『江戸のパスポート』柴田純著 吉川弘文館
公開日:
:
最終更新日:2023/10/01
出版・講義資料
コロナで、宿泊業者が宿泊引き受け義務の緩和に関する政治的要望を行い、与党も法改正を行うことを検討している報道がなされている。この報道が正しいとすれば、今の政権は、徳川幕府以下の旅行政策しか念頭にないことがわかる。
江戸時代の庶民の旅は18世紀後半から急増。19世紀前半にピークを迎える。新城常三「社寺参詣の社会経済史的研究」(塙書房)環境が整い、苦行的なものから遊楽的なものに変化、旅人の下層化は乞食巡礼の横行(現代でいえばワーキングホリディー)を招いた。この指摘はハード面であり、旅人の安心を保障するシステムともいえる体制が19世紀に前半に整った。往来手形であるが、新城は往来手形には否定的に言及。ポジティヴに評価するのは内藤二郎によって。往来手形を軸にする旅行難民救済システムという展開はその後。
1814年に成立した日本初の英語辞典「暗厄利亜(あんげりあ)語林大成」はpassportを「往来文(オオライテガタ)」「又赦書(ユルシヂャウ)」と表記。往来手形はパスポートと認識されていた。
18世紀半ばまでは、乞食か旅人かに関係なく、領主の役人が検死をし、埋葬した。
偽往来手形の横行
従来のパスポート研究でも、19世紀初頭のヨーロッパでは国内用が大半(『パスポートとビザの知識』春田哲吉 有斐閣選書)
元禄令が病牛馬の遺棄と並んで、病人の半強制的な「宿送り」を禁止、遺棄が禁止。意識を啓蒙する役割を果たした
幕府の明和令(宿継、村継規定と往来手形携帯規定)では、病人に療養を加えず、宿継、村継などで送り出したことが露呈した場合、罰則規定がもうけられた。幕令を元に、地域でのより具体的な対応策が講じられていた。
明和令は、五街道の旅籠屋だけでなく、村々で宿をとる旅人に対してでも、病人は医者に見せ、療養を加え、往来手形を携帯していれば、旅行費用のないものでも、希望すれば、村継で国元に送るように指示した
関連記事
-
-
動画で考える人流観光学 観光資源、質量の正体は一体何なのか -質量の起源-
https://youtu.be/TTQJGcu-x3A https://
-
-
『近世旅行史の研究』高橋陽一 清文堂出版 宮城女子学院大学
本書の存在を知り港区図書館の検索を探したが存在せず都立図書館で読むことにした。期待通りの内容で、
-
-
保護中: 『中世を旅する人びと』 阿部 謹也著を読んで
西洋中世における遍歴職人の「旅」とは、糧を得るための苦行であり、親方の呪縛から解放される喜びでもあっ
-
-
ジャパンナウ観光情報協会機関紙138号原稿『コロナ禍に一人負けの人流観光ビジネス』
コロナ禍でも、世界経済はそれほど落ち込んでいないようだ。PAYPALによると、世界のオンライン
-
-
『サイボーグ化する動物たち 生命の操作は人類に何をもたらすか』作者:エミリー・アンテス 翻訳:西田美緒子 白揚社
DNAの塩基配列が読破されても、その配列の持つ意味が分からなければ解読したことにはならない。本書の冒
-
-
QUORAに見る観光資源 日本から出たことがないのでわからないのですが、日本は本当に治安が良いのですか?松本 貴典 (Takanori Matsumoto),
日本から出たことがないのでわからないのですが、日本は本当に治安が良いのですか?松本 貴典 (Tak
-
-
『外国人労働者をどう受け入れるか』NHK取材班を読んで
日本とアジアの賃金格差は年々縮まり上海などの大都市は日本の田舎を凌駕している。そうした時代を読み違え
-
-
『知られざるキューバ』渡邉優著 2018年
4年前のキューバ旅行のときにこの本が出版されていれば、また違った認識ができたとの思う。 カリ
-
-
書評『シュリューマン旅行記 清国・日本』石井和子訳
日本人の簡素な和式の生活への洞察力は、ベルツと同じ。宗教観は、シュリューマンとは逆に伊藤博文等が
-
-
『日本が好きすぎる中国人女子』桜井孝昌
内容紹介 雪解けの気配がみえない日中関係。しかし「反日」という一般的なイメージと、中国の若者
