*

「起業という幻想」白水社 スコット・A・シェーン 職を転々として起業に身をやつす米国人の姿は、産学官が一体になって起業を喧伝する日本社会に一石投じることは間違いない。

公開日: : 最終更新日:2023/05/27 出版・講義資料

 

マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルを立ち上げたスティーブ・ジョブズ、オラクル創業者のラリー・エリソン。こうした人物に象徴されるように、身ひとつでたたき上げた「起業」に成功して巨万の富を築くというアメリカン・ドリームは今なお、〈神話〉として米社会を根本で支えている。
しかし、本書によれば、現実はまったく異なる。連邦準備制度理事会や国勢調査局などの経済統計から浮かび上がる起業のごくありふれた光景はこんな具合だ。
米中西部の都市ララミー。大学中退歴のある40歳代の白人既婚男性が「よそで働きたくない」という動機から職を転々とし、挙句、生活が逼迫して起業に手を染める!
もちろん、そんな彼が手掛けるビジネスはアメリカン・ドリームとは程遠く、建設会社や自動車修理工場のようなローテクに限られる。そして、資金繰りは芳しくなく、5年以内に消える運命にある……。
本書は、経済成長や雇用創出(失業率)、人種や性別まで、統計を駆使して、もうひとつのアメリカを浮き彫りにする試みでもある。職を転々として起業に身をやつす米国人の姿は、産学官が一体になって起業を喧伝する日本社会に一石投じることは間違いない。

 

[目次]
 謝辞

イントロダクション
 起業とは何か/起業に関するイメージ/神話を信じ込んでいるとどうなってしまうのか/
 本書を読むべきなのは誰か/本書ではどのような問題を取り扱うのか/たとえば

第一章  アメリカ──起業ブームの起業家大陸
 起業家の数は増えていない/アメリカでの起業は低調である/
 国によってスタートアップの数が多くなるのはなぜか/国内でスタートアップが占める割合の相違/
 地域間の起業の違いを説明するのは何か/結論

第二章  今日における起業家的な産業とは何か?
 どのような産業分野で起業家はビジネスを始めるのか/なぜ特定の産業が起業家の間で人気なのか/結論

第三章  誰が起業家となるのか? 
 起業家のマインド/なぜビジネスを始めるのか/起業家は“優れた”人間なのか/
 起業家になることは若者の専売特許なのか/実社会で痛い目に遭うことがビジネスを始める導きなのか/
 専攻が重要なのか/経験の重要さ/生粋の地元育ちよりも移民のほうが起業家になりやすいのか/
 コネより知識/結論

第四章  典型的なスタートアップ企業とは、どのようなものなのか?
 新たなビジネスのほとんどはとても平凡である/たいていのスタートアップは革新的ではない/
 たいていのスタートアップはごく小規模である/成長を目指すビジネスはわずかである/
 新たなビジネスの多くは競争優位を欠いている/半数は在宅ビジネスである/
 起業家はどのようにしてビジネスアイデアを思いつくのか/起業家はどのようにビジネス
 アイデアを評価しているか/ビジネスを立ち上げる/会社立ち上げは成功例よりも失敗例のほうが多い/
 チームで起業?/結論

第五章  新たなビジネスは、どのように資金調達をしているのか? 
 ビジネスを立ち上げるのにどれくらいのお金が必要なのか/主な資金源は創業者の貯金/
 お金持ちのほうが起業しやすいのだろうか/個人的な負債/どんな企業が外部資金を獲得するのか/
 負債か株式か/スタートアップは銀行から借り入れできるのか/外部からの株式資本による資金調達/
 ベンチャー資本はあなたが考えるほど重要ではない/ビジネスエンジェルの実像/結論

第六章  典型的な起業家は、どのくらいうまくやっているのか? 
 典型的な新たなビジネスは失敗する/ビジネスから撤退する/起業家はそれほど儲からない/
 起業によるリターンは不確実である/起業家は投資資金に対する追加的なリターンを得られない/
 起業家はベンチャーの展望について過剰に楽観的か/ごく少数の起業家が大成功を収める/創業者の満足/結論

第七章  成功する起業家とそうでない起業家の違いは何か?
 時間とともに容易になる/どの産業で、ということが非常に重要/ほとんどの起業家は愚か者なのか/
 ほかにやるべきことは何か/よりよい起業家になるための準備は可能だ/正しい創業の動機を持て/結論

第八章  なぜ、女性は起業しないのか? 
 女性はあまり起業家にならない/なぜ女性起業家の割合は低いか/女性のスタートアップの業績は/
 なぜ女性が創業したビジネスの業績は貧弱なのか/結論

第九章  なぜ、黒人起業家は少ないのか? 
 なぜ黒人起業家の割合はかくも低いのか/黒人によるスタートアップの業績はどうだろうか/
 なぜ黒人が保有するスタートアップの業績はよくないのか/結論

第十章  平均的なスタートアップ企業には、どの程度の価値があるのか? 
 経済成長/雇用拡大/雇用の質/結論

 結論
 起業の現実/われわれは何をなすべきか
 訳者あとがき 
 解題(西村創一朗、中野剛志、柴山桂太) 
 註

関連記事

渡辺惣樹著『第二次世界大戦 アメリカの敗北』

対独戦争をあくまで回避するべきと主張したチェンバレンら英国保守層 対独戦争は膨大な国力を消費し、アメ

記事を読む

no image

三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』なぜ日本に政党政治が成立したのか

1 なぜ日本に政党政治が成立したのか (これまではなぜ政党政治は短命に終わったかを論じてきた)

記事を読む

no image

Quoraなぜ、当時の大日本帝国は国際連盟を脱退してしまったのですか?なぜ、満州国について話し合ってる中で軍事演習をしてしまったのか、なぜ、当初の目的である権益のほとんどを認められているのに堂々退場したのか。

日本の国際連盟脱退は、満州事変に対するリットン調査団の報告書を受け入れられないと判断して席を蹴った

記事を読む

no image

『国債の歴史』(富田俊基著2006年東洋経済新報社)を読んで

標記図書を読み、あとがきが要領よくまとめられていた。財政に素人の私には、非常に参考になる。 要約す

記事を読む

no image

人間ってなんなの?:チンパンジーの4年戦争【 進化論 / 科学 / 人 類 】タンザニア

グドール 道具を使うチンパンジーを発見 ジェーン・グドール(Dame Jane Morris Go

記事を読む

no image

Oneida Community Mansion House

https://www.bbc.com/reel/playlist/hidden-historie

記事を読む

『枕草子つづれ織り 清少納言奮闘す』土方洋一   紙が貴重な時代は、日記ではなく公文書

団塊の世代が義務教育時代に学修したことの一部が、その後の研究により覆されている。シジュウカラが言

記事を読む

書評『日本社会の仕組み』小熊英二

【本書の構成】 第1章 日本社会の「3つの生き方」第2章 日本の働き方、世界の働き方第3章

記事を読む

「世界最終戦論」石原莞爾

石原莞爾の『世界最終戦論』が含まれている『戦略論体系⑩石原莞爾』を港区図書館で借りて読んだ。同書の

記事を読む

no image

学士会報926号特集 「混迷の中東・欧州をトルコから読み解く」「EUはどこに向かうのか」読後メモ

「混迷の中東」内藤正典 化学兵器の使用はアサド政権の犯行。フセインと違い一切証拠を残さないが、イス

記事を読む

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

2025年11月22日地球落穂ひろいの旅 プンタアレナス

旅程作成で、ウシュアイアとプンタアレナスの順序を考えた結果、パスクワか

2025年11月19日~21日 地球落穂ひろいの旅イースター島(ラパヌイ) 

チリへの訪問は2014年に国連加盟国 として訪問済み。イースタ

→もっと見る

PAGE TOP ↑