*

井伏鱒二著『駅前旅館』

新潮文庫の『駅前旅館』を読み、映画をDVDで見た。
世相はDVDの方がわかりやすいが、字句「観光」は、やはり文豪の意識が参考になる。
「宿泊料や部屋割りなどのことは、予め旅行社とか観光屋とかが仲に立って決めておりま す」「一般に観光屋なんていうものは、多くは大阪に本社を持っていて、団体客を引き受けると、添乗員をつけて道中の世話をさせる組織になっております」と昭和32年ころは観光は観光屋に代表されている。 従って、「宿屋の番頭なんというものは、いくら仕事に熱を入れたって職業録にのらないし、社会保障もなく、・・・ただ頼むは主人と私の関係だけだ」「番頭稼業していては外聞が悪い 表彰などしてもらいたくない、まだ番頭をしていたのかといわれる」との記述にみられるように、観光産業の地位がうかがわれる。温泉地育ちの私には、旅館の女中さんのことが幼心に多少記憶があり「昔の旅館の女中は食生活、給料の点におきまして、風呂番、中番などとともに奴隷扱い 休暇は年に2日、盆と正月だけ、これ以外には外出もかなわず、夜の十時以降は絶対に門外不出でした」という表現はしっくりくる。現在の観光研究者も理解しておかないといけない過去である。

関連記事

有名なピカソの贋作現象 椿井文書(日本最大級偽文書)青木栄一『鉄道忌避伝説の謎』ピルトダウン原人

下記写真は、英国イースト・サセックス州アックフィールド(Uckfield)近郊のピルトダウンにある

記事を読む

ウクライナ戦争の戦況集収から考える「情報」の本質 2022年7月 公研 嫌露、嫌米、アンチ公権力等の先入観が情報収集機会を減少

  2022年7月の「公研」で、クライナ戦争の戦況集収から考える「情報」

記事を読む

平野聡『「反日」中国の文明史 (ちくま新書) 』を読んで

平野聡『「反日」中国の文明史 (ちくま新書) 』に関するAmazonの紹介文は、「中国は雄大なロ

記事を読む

no image

人間ってなんなの?:チンパンジーの4年戦争【 進化論 / 科学 / 人 類 】タンザニア

グドール 道具を使うチンパンジーを発見 ジェーン・グドール(Dame Jane Morris Go

記事を読む

no image

「正座」の始まりは百年前 千利休は、あぐらをかいて茶を点てていたのである

ホテルと旅館を法律上区分する日本の宿泊法制度は珍しい。 その違いを考えると、和式と洋式の違いは「靴

記事を読む

『ヒトはこうして増えてきた』大塚龍太郎 新潮社

p.85 定住と農耕 1万2千年前 500万人 祭祀に農耕が始まった西アジアの発掘調査で明らかにさ

記事を読む

no image

靴を脱ぐということ

『教科書には載っていない戦前の日本』P.173にでていた。 松坂屋は関東大震災の復興を機に、

記事を読む

no image

書評『日本人になった祖先たち』篠田謙一 NHK出版 公研2020.1「人類学が迫る日本人の起源」

分子人類学的アプローチ SPN(一塩基多型)というDNAの変異を検出する技術が21

記事を読む

「ブラックアース~ホロコーストの歴史と警告」ティモシー・スナイダー著池田年穂訳 を読んで

ホロコーストについても、観光学で歴史や伝統は後から作られると説明してきたが、この本を読んでさらにその

記事を読む

no image

撤退太郎と立上花子

スイッチエンターテイメント(本社・東京都新宿区/代表取締役・川田雄大)は、同社が運営する民泊物件向け

記事を読む

no image
ロシア旅行の前の、携帯wifi準備

https://tanakanews.com/251206rutrav

no image
ロシア旅行 田中宇

https://tanakanews.com/251205crimea

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

→もっと見る

PAGE TOP ↑