*

野波健蔵氏のドローンの話 2016年4月6日 サトーホルディングス講演会

公開日: : 最終更新日:2023/05/28 ライドシェア, 自動運転

サトーホールディングスの小玉昌央さんのご配慮で、ドローン問題の第一人者の野波健蔵氏の話を聞く機会を得た。
読み物としてはこれまでも接してきたが、人の話をまとめて聞くことは今回が初めてであった。昨年のモンゴル・ツータン族観光調査でドローンを飛ばしたことなどが懐かしく思えた(2015年8月ブログ掲載)。

野波氏の話を聞いて、ジオフロントを思い出した。運輸省の現役時代、同期が大深度地下鉄問題に取り組んでいた。当時はマスコミを挙げて最後のフロンティア空間として、大深度地下を取り上げており、官邸から各省に至るまでこぞってこの問題に関心を示していた。バブルがはじけ、鉄道の意味も変化し、今では大深度問題は過去のこととなってしまっている。

野波氏は、地上300メーター空間が最後の空間フロンティアであり、この活用がドローンの使命であると話されていたが、直感的には大深度空間と同じで、限られた場面に活用されるものではないかと思った。ドローンは、アフガニスタンやイラクでの米軍兵士の代わりをする遠隔操作の無人爆撃機の技術が民間転用されるようになったことから始まっている。経済性を考えなくてよい軍需だから可能であったのだろう。戦争の場面は、マスコミも観光も刺激を求めるところから大きな資源となっているが、エアコンのきいた部屋で民間人を巻き込む恐れのある爆撃をゲーム感覚でするのであるから、人間の感覚がくるってしまうのではないと思う。

ジオフロンとも高度300メーターフロントも人の管理可能性が大きくなると、必ず所有権、管理権といった法的な問題に直面する。大深度地下鉄が検討されたのも、地上権設定をなくす議論から始まったが、憲法で保障されている財産権に触れるから大問題であった。高度300メーター空間の管理も論理的には同じ問題を抱える法律問題である。そのうえでの航空法の行政問題が出てくるのであろう。ドローン技術により管理が可能となればなるほど財産権も主張されてしまう。

ドローン技術の活用に、人を運ぶSF的なTerrafugiaのはなしがあった。https://youtu.be/wHJTZ7k0BXU
水陸両用車をはじめこの種の話は夢があるのであるが、実需が少なく夢で終わってしまうことが多い。同じ夢なら観光としては宇宙観光なのであろう。いずれにしても、有人ドローンはその昔からある垂直離着陸機の発想であり、議論が拡散気味になってしまう印象を持った。

ドローン技術は、最先端の技術というより応用技術であると感じた。また、構造物の検査等への需要が考えられるが、昆虫や小形動物のロボットが開発されれば無理やり空を飛ぶこともないであろう。むしろこのような展開になってゆくような気がする。物流分野への応用も、無理に運ばなくてもよいものは3Dプリンターにとってかわられるのではないだろうか。ドローン等は、極端に言えば位置情報技術と認識技術の組合せであるから、日本も参加できる。認識技術は人工知能の進展が最先端であり、その成果をドローンも取り入れる形で進むのであろう。朝日デジタル版に囲碁を打ちまかしたAIの記事が出ていたので、最後にのせておく。

AIは人の脅威か アルファ碁の圧勝、研究者の評価は 聞き手・辻篤子、池田伸壹 聞き手・川本裕司2016年4月9日05時00分
■ソニーコンピュータサイエンス研究所社長・北野宏明さん「問われるのは人間」

――今後AIはどう進化していくのでしょうか。

「世の中の多くの課題には、碁や将棋のようなゲームとは違って、不確かで不完全な情報しかありません。たとえば車の運転の際は、ほかの車も走行し、歩行者もいる。それぞれが意図を持ち、必ずしも合理的に動かない。陰から飛び出してくることもある。雨や雪もある。ゲームが完全情報問題とすると、不完全情報問題がAIにとって今後の挑戦相手です

――今後一番注目されるのは自動運転ですか。

「先日、ニューヨークで開かれた完全招待制の『人工知能の将来』シンポジウムに日本からただ1人参加しました。一番盛り上がったのが、自動運転の今後の展開に関する議論でした。つまり、自動運転が実用化されれば、車というものががらりと変わる可能性がある。本来的には移動手段だから安全に移動できればいい。ライドシェアも広がるなか、自分で車を持つ意欲が減り、人間が車を運転するのはぜいたくな行為になるかもしれません。そもそも車の90%は動いていないともいわれ、いわば不動産。車の概念を根本的に変えた方がいいかもしれません

――車文明自体が変わると?

「移動という本来の役割に立ち戻り、ネットワークを介したサービス全体の文脈でとらえ直すと、車は主役ではなくなります。中心はAIやネットワーク技術で、車は通信システムにおける携帯端末のようになるかもしれない。米国のAIやIT企業は今、自ら主導権を握って自動車産業を再編し、新たなサービス体系を作ることにすごいエネルギーを注いでいます」

関連記事

帝京平成大学観光経営学科インターンシップ講義(国際自動車)の概況

現在の大学生の就職状況は、有効求人倍率も一を超え、職種を問わなければ誰でも就職できる状況です。タクシ

記事を読む

本山美彦著『人工知能と21世紀の資本主義』 + 人流アプリCONCURの登場

第6章(pp149-151)にナチスとイスラエルのことが記述されていた。ヤコブ・ラブキンの講演を基に

記事を読む

no image

自動運転車の普及が、タクシー業やビジネスホテルに与える影響論議 早晩、稼業としての存続はなくなる

  『公研』2018.12.No.664の江田健二氏と大場紀章氏の対談の

記事を読む

no image

白バスと白タク論議の峻別

現在の道路運送(昭和26年)が制定されるひとつ前に、昭和22年道路運送法があり、更にその前には自動車

記事を読む

November 3, 2016   Survey report No.3 on taxi dispatch application and tourism advertisement in New York by Japanese taxi business CEOs

   We visited the New York City Tourism Board.

記事を読む

no image

旅行業法と道路運送法等の関係について  東京交通新聞2021年5月17日

5月17日 特別寄稿=人流・観光研究所所長、寺前秀一氏、「公共交通運賃とパック料金

記事を読む

no image

鳥取市の三時間乗り放題1000円タクシー(外国人観光客用)

鳥取市の三時間乗り放題千円タクシーは、通常のメーターでは一万五千円はかかるタクシー料金を、法定限度額

記事を読む

シニアバックパッカーの旅 ロンドン配車アプリ調査⑥(まとめ) 人流サードパーティ(3PHL)の将来

人流を考察していると絶えず物流の世界を追いかけていると感じる。コンテナの出現により海運同盟が崩壊し、

記事を読む

ライドシェア、ホームシェアに見る各国シェアリングエコノミー論の展開

1 シェアリングエコノミー論の登場  新経済連盟が2015年10月30日に「シェアリングエコノミー

記事を読む

シニアバックパッカーの旅 2018年9月10日 チームネクストモスクワ調査➂ モスクワ大学での意見交換会

今回モスクワ大学を訪問で来たのは、鳩山紀一郎長岡科学技術大学准教授のおかげである。氏はモスクワ大学

記事を読む

no image
言語とは音や文字ではなく観念であるという説明

観光資源を考えると、言語とは何かに行き着くこととなる。 愛聴視し

no image
世界の運営を米国でなく中露に任せる 2023年6月7日  田中 宇

https://tanakanews.com/230607armeni

ヘンリーSストークス『英国人記者からみた連合国先勝史観の虚妄』2013年祥伝社

2016年10月19,20日に、父親の遺骨を浄土真宗高田派の総本山専修

旅籠とコンテナは元来同義 自動運転時代を予感 『旅館業の変遷史論考』木村吾郎

世界各国、どこでも自動車が走行している。その自動車の物理的規格も公的空

no image
旅館業法論議 無宿人保護(旅館業法)と店子保護(不動産賃貸)の歴史 

◎東洋経済の記事 https://t

→もっと見る

PAGE TOP ↑