*

『満州事変はなぜ起きたのか』筒井清忠著 中央公論新社 2015年

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 歴史認識

日米戦争=太平洋戦争はかなりの程度、日中戦争に起因し、その日中戦争はかなりの程度、満州事変に起因する。

児玉源太郎、後藤新平コンビが、厦門事件と同様、日露戦争後も陸軍が満州にとどまったまま軍政を敷き続けることに英米から抗議された。これを伊藤博文が「満州は我が国の属地ではない。純然たる清国領土の一部である」と軍政撤廃を決議した(栗原健編『対満蒙政策史の一面』原書房23ページ)。文民コントロールが実行。

中国の軍属・現地有力者はみずからの権力を保持するために日本の軍人らを様々な形でうまく利用していたという半面もある 北岡『官僚制としての日本陸軍』
孫文「余らは満州は日本に一任してその代わりわが革命のために援助を日本にこう希望なり」横山宏章『素顔の孫文』岩波書店2014年

排日移民法 日米通商航海条約違反 日本の世論は激昂した。アメリカ映画の上映ボイコット、横浜沖仲士の積み荷扱い拒否 ヒューズ国務長官はワシントン会議の偉業は水泡に帰したと発言。満鉄からの借款要請にも冷淡になる。中国との関係を優先。九か国条約破棄の議論が列強にあった。

田中義一のもとには、蒋介石からの密使だけではなく、張作霖からの密使もきており、日本で両者の密使の接触も行われている。日本の存在は対立だけではなく、調停の役割も期待されていた。結局、1927年第一次山東出兵、英米ともに田中内閣の出兵を評価

1931年中英交渉が頓挫、国民政府は32年に治外法権撤廃を交付したときは、日英米間の共通性意識は高まった。そして日本が我慢しきれなくて暴発した満州事変後も、中国が治外法権破棄を延長したにもかかわらず、英国は治外法権侵害に備えた共同行動を日本に要請してきた。
アメリカ中国の態度にも問題があったものの、ともあれ、満州事変に始まる日本の軍事行動がワシントン条約的協調関係最終的に崩壊させたのは間違いがない。

従来の排日運動に加え、大連港の営業の妨害を目的とした葫蘆島の築港が始まり、満鉄の収入は1929年以降年々半減していった。リットン調査団の対象には中国の排日運動の問題性も含まれていた

松岡洋介「満蒙生命線」は危険な論理であるが関東軍はこの論理を取ることとなる⇔幣原が腐心していた条約上の正当な権益が中国の違法な主張と行動で覆されそうになっているという訴え、

満州にいた日本人は、官吏や満鉄エリート社員を別にすると、内地に残してきたわずかな土地は親戚兄弟他人に食いつぶされてしまって、帰るべき日本内地のスペースがないというのが実情

何か問題が起きれば、不平等条約を結ばされている側に国際世論が傾斜する時代が始まっていたことに、十分に理解が行き届かず、大きく立ち遅れていた

軍人にかけていたずさんな謀略が国際的な印象を悪くすることへの感覚の希薄さ その背景には新聞の扇動

昭和期になって初めて軍が独立行動を始めたわけではなく、大正期には中国において多くの軍の独立行動が生み出されていた。郭松齢事件等の謀略に成功したことが張作霖爆殺事件や満州事変をひきおこす

関連記事

no image

Quoraに見る歴史認識 日本は日清戦争、日露戦争では勝利することができたのに、先の大戦 (第二次世界大戦) ではなぜ敗北に至ったのでしょうか。 日清日露と第二次世界大戦を比較対照して答えていただけたら幸いです。?

日本は日清戦争、日露戦争では勝利することができたのに、先の大戦 (第二次世界大戦) ではなぜ敗北

記事を読む

no image

ゲルニカ爆撃事件の評価(死者数の大幅減少)

歴史には真実がある。ただし人間にできることは、知りえた事実関係の解釈に過ぎない。もっともこれも人間

記事を読む

no image

QUORAにみる歴史認識 大坂なおみが二重国籍を認められたことで、日本は二重国籍を認めていることが表に出ましたが、これまで二重国籍はダメだと思いこまされてどちらかの国籍を諦めたり、秘密にしてきた人も多いのではないですか?

大坂なおみが二重国籍を認められたことで、日本は二重国籍を認めていることが表に出ましたが、これまで二

記事を読む

no image

QUORAにみる歴史認識 アルメニア虐殺

アルメニア虐殺の歴史的背景はあまり知らてないように思いますが、20世紀の悲惨な虐殺の一ページとし

記事を読む

no image

Quoraにみる歴史認識 日露戦争で日本は英米に膨大な借金をしてますがどうやって返済したのでしょうか?

ご質問文に「英米」とありますが、高橋是清の求めに応じて日本の戦時国債を購入して支えたジェイコブ・ヘ

記事を読む

no image

『日本軍閥暗闘史』田中隆吉 昭和22年 陸軍大臣と総理大臣の兼務の意味

人事局補任課長 武藤章 貿易省設置を主張 満州事変 ヤール河越境は 神田正種中佐の独断

記事を読む

no image

DVD版 NHKスペシャル『日本人は何故戦争へと向かっていたっか』第3回「熱狂はこうして作られた」(2011年2月27日放映)を見て  麻布図書館で借りて

メディアが戦争をあおり立てたというおなじみの話がテーマ。 日本の観光政策が樹立されていく1930年

記事を読む

no image

「中国は国際秩序の守護者になるのか?」『公研』2017年3月号No.643鈴木一人

偶然二編の論文を読み、日本のマスコミでは認識できない記述を見つけた。 嫌中ムードを煽り立てる記事が

記事を読む

河口慧海著『チベット旅行記』の記述  「ダージリン賛美が紹介されている」

旅行先としてのチベットは、やはり学校で習った河口慧海の話が頭にあって行ってみたいとおもったのであるか

記事を読む

no image

『中国はなぜ軍拡を続けるのか』阿南友亮著

第40回サントリー学芸賞(政治・経済部門)受賞!第30回アジア・太平洋賞特別賞受賞! 何

記事を読む

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

2025年11月22日地球落穂ひろいの旅 プンタアレナス

旅程作成で、ウシュアイアとプンタアレナスの順序を考えた結果、パスクワか

2025年11月19日~21日 地球落穂ひろいの旅イースター島(ラパヌイ) 

チリへの訪問は2014年に国連加盟国 として訪問済み。イースタ

→もっと見る

PAGE TOP ↑