『言ってはいけない中国の真実』橘玲2018年 新潮文庫
コロナ禍で海外旅行に行けないので、ブログにヴァーチャルを書いている。その一つである中国旅行記をつくるにあたって、本書には中国十大鬼城(ゴーストタウン)観光が写真付きで紹介されているので、さっそく図書館で借りて読んでみた。
表題からすると嫌中派が喜びそうなものだが、内容は嫌中派にとって、不都合な真実が満載である。その最大のものは「あとがき」にもあるが、中国には知日派はいても親日派がいない歴史的な理由である。汪兆銘政権の幹部の政治亡命を引き受けた日本政府が、敗戦後国民党政府から引き渡しを要求されパニックに陥った。居場所のなくなった陳公博等は自発的に帰国したことになり、「親日」イコール「売国奴」として処刑された。「漢奸に終わらせることはない」という陸軍大臣の約束が守られなかったのである。
中国でGoogle等が使えなくても、13億人の市場が大きくそれに代わるサービスが提供されているから何の不都合もなく、困っているのは在中外国人だけである。
メディアは「中国」という統一された意思を前提に考えるが、習近平が訪印の際にカシミール武力衝突が発生したように、共産党は領土問題が解決されれば予算が減らされる現地人民解放軍をグリップできていないのである。満州事変等の関東軍と同じである。
中国は「民主主義」を実現するには広すぎるし、人口が多すぎると結論付ける。広東人が広東省の民主化を求めることはあるかもしれないが、中国全土の民主化を求めることは絶対にない。共産党の支配が弱まって民主化を求める声が高まれば、豊かな沿海部はかつての軍閥のように事実上独立し、自らの権益を守ろうとするだろう。おそらくこのことが、革命の正当性を失っても共産党支配が続く最大の理由。中国の人々は独裁に苦しんでいるが、独裁を必要ともしている
2011年ウーカン村事件 烏坎事件(うかんじけん)とは、2011年に中華人民共和国広東省汕尾市に属する県級市陸豊市東海街道烏坎村で発生した、村民委員会の不明朗な土地取引に端を発し、村民と警察との激しい衝突を経て、村民が村民委員会選任の直接選挙を行えるようになった一連の事件である。
関連記事
-
-
遠くない未来、学問は人間が理解するものではなくなる(かも)【ゆっくり科学】
https://www.youtube.com/watch?v=yCIxsaLg
-
-
『貧困と自己責任の中世日本史』木下光夫著 なぜ、かほどまでに生活困窮者の公的救済に冷たい社会となり、異常なまでに「自己責任」を追及する社会となってしまったのか。それを、近世日本の村社会を基点として、歴史的に考察
江戸時代の農村は本当に貧しかったのか 奈良田原村に残る片岡家文書、その中に近世農村
-
-
「第3章 流入する他所者と飯盛女」武林弘恵著『旅と交流に見る近世社会』清文堂
旅と交流にみる近世社会 高橋陽一 編著
-
-
『「源氏物語」と戦争』有働裕 教科書に採用されたのは意外に遅く、1938年。なぜ戦争に向かうこの時期に、退廃的とも言える源氏物語が教科書に採用されたのか
アマゾン書評 源氏物語といえば、枕草子と並んで国語教科書に必ず登場する古典である。
-
-
御手洗大輔「示威の自由に関する日中比較と日本人の課題」
『横浜市立大学論叢』第68巻社会科学系列2号 御手洗大輔「示威の自由に関する日中比較と日本人の課題」
-
-
「起業という幻想」白水社 スコット・A・シェーン 職を転々として起業に身をやつす米国人の姿は、産学官が一体になって起業を喧伝する日本社会に一石投じることは間違いない。
マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルを立ち上げたス
-
-
『発掘捏造』毎日新聞旧石器遺跡取材班
もう20年も前の事であるが、毎日新聞取材班の熱意により旧石器遺跡の捏造事件が発覚した。その結果、
-
-
人口減少の掛け声に対する違和感と 西田正規著『人類史のなかの定住革命』めも
多くの田舎が人口減少を唱える。本気で心配しているかは別として、政治問題にしている。しかし、人口減少と
-
-
渋滞学『公研』2019年4月 メモ
渋滞学 西成活裕 渋滞とは? 結局人の動き 法則性はあるのか? 空気や水と違って人間にはそれぞれ