『総選挙はこのようにして始まった』稲田雅洋著 天皇制の下での議会は一部の金持ちや地主が議員になっていたという通説が実証的に覆されている。いわば「勝手連」のような庶民が、志ある有能な人物(国税15円を納める資力のない者)をどのような工夫で議員に押し立てたかを資料に基づいて丹念にドキュメンタリー風に解説
学校で教えられた事と大分違っていた。
1890(明治23)年の第一回総選挙で当選して衆議院議員になった者の中には、実際には15円以上の国税納入資格を満たしていなかった者がかなりいた。彼らは、支持者たちの作った「財産」によって、資格を得たのである。中江兆民・植木枝盛・河野広中・尾崎行雄・島田三郎など、自由民権運動の著名な活動家をはじめとして、数十人は、そのような者であったといえる。本書は「初期議会=地主議会」という通説のもとで解明されずにきた「財産」作りの実態や選挙戦の有り様を、長年にわたる膨大な史料の博捜により解明、貴重な史実を明らかにされている。天皇制の下での議会は一部の金持ちや地主が議員になっていたという通説が実証的に覆されている。いわば「勝手連」のような庶民が、志ある有能な人物(国税15円を納める資力のない者)をどのような工夫で議員に押し立てたかを資料に基づいて丹念にドキュメンタリー風に解説してありよく理解できました。
その中で中江兆民、尾崎行雄、植木枝盛などの我々になじみの民権家なども被選挙人の資格を得て議員になって活躍できたとのこと。
驚くべきことは第1回から第6回総選挙までは立候補制度が無く選挙人名簿に載っていれば誰に投票してもよいという制度。また、昔の話ではなく我々に身近な現実例えば「首相の勝手な解散権」などにも及びマスコミも我々も当たり前だと思い込んでいる、この制度も日本に特異な「いまだに生き続ける”負のDNA”」と著者は指摘。
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