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人流 人返しの法

人返しの法(ひとがえしのほう)は、江戸時代の天保の改革において、江戸の人口を減少させ地方の農村部の人口を確保することを目的に発令された法。人返し令(人返令)とも称される。

前史

松平定信が寛政の改革において、この人返しの法と似た法令である旧里帰農令を発令した。こちらは離村して、江戸に流れてきた地方の農民たちに元の村々へ帰ることを勧め、そのための旅費・食費を幕府が交付する、というものだった。しかし、この法令には強制力がなく、また費用の交付も十分では無かったため、ほとんど効果がなかった。

天保12年(1841年)、大御所家斉が死去すると、忠邦は改革派の勢力をつくり、相次いで家斉の寵臣を粛清。遠山景元鳥居耀蔵といった人材を登用し、天保の改革をスタートさせた。天保13年(1842年)8月、忠邦は町奉行に対し強制的な帰村を命じる政策について評議させたが、慣れ親しんだ江戸での生活から無理矢理引き剥がして帰村させるのは現実的では無いと回答して、強制帰村の政策に反対した。翌年の再評議においても意見の大筋は同様で、帰村を強制するよりもまずは人別改を強化した方が良いとの回答があった。これを受けて天保14年(1843年)、人返しの法が発令された。主な内容は、

  1. 新規に在方の農民が江戸の人別帳に入ることを禁止。
  2. 出稼ぎなどで短期間江戸に居住する場合は、村役人連印の願書に必ず領主の押印がある免許状を必要として、これが無い者には江戸で住居を貸す・奉公させることを禁止、そしてまた出稼ぎの者を江戸の人別帳に登録することも禁止とした。

この人別改の強化で江戸の人口増加を防ぐ狙いがあったが、その効果については疑問視されている。

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