自動運転車の普及が、タクシー業やビジネスホテルに与える影響論議 早晩、稼業としての存続はなくなる
『公研』2018.12.No.664の江田健二氏と大場紀章氏の対談の中で、「自動運転になると、停止状態はもったいないから必要な人のところに走らせる。劇的に効率的になる。稼働率が上がれば走行距離が長くなる。そうなればガソリンより電気の方がよくなるので、電気自動車が一気に普及する。そして効率的になるので必要とされる台数も劇的に減る」という記述があった。
自動運転車の普及が、電気自動車の普及につながる点と、効率的運送につながる点は否定しないが、すべてがそうなのか少し疑問がある。
私は車の使われ方が移動中心に考えるものから変化し、人流という面で使用されるのではないかと思っている。つまり、物流と同じように、単なる運送・移動ではなく、在庫・倉庫管理も含まれるように、宿泊と移動が一体としてとらえられるようになるとおもっている。さらに言えば、流通加工と同じように、作業も加わるのである。
自動運転車の場合、運転席スペースがハンドル等を収納スペースに入れることにより不要になるから、寝食空間や作業空間に使用できる。東京での講義を終えて、友人や学生との会食を済ませ、朝の一限の授業に間に合うように自動運転車で大阪に向かう。車内で翌日の講義ノートを作成した後、就寝する。途中でトイレに行きたく成れば、車に指示を出し、最寄りの空いているトイレに立ち寄ればいい。朝は最寄りの洗面所で顔を洗い、講義に出席する。講義が終われば、逆の工程で東京に帰ることになる。帰りには、東京ので就職活動をするという学生を同乗させてもよい。事故が起きた場合の責任といっためんどくさいことがなくなっているから気楽に引き受けられる。自宅に帰宅した後は、家族がその自動運転車を使って、買い物に出かけ、途中で知人とライドシェアをすることになる。
この生活がいつ始まるかはわからないが、早晩実現するであろう。その生活の中では、タクシー需要が減少するどころか。現在の形態のビジネスホテルの需要も大幅に減少していると考えられる。駅前に林立しているビジネスホテル群は跡形もなく消滅しているかもしれない。昔の国鉄の駅前には、駅前旅館だけではなく、鉄道貨物の営業所が存在した。丸通の店があり、駅頭倉庫があった。その駅頭倉庫は、高速道路沿いに移動し、貨物用地や駅頭倉庫の跡地は資産として売却されてビジネスホテル群に変化したのである。
地域のタクシーやビジネスホテルといった稼業的ビジネスは、自動運転車が本格的に社会に浸透するようになると、駅前の物流ビジネスが大きく変化したように、息子、娘の時代には同様に大きく変化するであろう。その影響は日本から発せられるのではなく、中国から発せられるのかもしれない。
24時間運行する米国無人タクシーで性関係…「移動するラブホテル」懸念(中央日報 日本語版) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/67c3b798bbdfc4682e0324d6115233811b146d3e
関連記事
-
-
“Future Direction of Tourism Policy Studies” President of Human Logistics & Tourism Laboratory Teramae Shuichi, PhD
Future Direction of Tourism Policy Studi
-
-
『からのゆりかご』マーガレット・ハンフリーズ 第2次世界大戦後英国の福祉施設から豪州に集団移住させられた子供たちの存在を記述。英国、豪州のもっと恥ずべき秘密
第2次世界大戦後英国の福祉施設から豪州に集団移住させられた子供たちの存在を記述。英国、豪州のもっ
-
-
生産性向上特別措置法(規制のサンドボックス)を必要としない旅行業法の活用
参加者や期限を限定すること等により、例えば道路運送法の規制を外して、自家用自動車の有償運送の実証実験
-
-
Quora なぜ日本海側の人口は少ないのですか?
工業化が進んで、人々が東京、名古屋、大阪に流れてしまったからです。 昔は多かったんですよ、日
-
-
「今後の観光政策学の方向」 人流・観光研究所所長 観光学博士 寺前秀一
① 旅が大衆化すると「Tourist」概念が生まれるのだとすると、日本における「
-
-
天保の改革「人返しの法」 江戸の人口を減少させ地方の農村部の人口を確保することを目的に発令された法
人返しの法(ひとがえしのほう)は、江戸時代の天保の改革において、江戸の人口を減少させ地方の農村部
-
-
白バスと白タク論議の峻別
現在の道路運送(昭和26年)が制定されるひとつ前に、昭和22年道路運送法があり、更にその前には自動車
-
-
米国商務省記述の米国観光事情
明日から米国である。商務省の観光事情分析を読んでみた。 http://travel.trade.g
-
-
人口減少の掛け声に対する違和感と 西田正規著『人類史のなかの定住革命』めも
多くの田舎が人口減少を唱える。本気で心配しているかは別として、政治問題にしている。しかし、人口減少と
-
-
満州事変(1931年)前の訪日中国人の割合は現在のインバウンド政策時代の割合と変わらない
戦前鉄道省に国際観光局ができる前年の1929年の外客数は34755人であり、うち中華人16300
