統一意志を形成している」「人の意識は、外界を観察・模倣して生成しなおす能力を持つ。
 生成ばかりで比較対象の外界が無い状態が『睡眠時の夢』だとも考え得る」「『意識あるもの』を客観的に観察して、その外見的特徴を再現するだけでは
 そこに意識を創出したことの証明にならない」「主観的現象は、客観性が必須の科学的証明が極めて困難である。したがって、自意識が機械に転化し得ると証明するためには自分の脳を機械に繋げて、それでも自分が自分であることを自ら確認するしかない」「客観的(科学的)観察によっては、人間と物体は、程度の差こそあっても、同様に単なるメカニズムであるにすぎない。メカニズムにすぎない人間に『意識』というものが存在すると言うならその辺の石ころにも、石ころレベルの『意識』があるという考え方もあり得る」

・・・以上、本書を読んで、興味深く感じた部分(意訳)です。もちろん本書は科学技術に関する本なのですが、むしろ、思想・哲学的に強烈な示唆を与える。価値観や世界観まで変え得る刺激的な概念がちりばめられていますがしかし「トンデモ本」とは違います。一方で「そこまで言うなら!」・・・と欲求不満に感じる点もある。筆者は、人間存在を機械化するというラジカルな思考を持っている。
そこまで言うなら、意識の機械的創出を現状規模の人間意識の再現にとどめる必要はないでしょう。なるほど確かに、まずはそれが出来ることが前提なので
話を抑制的にすることは学者の立場として立派で、必要なことかもしれません。しかし、素人の私は無責任な話をしたい。ブレイン・マシン・インターフェイスによって脳と繋がる機械は人間の思考力を凌駕するものを目指して当然だと思います。現状の人間の数倍などというケチなことは言わない。数万倍の容量や思考速度があるなら、繋いだだけで「意識」の主体は、その殆どが機械的頭脳におのずと移行することでしょう。「女性の産道を通過するために、生物としての人間の脳は この大きさで我慢を強いられていたのであって、機械的な頭脳によって拡張された思考こそ はじめて『人間的』と呼ぶにふさわしいレベルなのだ」・・・未来では、それが常識になるかもしれません。さらには、インターフェイスを介して意識を移動するということは脳と機械の間だけの話に留める必要がありません。他人と「言葉以上の」コミュニケーションが出来る可能性を示唆します。眩暈のするような未来像が視える。その「クオリア」を担当するニューロンをバシバシ発火させるような本です

書評2

脳科学者が「意識」に関する研究の概要と展望を一般読者向けに語った書である.一般向けとはいうものの,専門家が書いた場合の常であるが,かなり難しい.著者自身の研究者人生の個人的な話や,実験のためのかなり技術的な話がしばしば登場する.
始めの3章は,意識の座である脳が,どういうふうに外界からの刺激をとらえているのかを,科学的方法に従って今までに明らかにされてきた事実を紹介する.脳は,視覚を通じて外界をそのまま認識するのではなく,まず物の輪郭を線分とかその向きとかでとらえ,それらを次第に組み合わせて立体描像へと再構築していく.脳にある過去の記憶と照らし合わせて,合理的と思われる表徴を作り上げるのである.
第4章からが本書の主たる部分で,意識の本質に迫る.脳科学の予備知識のある読者はここから読み始めてもよいだろう.
トノーニによって提唱された「統合情報理論」では,非常に多くの情報が単に相加されるのではなく,それらが統合されてより高次の情報が構成されるときに意識が生まれると考えた.これに対し,本書の著者は「生成モデル」を支持している.それは,外界からの情報と,脳により処理された高次の情報とを,繰り返し比較してその誤差を小さくしていき,それが最小になったときにはじめて意識にのぼるというものである.
本書の主要なテーマは,機械(ノイマン型コンピュータ)が意識をもち得るかという問題である.意識を持っているかのように振る舞う機械ができても,それが本当に意識を持っていることの証明にはならない.人間は右脳と左脳の2つを持ち,その一方のみでも意識をもつことは確かなので,意識を持っていることが確実である自分自身の一方の脳を機械で作った脳に置き換えて,両脳がある場合と同じように統一された意識が再生されれば,機械は意識を持ちうると結論できる.「自我意識」を機械にコピペできるかどうかが最終目標だ.これが実現できることを著者は夢見ている.

本論に関係ないが,191ページにたとえ話としてガリレオの落体の実験の話が出てくる.ここで,重力と慣性力とが反対方向に働いてキャンセルするから落下速度が物体の重量に無関係であるというような書き方がされているが,これはもちろん間違いだ.慣性力など働かない.慣性質量と重力質量が等しいから同時に落下するのである.引き算ではなく割り算だ.また236ページのユークリッドの互除法についての説明で,つねに「大きいほうを小さいほうで割る」と書かないと不正確である.なお,本書とは直接関係がないが,なぜ「意識」が生まれたかは,進化論的に考えれば納得できるのではないかと思う.カンブリア紀に「目」が生まれて,動物の間の「喰う喰われる」の生存競争が深刻になった.少しでも早く周りの状況を把握してうまく行動することが,生存競争に生き残れる要件だ.非常に多くの情報を速やかに処理し,いち早く適切な行動ができるためには,その一元管理が必須である.それが「意識」なのであろう.巨大恐竜は脚にも脳のようなものがあったといわれるが,そのようなものが意識をもつことはありえない.ノイマン型コンピュータの生みの親であるフォン・ノイマンは,量子力学の数学的基礎を確立したことでも知られる.量子力学の観測問題での「波束の収縮」の非因果性は,観測装置も量子力学に従う原子から構成されているので,説明不能に陥った.そこで彼は最後に実験結果を確認する「抽象自我」により波束の収縮が起こると仮定した.つまり自我は物理法則に従わない何者かであると考えた.自我がノイマン型コンピュータで作れたら,ノイマン先生は自分のしっぽを食う蛇になるかも

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