ジョン・アーリ『モビリィティーズ』吉原直樹・伊藤嘉高訳 作品社
コロナ禍で、自動車の負の側面をとらえ、会うことの重要性を唱えているが、いずれ改訂版を出さざるを得ないだろう。社会学の表面的な観察に基づいて記述するからである。負の側面でとらえられた自動車も、自動運転が標準装備されれば、改訂版が出されることであろう
「いわゆる運転の自由は、自動車という巨大かつ強力なものをコントロールする自由を伴う。つまり、1トンのものが高速で動き…自動車は、人を死に追いやる力を有しており、実際に予測不可能な規則性の下で人を死に追いやっている。」
「この運転する自由には驚くばかりの不平等が付きまとっている。毎日3000人が自動車事故で死んでおり、3万人が負傷している。衝突事故は2020年までに世界の疾病損傷ランキングの第3位になりその犠牲者のほとんどは実際には自動車を所有していない。ここで注目されるのは、衝突事故は偶然に起きているのではなく、自動車システムの特性であるという点である。」
そして、来るべきポスト自動車社会までも見通している。
それは
地球温暖化の進行、石油資源の枯渇、交通政策の変化、新たな燃料システム、カーシェアリングの普及、自動車の脱私物化、通信との融合などの動きから、おぼろげながらも、多元的で密度の濃い移動形態となるだろうとし、
「ちょうどインターネットと携帯電話が爆発的に普及したように、ポスト自動車への転換も予期せぬ形で現れるだろう」と予測している。
そしてまた、著者は「会うこと」の重要性を説いている。
「本章の議論に欠かせないのが、社会学における「会うこと」の地位を復権させることであり、とりわけ会うことで社会的ネットワークがどのように形成されるのかを見ることである。」
ここでは、対面で話すことの効果が説明され、現代の組織や集団の中では決定的に重要だと説く
関連記事
-
-
保護中: 『植物は未来を知っている』ステファノ・マンクーゾ 、動物が必要な栄養を見つけるために「移動」することを選択。他方、植物は動かないことを選び、生存に必要なエネルギーを太陽から手に入れるこにしました。それでは、動かない植物のその適応力を少しピックアップ
『植物は<未来>を知っている――9つの能力から芽生えるテクノロジー革命』(ステファノ・マンクーゾ著、
-
-
『コロナ危機が浮き彫りにした日本の統治機構とその弱点』読書メモ 竹中治堅・手塚洋輔 公研no.695 2021.7
首相の権限は強くない例 安倍首相2020年4月6日にコロナ患者用の病床を5万床にすると発言、しかし
-
-
「温度生物学」富永真琴 学士会会報2019年Ⅱ pp52-62
(観光学研究に感性アナライザー等を用いたデータを蓄積した研究が必要と主張しているが、生物学では温
-
-
観光資源論と 観光学全集「観光行動論」を考える ベニスのクルーズ船反対運動への感想と併せて
現在「観光資源論の再構築と観光学研究の将来」と題した小論文をまとめているが、観光資源(正確には観光対
-
-
『江戸の旅と出版文化』原淳一郎
中世宗教史と異なり近世宗教史の大きな特徴に寺社参詣の大衆化がある。新城常三の「社寺参詣の社会経済史
-
-
『シベリア出兵』広岩近広
知られざるシベリア出兵の謎1918年、ロシア革命への干渉戦争として行われたシベリア出兵。実際に起
-
-
1932年12月16日『白木屋の大火始末記』
関東大震災の始末が終了したころ 地下三階地上七階建てデパートの4階から出火 クリスマスツリーの豆電
-
-
Transatlantic Sins お爺さんは奴隷商人だった ナイジェリア人小説家の話
https://www.bbc.co.uk/programmes/w3cswg9n BBCの
-
-
千相哲氏の「聞蔵Ⅱ」を活用した論文
「「観光」概念の変容と現代的解釈」という論文を偶然発見した。 http://repository.
-
-
『高度経済成長期の日本経済』武田晴人編 有斐閣 訪日外客数の急増の分析に参考
キーワード 繰延需要の発現(家計ストック水準の回復) 家電モデル(世帯数の増加)自動車(見せびら
- PREV
- コロナとハワイ
- NEXT
- 東日本震災時に問題視された略奪の限りを尽くしていた火事場泥棒
