動画で考える人流観光学 『ビルマ敗戦行記』(岩波新書)2022年8月27日
明日2022年8月28日から9月12日までインド・パキスタン旅行を計画。ムンバイ、アウランガバード、コルコタ、アンダマン諸島、チェンナイ、ダージリン、シッキム、デリー、レー、スリナガル、アムリトサル、カラチ、バンコク、カンチャナブリと回り、帰国予定である。計画当初、陰性証明がないと日本に入国不可であり、バンコクでの取得にあわせて泰緬鉄道観光を予約した。ホストであるタイ人が、招かれざるゲスト日本軍と英国軍(兵はインド人)を観光客としているから、興味ふかい題材であり、拙論「人流・観光論としての記録・記憶遺産(歴史認識)論議・序論』(HPでもアップ)でも取り上げた。団塊世代は映画「戦場にかける橋」として記憶するが、近年話題を集めた「レイルウェイ運命の旅路」等は、戦争トラウマがテーマであり、捕虜と戦犯が加わってきている。なお、タイ政府観光庁は水没してしまった木製の「戦場にかける橋」(ソンクライ橋)の代わりに、異なる場所に所在するクワイ河鉄橋を人流・観光資源化している。
捕虜の扱いは、会田雄次『アーロン収容所』と荒木進『ビルマ敗戦行記』が代表作。前者では英軍は「残虐行為はなかったが、復讐行為でも、表面は合理的であり、うまく言い抜けできるようになっていた。英軍はあくまでも冷静で、「逆上」することなく冷酷にそれをおこなっていた」と記述。後者は、英軍は日本軍をインド兵よりは上に扱い、ビルマ兵は最下層に扱った。また英軍は、その意外と公平かつ自由な対応が特徴的であり、日本兵とは違う態度であったと記述。興味深いのは、下っ端の兵卒の著者を親切にもてなしてくれたビルマの農民が、威張っている(日本の)将校のことを「彼らはイングリ(英人)だろ」と言って日本人だとは信じない話。将校から奴隷のように扱われる兵卒を自分たち(英国の植民地民)の仲間と考えてたと記述。この二つの著書は、一体験記の枠を超えて、なぜ日本が負けたのかを示唆する著作として語り継がれている。それは、英国が今でも旧植民地を束ねた英連邦を形成できているのに対して、日本は敗戦国とはいえ、旧占領地等を中心に未だに戦後の歴史認識問題を抱え、国内でもネトウヨを抱えていることからも理解される。
なお、父が残したビルマ戦記『両忘』には捕虜収容所の生活記述はないものの、幹部には自衛のための帯刀、拳銃保持等は許されていたことが記述されているところから、荒木氏の記述する英軍の行動対応が行われていたように思う。
関連記事
-
-
安易なフードツーリズム、食育、和食神話への批判 コメに無期ヒ素が含まれているのはものすごく都合が悪い。大手メーカーが「ただの水です」といって水素水を売っている
公研2016年6月号に「食の安全とリスクを考える」畝山智香子(国立医療品食品研究所安全情報部第三室長
-
-
『知の逆転』吉成真由美 NHK出版新書
本書はジャレド・ダイアモンド、ノ―ム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、ト
-
-
戦略論体系⑩石原莞爾(facebook2021年5月23日投稿文)「極限まで行くと、戦争はなくなるが、闘争心はなくならないので、国家単位の対立がなくなるという。」
石原莞爾の『世界最終戦論』が含まれている『戦略論体系⑩石原莞爾』を港区図書館で借りて読んだ。同書の存
-
-
書評『山形有朋』岡義武 岩波文庫
p.208- 晩年とその死 世界戦争に関し、米国の対日態度は懸念される。ドイツの敗戦が必ず
-
-
21世紀を考える会「仮想通貨の現状」岩下直之京都大教授の話を聞く 2018年4月20日
Bitcoinの発掘の仕組み 256ビットの最初の30個は零が続かなければらないという約束。ハッシュ
-
-
「第3章 流入する他所者と飯盛女」武林弘恵著『旅と交流に見る近世社会』清文堂
旅と交流にみる近世社会 高橋陽一 編著
-
-
『ヒトはこうして増えてきた』大塚龍太郎 新潮社
p.85 定住と農耕 1万2千年前 500万人 祭祀に農耕が始まった西アジアの発掘調査で明らかにさ
-
-
Quora 古代日本語の発音
youtubeで、「百人一首を当時の発音で朗読」という動画を見ました。奈良・飛鳥時代の上代日本語
-
-
国際観光局ができた1930年代の状勢 『戦前日本の「グローバリズム」』
大東亜共栄圏の虚構を指摘 「バダヴィアに派遣された小林一三商相」国内世論の啓発に努める小林は
-
-
書評 AIの言語理解について考える」川添愛 学士会報940号P.42
分類がわかりやすい 1 今のAIは人間の言葉を理解している。 理解
