*

幸田露伴『一国の首都』明治32年 都議会議員和田宗春氏の現代語訳と岩波文庫の原書で読む。港区図書館にある。 

公開日: : 最終更新日:2023/05/21 人口、地域、, 出版・講義資料

幸田露伴は私の世代の受験生ならだれでも知っている文学者。でも理系の人でもあり、首都論を展開している。都府の内外の境界線は仮にであっても確実に設定することは必要と主張。その理由は、東京の空間の高度利用にあり、そのために市域の明確化が必要であると唱える。「平屋建てを増加するは、都の実質の富を増加せずしてその面積を増加するなり。三階建、四階建に至ってはいよいよ都の実質の富を増加するなり」と明示する。「交通機関と汚水、雨対策」の中で、今日の自動車重量税の発想もされている。

『水の東京』も記述している。現在私が住まいしている赤羽橋を流れる古川は、露伴の時代は赤羽川といったようだ。渋谷橋の下流を言うのだが、水上交通が役立つのは、ガス会社と芝新浜町との間の河口流れ落ちるところからさかのぼって中の橋までで、そこから一橋まではかろうじて小舟が通るだけである

30代中頃神戸に勤務していた時代、官房長で退職されたばかりの先輩が神戸海運局長を訪ねてこられ、食事をした際、運輸省の行政の話になった。当時は都市鉄道整備が最重要課題であり、盛んに郊外に鉄道建設が進められていた。そのことについて、先輩は、東京もパリのように都心を高度利用すれば、無理やり通勤地獄にならないのだがと話されていた。確か山手線の中でも、平均すれば2階建て程度の時代であった。今再び都心開発が進んでる。その一方で、世田谷、杉並ですら空き家対策が問題化している。武蔵野の緑は失われたが、空き家だけが残ってしまっては仕方がない。パリのように郊外は田園地帯というわけにはいかなくなっている。しかし、緑をつぶしたおかげで、高度経済成長が可能となったのは間違いがない。中国やインド、アフリカが同じことをしてたとしても文句をつけにくいのは間違いがない。

 

関連記事

フェリックス・マーティン著「21世紀の貨幣論」をよんで 

観光を理解する上では「脳」「満足」「価値」「マネー」が不可欠であるが、なかなか理解するには骨が折れる

記事を読む

no image

『脳の誕生』大隅典子 Amazon書評

http:// www.pnas.org/content/supp1/2004/05/13/040

記事を読む

『大本営発表』辻田真佐憲

記事を読む

no image

人間ってなんなの?:チンパンジーの4年戦争【 進化論 / 科学 / 人 類 】タンザニア

グドール 道具を使うチンパンジーを発見 ジェーン・グドール(Dame Jane Morris Go

記事を読む

no image

1932年12月16日『白木屋の大火始末記』

関東大震災の始末が終了したころ 地下三階地上七階建てデパートの4階から出火 クリスマスツリーの豆電

記事を読む

no image

『永続敗戦論  戦後日本の核心』、『日米戦争を起こしたのは誰か ルーズベルトの罪状・フーバー大統領回顧録を論ず』『英国が火をつけた「欧米の春」』の三題を読んで

「歴史認識」は観光案内をするガイドブックの役割を持つところから、最近研究を始めている。横浜市立大学論

記事を読む

no image

生涯弁護人事件ファイル2 広中惇一郎

第一章 報道が作り出す犯罪 安部英医師薬害エイズ事件 アメリカの人気番組 LAW &

記事を読む

『サイボーグ化する動物たち 生命の操作は人類に何をもたらすか』作者:エミリー・アンテス 翻訳:西田美緒子 白揚社

DNAの塩基配列が読破されても、その配列の持つ意味が分からなければ解読したことにはならない。本書の冒

記事を読む

『からのゆりかご』マーガレット・ハンフリーズ 第2次世界大戦後英国の福祉施設から豪州に集団移住させられた子供たちの存在を記述。英国、豪州のもっと恥ずべき秘密

第2次世界大戦後英国の福祉施設から豪州に集団移住させられた子供たちの存在を記述。英国、豪州のもっ

記事を読む

希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書) 新書 – 2010/8/17

ピースボートというクルーズ旅行商品があり、かつて週刊誌にその悪評が掲載されたことがある。消費者保護を

記事を読む

PAGE TOP ↑