幸田露伴『一国の首都』明治32年 都議会議員和田宗春氏の現代語訳と岩波文庫の原書で読む。港区図書館にある。
幸田露伴は私の世代の受験生ならだれでも知っている文学者。でも理系の人でもあり、首都論を展開している。都府の内外の境界線は仮にであっても確実に設定することは必要と主張。その理由は、東京の空間の高度利用にあり、そのために市域の明確化が必要であると唱える。「平屋建てを増加するは、都の実質の富を増加せずしてその面積を増加するなり。三階建、四階建に至ってはいよいよ都の実質の富を増加するなり」と明示する。「交通機関と汚水、雨対策」の中で、今日の自動車重量税の発想もされている。
『水の東京』も記述している。現在私が住まいしている赤羽橋を流れる古川は、露伴の時代は赤羽川といったようだ。渋谷橋の下流を言うのだが、水上交通が役立つのは、ガス会社と芝新浜町との間の河口流れ落ちるところからさかのぼって中の橋までで、そこから一橋まではかろうじて小舟が通るだけである
30代中頃神戸に勤務していた時代、官房長で退職されたばかりの先輩が神戸海運局長を訪ねてこられ、食事をした際、運輸省の行政の話になった。当時は都市鉄道整備が最重要課題であり、盛んに郊外に鉄道建設が進められていた。そのことについて、先輩は、東京もパリのように都心を高度利用すれば、無理やり通勤地獄にならないのだがと話されていた。確か山手線の中でも、平均すれば2階建て程度の時代であった。今再び都心開発が進んでる。その一方で、世田谷、杉並ですら空き家対策が問題化している。武蔵野の緑は失われたが、空き家だけが残ってしまっては仕方がない。パリのように郊外は田園地帯というわけにはいかなくなっている。しかし、緑をつぶしたおかげで、高度経済成長が可能となったのは間違いがない。中国やインド、アフリカが同じことをしてたとしても文句をつけにくいのは間違いがない。
関連記事
-
-
『貧困と自己責任の中世日本史』木下光夫著 なぜ、かほどまでに生活困窮者の公的救済に冷たい社会となり、異常なまでに「自己責任」を追及する社会となってしまったのか。それを、近世日本の村社会を基点として、歴史的に考察
江戸時代の農村は本当に貧しかったのか 奈良田原村に残る片岡家文書、その中に近世農村
-
-
『戦後経済史は嘘ばかり』高橋洋一
城山三郎の著作「官僚たちの夏」に代表される高度経済成長期の通産省に代表される霞が関の役割の神
-
-
2016年7月29日「ファイナンスの哲学」多摩大学特任教授堀内勉氏の講演を聞いて
資本主義の教養学公開講座が国際文化会館で開催、場所が近くなので参加してみた。 1 資本主義研究
-
-
北陸新幹線金沢暫定開業雑感
人口減少が予測される石川県では、北陸新幹線金沢暫定開業により観光客が急増しブームに沸いているが、こ
-
-
QUORAに見る観光資源 日本から出たことがないのでわからないのですが、日本は本当に治安が良いのですか?松本 貴典 (Takanori Matsumoto),
日本から出たことがないのでわからないのですが、日本は本当に治安が良いのですか?松本 貴典 (Tak
-
-
ゆっくり解説】突然変異5選:新遺伝子はどうやって生まれるのか?【 進化 / 遺伝 子 / 科学 】
https://youtu.be/bGthe_Aw1gQ ミトコンドリアと真核生物の起源:生物進化
-
-
『音楽好きな脳』レヴィティン 『変化の旋律』エリザベス・タターン
キューバをはじめ駆け足でカリブ海の一部を回ってきて、音楽と観光について改めて認識を深めることができた
-
-
戦略論体系⑩石原莞爾(facebook2021年5月23日投稿文)「極限まで行くと、戦争はなくなるが、闘争心はなくならないので、国家単位の対立がなくなるという。」
石原莞爾の『世界最終戦論』が含まれている『戦略論体系⑩石原莞爾』を港区図書館で借りて読んだ。同書の存