*

『幻影の明治』渡辺京二著 日本の兵士が戦場に屍をさらしたのは、国民の自覚よりも(農村)共同体への忠誠、村社会との認識で追い打ちをかけている。惣村意識である。水争いでの隣村との合戦 

公開日: : 最終更新日:2023/05/30 歴史認識, 軍隊、戦争

「第二章 旅順の城は落ちずとも-『坂の上の雲』と日露戦争」


著者は「司馬史観」に手厳しい。昭和、特にその軍隊を否定する「司馬史観」に反発する見方が普通にあるが、著者は、それとは別に司馬遼太郎の歴史認識の誤りや先入観を抉り出す。言われればその通りというしかない。

明治日本のゼロから始まった近代化が成功したのは、世界史上の奇跡と司馬氏は言いたいという点には、昭和の戦争世代である司馬氏の心理的な傷痕が隠れているとする。ロシアに勝てたのは、近代化の達成においてロシアをしのいでいたからだとしたいのである。

すでに「ロシアに勝った」問点においても歴史認識は変化しているが、江戸時代の評価においてさらに変化が激しい

渡辺氏は 幕末の日本人大衆は、馬関戦争では外国軍隊の砲弾運びに協力して(高賃金で雇われたのであろう)、それが売国の所業だとは全く考えていなかったという例を出す

横浜市立大学の昨年の期末試験でも会った回答だが、戊辰戦争で会津藩が官軍に攻められたとき、会津の百姓は官軍に雇われて平気の平左だった。

このことは、中国の民衆の行動にも表れるが、日本の後世の歴史は民衆の態度に否定的。植民地の民衆も同じであったろう。為政者が英国人であろうが土地の支配階級であろうが同じなのだ。

つまり近代国家なる概念が後で作られたものであろうからである。

私もすとんと胸に落ちのは、日露戦争開戦直前、日本の指導者は官民をとわず、戦争を望んではいなかった。山本権平は朝鮮など放棄していいと言っていた。それが馬関戦争で弾運びをしていた民衆が、ついに祖国のために一命を賭する国民に変化していた。それに対して清国の留学生(武田泰淳『秋風、秋雨人を愁殺す』の主人公、1907年紹興で蜂起計画し処刑された女性革命家)が兵士が奴隷のように蔑視されている清国の現状を、中国人が教育を受けていない損害との認識を示している

しかし、日本の兵士が戦場に屍をさらしたのは、国民の自覚よりも(農村)共同体への忠誠、村社会との認識で追い打ちをかけている。惣村意識である。水争いでの隣村との合戦 来世があるイスラムのジハードは違うのであろう。

P.114 最近の研究では、征韓論の言い出しっぺは木戸孝允であり、その実行者は江華島事件の挑発者大久保利通であり、西郷隆盛に征韓の意図があったことが疑われている

巻末の新保祐司氏との対談の中で、『逝きし世の面影』が評判になっても、「日本いいよ、日本いいよ」という本だと誤解されてしまったとあったが、さだめし小生も著者の真意が十分理解できなかった読者の一人だろう。そして「読み巧者」とはとてもいえない。

関連記事

no image

ジャパンナウ観光情報協会7月号 ミャンマー散骨旅行記(1)

九十六歳の父親がイラワジ川散骨を希望して旅立った。子供の頃モールメンライターやシャン族の話を聞かされ

記事を読む

no image

『満州事変はなぜ起きたのか』筒井清忠著 中央公論新社 2015年

日米戦争=太平洋戦争はかなりの程度、日中戦争に起因し、その日中戦争はかなりの程度、満州事変に起因する

記事を読む

no image

ビキニ島における核実験

アメリカのタブーな黒歴史は何でしょうか? ビキニ島における核実験です。第二次世界大戦の時日本

記事を読む

アメリカの原爆神話と情報操作 「広島」を歪めたNYタイムズ記者とハーヴァード学長 (朝日選書) とその書評

広島・長崎に投下された原爆について、いまなお多数のアメリカ国民が5つの神話・・・========

記事を読む

『貧困と自己責任の中世日本史』木下光夫著 なぜ、かほどまでに生活困窮者の公的救済に冷たい社会となり、異常なまでに「自己責任」を追及する社会となってしまったのか。それを、近世日本の村社会を基点として、歴史的に考察

江戸時代の農村は本当に貧しかったのか 奈良田原村に残る片岡家文書、その中に近世農村

記事を読む

no image

『新・韓国現代史』 文京洙著 岩波書店 を読んで、日韓観光を考える。

東アジアの伝統的秩序は、中国中心の華夷理念のもとに、東アジアの近隣諸国が朝貢・冊封の関係において秩序

記事を読む

no image

ゲルニカ爆撃事件の評価(死者数の大幅減少)

歴史には真実がある。ただし人間にできることは、知りえた事実関係の解釈に過ぎない。もっともこれも人間

記事を読む

『からのゆりかご』マーガレット・ハンフリーズ 第2次世界大戦後英国の福祉施設から豪州に集団移住させられた子供たちの存在を記述。英国、豪州のもっと恥ずべき秘密

第2次世界大戦後英国の福祉施設から豪州に集団移住させられた子供たちの存在を記述。英国、豪州のもっ

記事を読む

書評『我ら見しままに』万延元年遣米使節の旅路 マサオ・ミヨシ著

p.70 何人かの男たちは自分たちの訪れた妓楼に言及している。妓楼がどこよりも問題のおこしやすい場

記事を読む

no image

Quoraに見る歴史認識 第二次世界大戦以前の世界では欧米諸国による植民地がたくさんあったが、戦後そのほとんどが独立した。そのことを欧米の学校ではどのように教えているのでしょうか? 

あたり前ですが、戦勝国と敗戦国で、扱いは異なります。その上で、指導者が自殺したドイツと、無条件降伏

記事を読む

AI研究者と俳人 人はなぜ俳句を詠むのか amazon書評

AIが俳句を「終わらせる」可能性は、これまでの「人間による創作」という

言語が違えば、世界も違って見えるわけ (ハヤカワ文庫)amazon書評

https://www.amazon.co.jp/%E8%A8%80%

no image
旅系youtube 日本脱出チャンネル

https://youtu.be/hNA9M3d3_2w?si=zPA

no image
旅系Youtube 秘境関係

https://youtu.be/mTpbkUc5Eok?si=7J4

no image
中国旅行のみどころ Youtube

https://youtu.be/OiUr-1yNEaI?si=5U1

→もっと見る

PAGE TOP ↑