自動運転車とドローン
渋谷のスクランブル交差点を見ていると、信号が青の間の短い時間に、大勢の人が四方八方から道路を横断して、誰も衝突もせず見事に渡り切っている。人は子供の頃からの経験で、それがなんの指示もなくてもできるようにデープラーニングで「認識」できるように成長したのである。
渡り鳥も、何千何万羽の群れとなって大海原を飛翔しているが、一羽の例外もなく衝突せず飛行できているのも、デープラーニングによるものである。
自動運転車が開発されているが、デープラーニングにより、渋谷のスクランブル交差点を、人間と同じように衝突せずにわたることができるようになると考えられている。人間や鳥と異なり、自動運転車は経験を共有できるから、学習速度は母集団が大きければ大きいほど、恐れるべき速さで上昇する。従ってデータを収集することに開発者は血眼になっているのである。自動車学校経営者やトラック運送事業者、特にタクシー経営者がライドシェアや自動運転車に大きな拒否感を抱いているが、自動車メーカーがライドシェアに関心を抱くのは、このデータ収集に関心があるからである。
人間は生き延びるために「錯覚」する。お化け坂に差し掛かると、上り坂が下り坂に見えてしまうのである。自動運転車は人間にないセンサーを活用することができるから、錯覚を活用する必要はないが、自動運転車の集団の中に人間が操縦する自動車が加わると、錯覚を理解して行動をとらなければならないのであろう。
ドローンが盛んに宣伝されているが、鳥と異なり、人間が操縦する限り危険が伴う。自動運転車と同様にデープラーニングによる経験を積んで鳥と同じように「認識」ができるようにならなければ、社会的に受け入られないであろう。データ収集に自動車以上に時間がかるであろうから、ドローンの実用化は自動運転車の実用化の後になるのは必然のような気がする。それにしてもドローンは騒ぎすぎであろう。
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