自動運転時代のアルゴリズム 自家用車優先思想の普及と道路運送法の終焉
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最終更新日:2023/05/29
自動運転
自動運転車の技術的問題は別稿で取り上げているが、ここでは道路使用の優先度の問題を考えてみる。
現在の公共の道路では、道路交通法に基づき、通行の優先度が定められている。緊急車両が最も優先し、専用レーン、優先レーンの思想が続く。最後に、優先道路、直進車優先等の思想が続く。船の場合は小回りの利かない大型船優先の一般化したルールもある。
人間運転車と自動運転車が混在するような場合は複雑になるので、ここでは理念系として完全自動運転車のみの世界を考えてみる。緊急車両優先のアルゴリズムが採用されることは間違いない。緊急車両の次に、特別の警備が必要な車両が続くのであろう。
まず、貨物車と乗用車の優先度であるが、乗用車優先になるであろう。時間帯によっては貨物車優先になる可能性もある。夜中に搬送される超大型車等である。
乗用車の場合、有償で乗客を乗せている場合と、無償で運行している場合の取り扱いは複雑である。
国土交通省が成立する前の、建設省道路局と、運輸省自動車局では立場が異なっていた。国鉄バスは鉄道の代わりと思われていたように、定時定路線の乗合バスが優先することでは共通していたが、公共の道路を利用して有償運送を行うビジネスに対しては、優先させることの方がおかしいという発想が道路側には根底にあった。
自動運転車のアルゴリズムを導入する場合、ハイヤー・タクシーはせいぜい自家用車と同等に取り扱ってもらうくらいが関の山かもしれない。会社の役員やゴルフ客専用のハイヤーを優先することは行政感覚では拒否感が強いに違いがない。流しのタクシーに相当するものは、すべてレンタカーと取り扱いが同じになるであろう。自家用車との関係での優先度は、実乗車人員で取り決めることになるかもしれない。相乗り促進の思想は受け入れやすいからである。
相乗り優先の思想は、コモンキャリア概念が普及している英米では受け入れやすい。日本のタクシー業界も今から相乗り思想を受け入れる準備をしておいた方がいいのであろう。すぐに自動運転車の導入が始まるかもしれない。流しのタクシーは公共交通だと主張しても、乗っている旅客は観光客か私的利用者であるから、自家用のスクールバスを差し置いて運行できないであろう。やはりバスに準じる形態になっていないといけないのである。
完全自動運転車の時代になれば、道路運送法はいらなくなる。民商法の運送概念は存在するが、行政的に有償と無償に運送を区分する必要はなくなる。他業種と同じく、公正取引法の規制で十分だと認識されるであろう。
営業用トラック概念の存在がなくなると、軽油引取税の優遇思想もなくなるから、全国のトラック協会はいずれ役割を終える。この問題は政治的には大きな問題になるであろう。
旅客交通では、交通量の多い市場では道路側の要請により乗合システムを優先させる(アルゴリズムで強制するかもしれない)。交通量が少ない市場では、ライドシェアが一般化する。車両は個人、団体所有のものか、レンタカーに区分されるのであろうが、ライドシェアも組み合わされるので、所有の意味が変化する可能性がある。
いずれにしろ、自動運転車時代のアルゴリズムは、交通思想をクリティカルに反映するものとなり、厳しい説明責任が求められる。
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