◎『バブル』永野健二著
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最終更新日:2019/07/14
人流・観光政策への評論, 展開されている人流・観光事業に関する感想等
GHQの直接金融主体の経済改革からすると、証券市場と証券会社の育成が不可欠であるにもかかわらず,日本興業銀行が解体されず戦後のこったことが謎という点 今までにない視点。戦後日本経済の主役は、大蔵省、日本興業銀行、新日本製鉄とし、経済産業省が出てこないところも面白い。日本開発銀行、海運再編成等に興銀は大きな役割を果たしたことが明記され、これを読むと造船・海運が主力であったことが懐かしく思われる。業態別の仕切られた競争
第1章 胎動
海運再編成に反抗したのが三光汽船。銀行に頼らずに巨大資金調達が可能なことを示した。敵対的M&Aを仕掛ける。三光汽船のジャパンライン買収事件。中山素平、児玉誉士夫、水島廣雄などの名前が出てくる。オイルショック後のタンカー不況 日本郵船菊地庄次郎の全面撤退の決断 数百億の損失 等については、石油公団に出向し、タンカー備蓄を担当させてもらったので、実感できる。ジャパンライン問題は、興銀の歴代主流はすべて責任がある。このことが尾上縫事件につながる
乱舞する仕手株と兜町の終焉
押し付けられたレーガノミックス 富裕層中心の大幅減税と財政支出の増大(社会保障費の削減の一方で軍事費を拡大)反ケインズ主義とは言うものの、典型的なケインズ的な需要刺激策。経済学が経済学としての独立性を失い、政治経済学の時代を迎えたことである。サッチャーリズムと併せてアングロサクソン的なモデルが、日独に対して押し付けられた
大蔵省がつぶした「野村モルガン信託構想」 大和銀行の信託兼営を大蔵省が嫌ったこと思い出した。
頓挫した「たった一人」の金融改革
M&Aの歴史をつくった男
第2章 膨張
プラザ合意が促した超金融緩和政策
資産バブルを加速した「含み益」のカラクリ
「三菱重工CB事件」と山一證券の死 山一の海外子会社への赤字の「とばし」が話題になってから、連結決算が日本でも重視されるようになった。
国民の心に火をつけたNTT株上場フィーバー
特金・ファントラを拡大した大蔵省の失政 大蔵省の失敗は減価償却を無視させた国鉄赤字にもある。減価償却制度そのものがイギリスの鉄道会社から始まっているのは皮肉。
企業の行動原理を変えた「財テク」
第3章 狂乱
国民の怒りの標的となったリクルート事件
1兆円帝国を築いた慶應ボーイの空虚な信用創造
「買い占め屋」が暴いたエリートのいかがわしさ
トヨタvs.ピケンズが示した時代の転機
住友銀行の大罪はイトマン事件か小谷問題か
「株を凍らせた男」が予見した戦後日本の総決算
第4章 清算
謎の相場師に入れ込んだ興銀の末路
損失補填問題が示した大蔵省のダブルスタンダード
幻の公的資金投入
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