*

井伏鱒二著『駅前旅館』

新潮文庫の『駅前旅館』を読み、映画をDVDで見た。
世相はDVDの方がわかりやすいが、字句「観光」は、やはり文豪の意識が参考になる。
「宿泊料や部屋割りなどのことは、予め旅行社とか観光屋とかが仲に立って決めておりま す」「一般に観光屋なんていうものは、多くは大阪に本社を持っていて、団体客を引き受けると、添乗員をつけて道中の世話をさせる組織になっております」と昭和32年ころは観光は観光屋に代表されている。 従って、「宿屋の番頭なんというものは、いくら仕事に熱を入れたって職業録にのらないし、社会保障もなく、・・・ただ頼むは主人と私の関係だけだ」「番頭稼業していては外聞が悪い 表彰などしてもらいたくない、まだ番頭をしていたのかといわれる」との記述にみられるように、観光産業の地位がうかがわれる。温泉地育ちの私には、旅館の女中さんのことが幼心に多少記憶があり「昔の旅館の女中は食生活、給料の点におきまして、風呂番、中番などとともに奴隷扱い 休暇は年に2日、盆と正月だけ、これ以外には外出もかなわず、夜の十時以降は絶対に門外不出でした」という表現はしっくりくる。現在の観光研究者も理解しておかないといけない過去である。

関連記事

no image

『2050年のメディア』下山進

日本の新聞がこの10年で1000万部の部数を失っていることを知り、2018年4月より、慶應義塾大学

記事を読む

no image

動画で考える人流観光学 【コンテナホテル宿泊記】災害時は移動して大活躍

こうなると、自動運転機能が付随すると、社会は大きく変わるかもしれない。まさに、住と宿の相対化である。

記事を読む

『近世社寺参詣の研究』原淳一郎

facebook投稿文章 「原淳一郎教授の博士論文「近世社寺参詣の研究」を港区図書館で借りて

記事を読む

no image

南米「棄民」政策の実像 遠藤十亜希著 岩波現代全書 最も南米移民を排出したのが最貧困地帯たる東北ではなく北部九州~山陽ラインだったのは何故か?

19世紀末から20世紀半ばまで、約31万人の日本人が、新天地を求めて未知の地ラテンアメリカに移住

記事を読む

no image

動画で考える人流観光学 マクスウェルの悪魔

【物理学150年の謎を日本人教授が解明】マクスウェルの悪魔が現れた!/東京大学 沙川貴大教授/教え子

記事を読む

no image

国際観光局ができた1930年代の状勢 『戦前日本の「グローバリズム」』

大東亜共栄圏の虚構を指摘 「バダヴィアに派遣された小林一三商相」国内世論の啓発に努める小林は

記事を読む

『音楽好きな脳』レヴィティン 『変化の旋律』エリザベス・タターン

キューバをはじめ駆け足でカリブ海の一部を回ってきて、音楽と観光について改めて認識を深めることができた

記事を読む

『「食糧危機」をあおってはいけない』2009年 川島博之著 文芸春秋社 穀物価格の高騰は金融現象

コロナで飲食店が苦境に陥っているが、平時には、財政措置を引き出すためもあり、時折食糧危機論が繰り返

記事を読む

『サイボーグ化する動物たち 生命の操作は人類に何をもたらすか』作者:エミリー・アンテス 翻訳:西田美緒子 白揚社

DNAの塩基配列が読破されても、その配列の持つ意味が分からなければ解読したことにはならない。本書の冒

記事を読む

「ブラックアース~ホロコーストの歴史と警告」ティモシー・スナイダー著池田年穂訳 を読んで

ホロコーストについても、観光学で歴史や伝統は後から作られると説明してきたが、この本を読んでさらにその

記事を読む

2025年11月22日地球落穂ひろいの旅 プンタアレナス

旅程作成で、ウシュアイアとプンタアレナスの順序を考えた結果、パスクワか

2025年11月19日~21日 地球落穂ひろいの旅イースター島(ラパヌイ) 

チリへの訪問は2014年に国連加盟国 として訪問済み。イースタ

2025年11月17日 アメリカ合衆国(国連加盟国5か国目)ワシントン州(19番目の州) ポイントロバーツ

アメリカ合衆国は、アラスカ、ニューヨーク、(DC)、ヴァージニア、イリ

2025年11月17日 カナダ(国連加盟国15か国目)コロンビア州 バンクーバー

米カナダ人流 https://news.yahoo.co.jp/ar

2025.11月17日~27日 地球落穂ひろいの旅 計画作成

蔵前仁一 旅はだれでもでき、特別なことはないという。 落穂ひ

→もっと見る

PAGE TOP ↑