*

井伏鱒二著『駅前旅館』

新潮文庫の『駅前旅館』を読み、映画をDVDで見た。
世相はDVDの方がわかりやすいが、字句「観光」は、やはり文豪の意識が参考になる。
「宿泊料や部屋割りなどのことは、予め旅行社とか観光屋とかが仲に立って決めておりま す」「一般に観光屋なんていうものは、多くは大阪に本社を持っていて、団体客を引き受けると、添乗員をつけて道中の世話をさせる組織になっております」と昭和32年ころは観光は観光屋に代表されている。 従って、「宿屋の番頭なんというものは、いくら仕事に熱を入れたって職業録にのらないし、社会保障もなく、・・・ただ頼むは主人と私の関係だけだ」「番頭稼業していては外聞が悪い 表彰などしてもらいたくない、まだ番頭をしていたのかといわれる」との記述にみられるように、観光産業の地位がうかがわれる。温泉地育ちの私には、旅館の女中さんのことが幼心に多少記憶があり「昔の旅館の女中は食生活、給料の点におきまして、風呂番、中番などとともに奴隷扱い 休暇は年に2日、盆と正月だけ、これ以外には外出もかなわず、夜の十時以降は絶対に門外不出でした」という表現はしっくりくる。現在の観光研究者も理解しておかないといけない過去である。

関連記事

no image

歴史は繰り返す遊興飲食・宿泊税とDMO論議 

デスティネーションを含んだDMOなる言葉が独り歩きしている。私がカタカナ用語のデスティネーションを

記事を読む

no image

聴覚 十二音技法

https://youtu.be/HeXEzMWi2EI 時代は無調の音楽に対する準備

記事を読む

no image

『国債の歴史』(富田俊基著2006年東洋経済新報社)を読んで

標記図書を読み、あとがきが要領よくまとめられていた。財政に素人の私には、非常に参考になる。 要約す

記事を読む

no image

旅資料 安田純平『ルポ 戦場出稼ぎ労働者』集英社新書

p.254「戦火のイラクに滞在し、現地の人々の置かれた状況を考えれば自分の拘束などどういうことでも

記事を読む

『江戸のパスポート』柴田純著 吉川弘文館

コロナで、宿泊業者が宿泊引き受け義務の緩和に関する政治的要望を行い、与党も法改正を行うことを検討

記事を読む

脳科学 ファントムペイン

四肢の切断した部分に痛みを感じる、いわゆる幻肢痛(ファントムペイン)は、脳から送った信号に失った

記事を読む

no image

撤退太郎と立上花子

スイッチエンターテイメント(本社・東京都新宿区/代表取締役・川田雄大)は、同社が運営する民泊物件向け

記事を読む

no image

ジャパンナウ観光情報協会機関紙138号原稿『コロナ禍に一人負けの人流観光ビジネス』

 コロナ禍でも、世界経済はそれほど落ち込んでいないようだ。PAYPALによると、世界のオンライン

記事を読む

no image

「脳コンピューター・インターフェイスの実用化には何が必要か」要点

https://www.technologyreview.jp/s/62158/for-brain-

記事を読む

no image

書評『ペストの記憶』デフォー著

 ロビンソン・クルーソーの作者ダニエル・デフォーは、17世紀のペストの流行に関し、ロンドン市長及び

記事を読む

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

2025年11月22日地球落穂ひろいの旅 プンタアレナス

旅程作成で、ウシュアイアとプンタアレナスの順序を考えた結果、パスクワか

2025年11月19日~21日 地球落穂ひろいの旅イースター島(ラパヌイ) 

チリへの訪問は2014年に国連加盟国 として訪問済み。イースタ

→もっと見る

PAGE TOP ↑